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(,,゚Д゚)青い鳥のようです

1 : ◆VnfvP.QFYU :2011/12/29(木) 18:20:35.53 ID:Wd/NGIk10
紅白参戦作品です

長いため、途中で休憩をいれさせていただきます

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:20:56.71 ID:c2l7WSJrO
お断りします

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:21:23.39 ID:/NufO0To0
全レスしたいなら自己紹介板でhttp://life9.2ch.net/intro/
創価の話がしたいなら創価板でhttp://society6.2ch.net/koumei/
出会い厨のクズ野郎はオフ板いけカスhttp://sports11.2ch.net/offreg/
一人で淡々と書き込みたいなら独り言板へhttp://life9.2ch.net/yume/
ただみんなと騒いで馴れ合いたい気持ち悪い奴等はラウンコへhttp://love6.2ch.net/entrance/
質問がしたい頭のよわいゆとりは初心者質問板へhttp://love6.2ch.net/entrance/
AA雑談がしたい頭のいかれた人はAAサロンへhttp://love6.2ch.net/aasaloon/
オカルト大好きなあなたはオカ板へhttp://hobby10.2ch.net/occult/
超能力大好き厨二病の人は超能力板へhttp://etc7.2ch.net/esp/
食べ物の話が好きなら食べ物板へhttp://food8.2ch.net/food/
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恋愛相談がしたいうざくてキモイ構ってちゃんは恋愛サロンからでてくるなhttp://love6.2ch.net/lovesaloon/
大学受験控えてるならVIPじゃなくて大学受験板へhttp://school7.2ch.net/jsaloon/
いまだにポケモンとかやってる基地外はポケモン板へ引き篭もれクズhttp://game13.2ch.net/poke/
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ニコ厨(笑)できれば死んでほしいけどとりあえずようつべ板へhttp://pc11.2ch.net/streaming/
おもしろくもない小説書いてるオ●ニー狂はお絵かき・創作板へhttp://pie.bbspink.com/erocg/
互いに傷のなめあいしてる絵が下手な絵師(失笑)もお絵かき・創作板へhttp://pie.bbspink.com/erocg/


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:24:04.47 ID:Wd/NGIk10
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  After the war disappeared from the world in an instant, I'll believe the existence of God.
       世界から一瞬で戦争が無くなったら、俺は神の実在を信じてやってもいい。

          That person who made a cause of disappear the war is the god.
             戦争を無くす原因を作った奴が、文句無しに神だからな。

       And then, the arms merchants around the world would rush on the god.
           その時は間違いなく、世界中の同業者がその神の所に行くさ。

 Our purpose is to give the inventory and the words of Hallelujah!! to fucking God.
          在庫をありったけ持って、ハレルヤ! って言いにな。

                                      ―――武器商人 エレクト・またんき

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           This story is not based on actual event.


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5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:26:19.39 ID:Wd/NGIk10
生甲斐とそれまでの生き様を失った人間は、人形のように生きるしかない。
初めてその言葉を聞いた時、ギコ・カスケードレンジは鼻で笑った。
人間、生きていれば何かしらの目的や目標を見つける物だと、彼は信じていた。
十四年続けて来た傭兵稼業を辞めた時、彼はもう一度その言葉を嗤う事は出来なかった。

彼の場合、人形ではなく廃人の様になってしまった。
元々軍人だった彼は、上官との折り合いが悪く、ある日上官を殴ってしまった事から軍を解雇された。
そうして自然な流れで辿り着いた傭兵稼業は、彼にとって人生その物だった。
多くの戦友が出来たのも、信頼できる友を作る事が出来たのも、傭兵と云う職業のおかげであった。

多くの戦場を戦友と共に戦い抜いた事を、ギコは誇りに思っている。
そしてそれが唯一、彼の自慢でもあった。
世界中を飛び回り、人を殺し、仲間を失った事は喜ぶべき事でも誇る事でもない。
自慢できるのは、仲間を救い、生き抜いたと云う事だけだ。

ギコは傭兵の生き様が気に入っていた。
宵越しの金は持たない豪快さと、それでいて、仲間との絆を大切にする繊細さ。
軍とは違い、理想や思想で動く事も無く、純粋に金の為に動くシンプルさも好きだった。
雇い主が思想の為に彼等を使う事もあったが、それは彼等の問題ではない。

彼の所属していたレッドリング・マーセル傭兵派遣会社には、破る事が死に直結する掟があった。
無関係な人間を巻き込まず、略奪や虐殺、凌辱に手を染めないと云う掟だ。
ブラック・クォーター社はそう云った掟が無いに等しく、あまり悪評を立てたがらない依頼者は、レッドリング社を訪れる。
所属している人間の数では負けているが、仕事に対する姿勢と質では決して劣らないと、ギコは思っていた。

傭兵は基本的には男の集団だが、稀に女の傭兵が加わる事もあった。
そう云った場合、部隊の誰もがその女性を姉や妹の様に慕い、命懸けで守り通そうと奮起した。
ギコが兄と慕ったトラギコ・ボウデン、技術を教わった内藤・B・ホライゾン。
皆、戦場でその命を散らす前に現場を引退し、今は世界中の軍に依頼され、技術顧問として出向している。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:29:07.60 ID:cBWsGnlj0
期待

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:29:36.69 ID:Wd/NGIk10
部隊でも古株になったギコは、次第に戦場から離れ、自主的に後方支援に回るようになった。
装備品の新調や整備、物資の搬送の指揮等、戦場にいる仲間の補助の役割を担った。
しかし、ギコは自分がもう不要な存在である事に薄々気付いていた。
三十二歳と云う年齢からくる僅かな衰えや、新しい事に対する柔軟な思考力の欠如。

誰も気付いていなかったが、ギコは誰よりもそれを自覚していた。
仲間に迷惑がかかる前に部隊を離れ、殆ど使わずじまいだった給与を元に、のんびりと暮そうと決めた。
丁度いい切欠もあったので決めるのは簡単だったし、辞めるのは紙を出すだけだったからもっと簡単だった。
引き留められたが、ギコはそれを丁重に断り、会社を後にした。

久しぶりに世界経済の中心と呼ばれる街を一般人として眺めた時、彼は悟った。
今、自分は大切な物を失い、社会に取り残されているのだと。

(,,゚Д゚)「……」

呆然と立ち尽くす彼の眼に映ったのは、機械的に動く人の群れだった。
何の感慨も湧かず、興味さえ抱かなかった。
山の様な退職金の一部を使って高級娼婦を買ったが、快楽以外、何も得られなかった。
何年も帰っていなかった安アパートに戻り、埃の積もったダブルベッドの上に乗ると、直ぐに眠気が襲ってきた。

その夜、ギコは死んだように眠った。
明日の事を考える余裕は、彼には無かった。
分かっていたのは、このままでは歩く屍になってしまうと云う事だけだ。
どうにかしなければと思いながら、彼は深い眠りに落ちた。


翌朝、ギコは十時に目を覚ました。


* * *

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:31:54.75 ID:pixm9MR50
これ絶対おもしろい

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:32:50.76 ID:Wd/NGIk10
ギコが目を覚ましたのと同じ時間、オトジャ・ホークネストは手にした書類に目を通し、酷い頭痛を覚えていた。
書類に記載されていたのは、とある計画表だった。
真っ先に、オトジャは目の前の人物に抗議した。

(´<_` )「秘書として言わせていただきますが、これはお止めになった方がいい。
     反感は買うでしょうが、天秤に掛ける物の重さが違いすぎる」

温厚な彼が口にする言葉は、普段と異なり、呆れと怒りを孕んでいるのが分かった。
秘書が怒るのは無理もないと、アーリジュ合衆国副大統領アニジャ・バーティゴは溜息を吐いた。
彼の言う事はもっともだし、そんなこと、わざわざ言われるまでも無くアニジャも分かっていた。

( ´_ゝ`)「オトジャ、君は私を見捨てずにいつも助けてくれた」

生え際の方から白く染まり始めたオトジャの黒髪は、彼の気苦労を表していた。
それでもアニジャに仕えて来たのは、彼が将来この国を変えると信じていたからだ。
アニジャを見据える彼のブラウンの瞳は老犬の様に静かだった。

(´<_` )「えぇ、私はあなたを信じていましたから。
     今回も、あなたがこんなことを認めたくないと思っていると、信じています」

真っ白な髪を指で後ろに漉き上げ、アニジャの青い瞳がオトジャを見つめ返した。

( ´_ゝ`)「当たり前だ。 この計画を認めたくは無い、副大統領としても、父親としても。
     だが、これは娘達が自分の意志で決めた事なんだ。
     極力それを認めてやりたいし、出来れば支援もしてやりたい。
     ある意味で、娘達の行動は世界を変えるかもしれない」

(´<_` )「お言葉ですが、それはまずあり得ません。
     確かに私もお嬢様達の意志は認めてあげたいです。
     しかし、こんな事が世界を変える事は絶対に有り得ないと断言できます」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:35:34.69 ID:Wd/NGIk10
( ´_ゝ`)「同じ事を私も言ったよ。
     ところが娘は、やって見なければ何も変わらないと言い返した。
     私は、何も言えなかった」

(´<_` )「現実を知らないお嬢様らしいお言葉です。
     計画を見れば分かる通り、これは正気の沙汰ではありません。
     危険すぎます」

( ´_ゝ`)「だから、君にこうして頼んでいるんだ。
     どうしたら娘達に安全に過ごしてもらえるのか、と」

(´<_` )「行かない事が最善の策です」

( ´_ゝ`)「オトジャ……頼む」

久しぶりに、オトジャは長い溜息を吐いた。
彼がアニジャの前で溜息を吐いたのは、実に四年ぶりの事だった。

(´<_` )「……警護をつけるべきでしょう。
     しかし、大勢で行けば現地の人間を刺激する為、五名が限度かと。
     それも、中途半端な警備会社の人間ではなく、実戦経験豊富な人間が五名、です。
     移動は防弾使用の車を使う事。 そして、無駄な事を一切しない事です。

     それが、せめてもの妥協点です」

( ´_ゝ`)「籠の中の自由、と云う訳か」

(´<_` )「お嬢様は未だに籠の中の人間です。
     籠の中で見た夢は、籠の中だけで解決するのが最善なのです。
     安全に外の世界を見せるには、籠ごと動かすしかありません」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:38:15.28 ID:pixm9MR50
長いらしいが、支援は入れても大丈夫だよな・・・?
1スレで投下しきる縛りがあるからなぁ

12 :>>11そこまで長くはなりません><:2011/12/29(木) 18:39:23.44 ID:Wd/NGIk10
( ´_ゝ`)「人選はどうする?」

(´<_` )「この街に、評判の良い傭兵会社があります。 詳細は伏せて話をしましょう」

( ´_ゝ`)「何故詳細を伏せるんだ?」

(´<_` )「きっと、まともな思考をしている人間なら断るからですよ」

( ´_ゝ`)「仕方ない、か。オトジャ、この一件は君に任せてもいいかな?」

(´<_` )「何を今さら」

( ´_ゝ`)「すまない、オトジャ。 この件が片付いたら、君には長期の休暇を与えるよ。
     勿論、有給だ。 思う存分休んでくれ」

(´<_` )「……そうですね、久しぶりに家内達を連れて旅行にでも行きます。
     でも、この国にだけは行きませんよ」

皮肉気な笑いを浮かべたオトジャに、アニジャは同じく皮肉気な笑みで答えた。

( ´_ゝ`)「私も先は長くないだろうが、その国には近寄りたくは無いよ。
     そこに行くぐらいなら、私はラシャに行くよ」

(´<_` )「今ラシャに行ったら、あっという間に外交問題になりますよ。
     ただでさえギスギスしているんですから」

改めて、オトジャは書類に目を落とした。
書類に記載された目的地。
死と飢えが蔓延し、暴力と理不尽が支配する無政府国家。
世界で最も危険な国、サマリー共和国。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:42:11.48 ID:Wd/NGIk10
* * *


オトジャとアニジャのやりとりが終わった頃、ステラ学園は、丁度中休みに入ったばかりだった。
イモジャ・バーティゴは、学友と共に自分達で立てた計画について、机の周りに集まって話し合っていた。

l从・∀・ノ!リ人「お父様から連絡が来れば、日程が決まるのじゃ」

肩まで伸び、軽くウェーブのかかったブロンドの髪を指でいじりながら、彼女はそんな事を言った。
父親譲りの大胆な性格と碧眼は彼女の自慢で、母親譲りの髪は誇りだった。
足を組み換え、イモジャは学友のシィ・ベンジャミンを見た。

(*゚ー゚)「そうですね。 私、ドキドキしています」

長い金髪と碧眼の彼女が豊かな胸の前で手を組むと、実に絵になる。
神に祈る敬虔な少女。
――実際これは比喩ではなく、彼女は本物の修道女でもあった。
熱心な信者である彼女は、事ある度に神に祈り、布教する癖があったが、皆それを疎ましく思う事は無かった。

元々ミッション系の学園なので、彼女の行動は学園内では不愉快な行為ではないのだ。

( ´∀`)「皆、持ち物は買いそろえたモナ?」

女性陣の話に混じって、学園唯一の邦人男性、茂名輝が皆に尋ねた。

l从・∀・ノ!リ人「当然じゃ。 全て一流の物を揃えたのじゃ」

(*゚ー゚)「私も、一流ではありませんが、必要な物は全て揃えました」

( ´∀`)「当日に忘れ物とか、勘弁してくれモナ」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:46:13.41 ID:Wd/NGIk10
それまで無言で控えていた少女が、会話に参加した。

川 ゚ -゚)「……あなたも、忘れない様にね」

腰まである艶やかな黒髪、そして鋭い視線を向ける真紅の瞳。
滅多な事で感情を表に出さないが、彼女の口はいつも雄弁かつ的確な事を喋る。
クー・アケーディア。

( ´∀`)「クー、それはどう言う意味だモナ?」

川 ゚ -゚)「肝心なところで忘れ物をする誰かの事を言っているのだよ」

( ´∀`)「酷い事言われてるモナよ、シィ」

(*゚ー゚)「どう聞いてもモナーの事を言っているようにしか聞こえないのですが」

モナー、とは彼の愛称だ。
彼はそれを気に入っているし、誰も彼の本名を呼ぶ者はいない。
むしろ、モナーの本名を覚えていない人の方が多い様な気が本人にはしていた。

(;´∀`)「ぬぬっ……!」

呻き声の様な物を上げ、モナーはレモナ・インハイトを見た。
五人の中で最も柔和でモナーと親しいレモナは、困った様な笑顔を浮かべた。

|゚ノ ^∀^)「でも、それは本当の事だからねぇ。
      私は助けられないよ、モナー君」

短い栗毛色の髪と小動物の様に愛くるしい碧眼は、同性でさえ惹きつけて止まない。
保護欲をそそられる存在として、学園では密かな人気を博していた。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:49:43.78 ID:Wd/NGIk10
(;´∀`)「くそうっ…… 世知辛い世の中だモナ……」

|゚ノ ^∀^)「ごめんねー」

申し訳なさそうに謝ったレモナの頭を、イモジャがあやす様に撫でた。

l从・∀・ノ!リ人「レモナ、確かにモナーの頭は救えないが、私達はもっと沢山の人を助けに行けるのじゃ」

(*゚ー゚)「えぇ、主も私達を見護ってくれる筈です。
    シスター・ハローにお話したら、この十字架をいただいたんです」

そう言って、シィは首に懸けている銀色の十字架を見せた。
掌ほどの大きさで、余計な装飾は一切ない。
泣きボクロが特徴的なシスター・ハローは、先月の頭にこの学校にやって来て、何かとモナー達の世話をしてくれた。
残念な事に彼女は、モナー達がサマリーに行く前に転勤してしまっていた。

( ´∀`)「そうだモナ。 三年最後の夏、楽しませてもらうモナ。
      俺達の分も祈っておいてくれモナよ、シィ」

(*゚ー゚)「はい!」

学校の敷地内にある教会の鐘が、中休みの終わりを告げた。
少年少女達は二泊三日の旅行に、それぞれの思惑を抱いていたが、目的は一つだった。

( ´∀`)(少しでも皆の笑顔を取り戻せれば、俺は……)

事の発端はイモジャだった。
ある日、何に影響されたのかは知らないが、イモジャは世界の貧困についてモナー達に熱く語った。
話を聞く内に、四人は次第に使命感の様な物を覚え始め、何かしたいと云う衝動に駆られた。
貧困が生む差別や虐殺を無くせば、世界は少しずつだが平和に近付く。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:52:24.68 ID:Wd/NGIk10

昔の人間がそうであったように、人は手と手を取り合って助け合い、笑い合えるのだ。
五人で話し合った結果、こうして話しているよりも現地に赴いて、何か行動を起こす事に決まった。
行動の具体化を先導したのは、レモナだった。
優しい気持ちになれば、人は自然と笑うだろう、と。

シィとイモジャが率先して意見を出し、物資の提供をする事に落ち着いた。
食料品と医療品は満場一致で決定し、そこに、一つの学生らしい意見が付加された。
荒んだ心を癒す事を目的とした、花の配給である。
これに対して唯一意見したのが、クーだった。

現実問題、花でどうにかできるのか、と。
それなら、もう少し多くの食料品を持って行った方が利口ではないかと口にした。
プライドの高いイモジャはこれに食ってかかった。
今まで食料品等では解決できなかったのだから、別の視点から攻めるべきだ、と。

シィとレモナはイモジャに味方し、多数決の結果、クーの意見は却下された。
それ以上は何も言わず、クーは納得はしなかったが引き下がった。
計画が形を成し、サマリーについて調べると、流石に全員の顔が強張った。
無政府状態の危険性と、サマリーの現状を知りって、皆は使命感に燃えた。

無実の子供や女性が苦しんでいる現状。
飢餓が蔓延し、暴力が横行している首都、マーディッシュ。
何よりも彼等を驚かせたのが、サマリーに向かう航空便が無い事だ。
ある事にはあるが、それはチャーター便だけで、旅行会社の飛行機は近寄る事すらしていない。

そこでようやく、イモジャの父親が登場する。
自分達の計画を可能な限り整理し、目的や手段を具体的に記載した書類を提出したのが、三日前。
返事は未だに来ていないが、イモジャの意見では、十中八九通るだろうとの見通しだった。
昨日、イモジャは父親と口論になったが、言い負かしてやったのだと嬉しそうに語った。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 18:56:33.00 ID:Wd/NGIk10

後は返事を待ち、日取りを決めるだけとなっていた。


* * *

レッドリング・マーセル傭兵派遣会社に電話があったのは、その日の夕方の事だった。
電話を受けたスカルチノフ・マクスウェルは、これまでの経験から、今回の依頼人が大物である事を悟った。
ジョン・ドゥと云う明らかな偽名を使って依頼されたのは、五人の男女の警護だった。
しかし、とスカルチノフは思った。

たかが五人を守るだけなら、傭兵ではなく警備会社に依頼した方が遥かに安上がりだ。
何を思って傭兵を選んだのか、スカルチノフは興味を持った。
次に依頼人のジョンは、依頼の期間を指示した。
三日、もし万が一伸びるようであれば、必要に応じて延長短縮する、との事だ。

ますますキナ臭さを覚えたスカルチノフは、相手の素性が気になって来た。
目的を尋ねると、それは教える必要が無い、と正論で返答された。
必要経費は全て、それこそ火器から煙草一本に至るまで出すと云う言葉で、スカルチノフは言及を諦め、押し黙った。
場所を聞き、派遣してほしい傭兵の種類と人数を訊いた。

ジョンが場所の名前を口にした時、スカルチノフは不覚にも訊き返してしまった。
道理で優遇する訳だ。
場所はサマリー共和国。
嘗て多くの国が内政干渉を試みて悉く失敗に終わっている事は、傭兵のみならず兵士の間にも知れている。

どれだけ危険な地域かを説明しようとしたが、ジョンは知っている、とだけ言った。
相手も危険を承知で五人の男女を送りこむと云うのだから、それなりに目的があるのだろう。
スカルチノフは考えた。
この傭兵派遣会社には経験豊富な猛者が多数いるが、サマリーに行って生きて帰って来た者は非常に少ない。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:00:44.32 ID:Wd/NGIk10

ここが思案のしどころだった。
会社としては金がもらえればそれが一番なのだが、何せ、場所が場所だ。
警護対象を守りきれる人間を派遣する義務があり、責任がある。
それを果たせなければ、この会社は信用を失い、貴重な人材まで失ってしまう。

受けるかどうかは別として、スカルチノフは次の質問の回答を要求した。
傭兵と云っても、一人の人間だ。
それぞれの個性があり、特徴もある。
依頼主の求める人物像に合う人間を派遣すれば、波風立てずに仕事を進められる。

求められた人物像は、そこまで複雑ではなかった。
社交的、もしくは外交的な人物。
腕っ節が強く経験豊かな人間。
目標達成に手段を選ばず、任務を放棄せずに完遂する人間。

人数は五人で、可能であれば女性を数名含んでほしいとの事だった。
真っ先に五人の顔が浮かんだのだが、スカルチノフはあっ、と声を出した。
一人は、昨日付けで辞めているのだ。

『どうされました、ミスタ・スカルチノフ?』

/ ,' 3「あぁ、実は五人の目星がついたのですが、一人少し問題がありまして。
   腕は確かだし任務も完遂するんですが、彼は昨日辞めているんです。
   しかし、彼は今までに五回、サマリーに行って帰って来ているのですが……

『五回も? それは凄い。
是非、彼を雇いたいのですが』

/ ,' 3「はぁ、しかしもうウチの会社の人間ではなくて」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:04:39.88 ID:Wd/NGIk10
『構いません…… その方のお名前は?』

スカルチノフは逡巡した。
会社に関係のない人間の情報を口にしていいのだろうか、と。
しかしながら、スカルチノフには別の考えもあった。
退社する際、彼が見せていたあの顔。

大切な物を喪失した人間の浮かべる、死者の様な精気のない顔。
彼はまだ、戦うことに嫌気がさしてはいない。
戦場に生きた典型的な人間だ。
それに、スカルチノフは彼の事が好きだった。

彼にはまだ、死んだ魚の様な目をしてほしくは無い。
今回の任務を機に何かが変われば、それは素晴らしい事だ。


/ ,' 3「ギコ、ギコ・カスケードレンジです」


『ありがとうございます、ミスタ・スカルチノフ。
ミスタ・ギコにはこちらから連絡いたしますので、日取りが決まり次第改めて連絡いたします』


* * *


傭兵を辞めた翌日、ギコは街や社会に慣れようと、人混みの中を歩いてみたり、店を覗いたりしていた。
悪くは無いが、面白味のない景色だった。
店員は同じ事を喋り、スクランブル交差点では我先にと向こう側に渡る。
夏の空気と熱気は、不愉快極まりなかった。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:09:05.93 ID:Wd/NGIk10
何と言っても風通しが悪い上に、空気が淀んで不愉快だったのだ。
排気ガスと煙草の匂いに眉を顰め、ギコは目に留まった喫茶店に入った。
腹も減っていたし、喧騒から少し逃げたくなった為だ。
広い店内に人は疎らで、ギコは窓際の席に座った。

程なくして笑みを浮かべる女性店員が注文を取りに来て、ギコはサンドイッチのセットを頼んだ。
徐々に客が増え、空いていた席は瞬く間に埋まって行く。
客層は若い男女が主で、スーツ姿の客は見当たらなかった。
彼は店内を見回し、ある事に気付いた。

自意識過剰ではなく、店内の女性客が何度か彼を見ているのだ。
目線が合うと目を逸らすか目を伏せるかして、再び同じ事を繰り返した。
また、ある女性客に至っては、手を振って来た。
ギコには理解不能だった。


チップでも要求しているのだろうか?


(,,゚Д゚)「……何なんだ」

女気とは無縁の生活が長く、彼には自分が異性の目にどの様に映っているのか興味が無かった。
女を抱いた事は幾らでもあるが、だが、それ以外の関係となると、一人ぐらいしか経験が無い。
戦場で長い時間を過ごしていた事によって、一般的な生活には未知の事が多すぎる。
もう少し、そう云った事に対して興味を示していればと、ギコは口の中で呟いた。

少なくともギコの容姿は醜くは無く、だからと言って、整っていると云う訳でもない。
年相応の貫録を身に付け、年下の女性からしてみれば、正にそれが彼の魅力だった。
ポロシャツにジーンズ、そして8インチのデザートブーツと云うシンプルな服装は、彼が持つ魅力を更に引き出していた。
髪の殆どは白く染まっているが、ちらほらと黒い毛――彼は鏡を見る度に、灰の様な髪だと思っていた――も残っている。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:11:00.44 ID:79bht3QNO
支援

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:13:04.68 ID:Wd/NGIk10

薄い青色の瞳は宝石のように美しいが、今、その輝きは失われていた。
ウェイトレスがサンドイッチとコーヒー、そしてサラダとスープを盆に乗せてやって来た。
手際良く目の前に置き、ギコがチップを多めに渡すと、静かに去って行った。
この間、ギコはウェイトレスの顔を全く見ていなかった。

単純に、興味が無かった。
ところがこのウェイトレスはギコに大いに興味を示しているようで、去り際にウィンクをしていた。
仮にギコが要求すれば、追加のチップなしでそれこそどの様な――尺八も――サービスでも受ける事が出来ていただろう。
その様な事をする訳もなく、少し期待していたウェイトレスは落胆して、他の客の注文を取りに向かった。

黙々とサンドイッチを口に運びながら、ギコは久しぶりに食事をゆっくり食べると云う事をしていた。
戦場では何時食べられるか分からない為、可能な限り早く食べる事を心掛けていた。
ここは戦場ではないし、急ぐ必要に迫られていない。
思っていたよりもサンドイッチの味はよく、スープも悪くは無かった。

サラダにはクルトンやベーコンが乗っており、上にはパルメザンチーズがかかっていた。
これで七ドルなら、安い方に分類されるだろう。

(,,゚Д゚)「……ムグムグ」

窓の向こうには、戦場でもないのに早歩きをする人の群れがあった。
急いで何処に向かうのだろうか。
その果てに何があるのか、皆、分かっているのだろうか。
ギコは感慨に耽りながら、サンドイッチをもう一口食べた。

その気になれば五分で片付く食事を、たっぷり四十五分掛けて食べたのは、本当に久しぶりだった。
じっくりと料理を味わう事も出来たし、余計な事を考えないで済む時間も過ごせた。
最初とは別のウェイトレスが、コーヒーを注ぎ足しに来た。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:17:57.27 ID:Wd/NGIk10

ミセ*゚ー゚)リ「あの、お客様」

(,,゚Д゚)「ん?」

ミセ*゚ー゚)リ「お客様の名前はギコ様で、間違いないでしょうか?」

(,,゚Д゚)「……だとしたら、なんだ?」

若いウェイトレスはほんの一瞬、ギコの瞳の奥に底知れぬ恐怖を感じ取った。
体をビクリと振るわせたが、直ぐに気を取り直した。

ミセ*゚ー゚)リ「お客様にご用がある、と云う方がいるのですが、合い席でも構いませんか?」

(,,゚Д゚)「俺に、客?」

ミセ*゚ー゚)リ「あちらの方です」

手が差す方を見ると、そこにはフレームレスのメガネをかけたスーツ姿の男がいた。
年齢はギコよりも一回り程上だろうか。
体は細身だが、苦労を知っている顔をしていた。

(,,゚Д゚)「あぁ、構わない。 彼は自分の名前を名乗っていたか?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、ジョン・ドゥ様、とおっしゃっていました」

そう言って、ウェイトレスはジョン・ドゥの元に向かった。
注ぎ足されたコーヒーを啜り、ギコはこちらに歩いて来る彼の一挙手一投足を観察した。
隙だらけで、戦闘訓練はおろか、服の下に武器も持っていない様子だった。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:21:50.13 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「……」

(´<_` )「お初にお目に掛かります、ギコ様。
     ギコ・カスケードレンジ様で、間違いないですね」

(,,゚Д゚)「あぁ、ジョン・ドゥになり損ねた男だよ」

(´<_` )「ははっ、申し訳ありません。
    仕事柄、本名はまだ明かせないのです」

ジョンは謝りながらギコの前に腰かけ、愛想笑いを浮かべた。
机の上で両手を組み、興味深げにギコを見る。

(,,゚Д゚)「で、何の用だ?」

コーヒーカップを持ち上げ、ギコが問う。

(´<_` )「嘗て、傭兵稼業で有名を馳せたと聞きました」

(,,゚Д゚)「有名になっても今は特に意味は無い。
    ドックタグがあれば、ジョン・ドゥにならずに済むからな」

(´<_` )「少なくとも、私には意味がありましたよ、ミスタ。
     単刀直入に尋ねます。
     ギコ様、サマリーで何度か戦った経験があると云うのは、本当でしょうか?」

(,,゚Д゚)「あぁ。 あんなところにわざわざ俺が観光に行くとでも思うか?
    公には五回、だったかな。
    一度だけ非正規部隊で参加したから、合計で六回だ」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:25:18.46 ID:Wd/NGIk10

すっ、とジョンの目が細められた。

(´<_` )「その経験を見込んで、お仕事を依頼したいのですが」

(,,゚Д゚)「運が悪かったな。 傭兵は昨日で辞めたんだ。
    それに、映画じゃこう云う依頼はロクでもない結果にしかならない」

(´<_` )「傭兵としてではなく、個人的に警護の仕事を依頼したいのです」

(,,゚Д゚)「警護? まさかとは思うが、サマリーで警護の仕事とか言うんじゃないだろうな?
    流石に、冗談だろう。
    ジョークの勉強が足りないな」

(´<_` )「冗談ではありません。
     期間は三日、これは場合によっては伸び縮みしますが、対象は合計で五名です。
     必要な物は全てこちらで用意させていただきます。
     如何でしょうか?」

(,,゚Д゚)「向こうに到着した途端に仕事内容変更と言われかねない。
    アスリカにライオンを見に行くぐらいの気持ちだろうが、あそこにいるのは知恵と銃を持った人間だ。
    自殺しに行くようなもんだぞ」

(´<_` )「それはありません。 少なくとも、あなたが来てくれれば。
     仕事内容はごく単純です。
     五名が滞在している間の安全確保。 そして、五名が生きた状態で帰国する事です」

(,,゚Д゚)「三日も向こうにいて無傷で帰国させるなんて、誰がやっても無理だろうな。
   戦車の中にいても危ない国だ。
   ランボーだって場所を選んで仕事をしているのを知ってるか?」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:25:51.16 ID:pixm9MR50
ジョンドウって名無しのゴンベみたいなもんだったか

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:29:05.18 ID:Wd/NGIk10
(´<_` )「そこで、あなたの力をお借りしたいのです」

(,,゚Д゚)「一人で五人の物好きの面倒を見るのは無理だし、御免被る。
   Aチームかセガールでも探してくるんだな」

(´<_` )「いいえ、一人ではありません。
     あなたが嘗て所属していた傭兵派遣会社から、もう四名やって来る事になっています」

(,,゚Д゚)「……四人? 誰だ?
    まぁ、サマリーに行くのならフサとシャキンはいるだろうな」

(´<_` )「申し訳ないのですが、現段階であなた以外のメンバーを私は知らないのです」

(,,゚Д゚)「そうか。 と云うか、俺がこの話を受けるとは言っていないぞ」

(´<_` )「受けてはいただけないのですか?
     お礼は勿論弾みます」

(,,゚Д゚)「金の問題じゃない。
    腕の問題だ。 いいかい、俺はもう三十二だ。
    戦いの場に長居し過ぎて、頭がどうにかなっちまった人間だ。
    ビエルマならまだしも、こんな人間がサマリーで人を警護できるとは思えないね。

命の保証は出来ないし、怪我を負わせるかもしれない。
傷を負ったままジャングルを土足でハイキングする様なもんだ」

(´<_` )「生きて帰る事が出来れば、と云うのが私どもの最終的な要望です。
     それに、あなたはまだ現役で戦える様に見えるのですが」

(,,゚Д゚)「メガネを変えな」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:32:26.37 ID:Wd/NGIk10
ギコがジョンのメガネを指さしてそう言った、正にその瞬間。
誰も全く予想していなかった事態が起こった。
八人の男が店のドアを乱暴に押し開けて、なだれ込むようにして入って来た。
服装は黒一色で統一され、目だし帽を被っているが、体格から男だと容易に判断出来た。

もう一つ判断出来た事がある。
彼等の手に握られているのはおもちゃではなく、本物の銃。
二人はショットガン、残りの六人はアサルトライフルだ。
銃を持って怪しい格好をした人間が店に来る目的は、ただ一つ。


ΩΩΩ<全員動くな!


強盗である。
彼等は素早く散らばり、出入り口に二人、裏口に二人、残りの四人は店内の互いの姿が確認できる位置についた。
最後に二人遅れて入ってきたが、一人の男は目だし帽を被っておらず、素顔だった。
顔に大きな切創がある大男で、一目でリーダーだと分かる威厳に似た自信が溢れていた。

女性客が悲鳴を上げ、恐怖が客の間に伝染する。
リーダー格の男は無言で拳銃を取り出し、天井に向けて一発だけ撃った。
威嚇は成功だった。
叫んでいた女達は押し黙り、男客の大半は青ざめていた。

素顔の男と共に入って来たもう一人男が、レジの横に備わっているスイッチを使い、店のシャッターを全て下ろした。
身のこなしは軽く、サブリーダー辺りだろうと、ギコは冷静に分析をした。
ふと視線を前に向けると、ジョンの顔は青ざめ、体が震えていた。
店の隅々にまでよく響く声で、リーダーの男が叫んだ。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:36:00.30 ID:Wd/NGIk10
(メ・∀・)「これより貴様らには人質になってもらう。
     時間は政府の対応次第だ。
     悪いがそれまでの間、大人しく人質に徹していてもらいたい。
     逆らえば身の安全は保証しない。

     これは要求ではない。
     命令だ!」

すぅ、と息を吸い、リーダーの男は静かに、効果的に告げた。

(メ・∀・)「私の名前はモララー・アーバン。 血の旅団の団長だ!」

モララーの傍らにいたサブリーダーは、備え付けの電話を使い、何処かに電話を始めた。
ややあってモララーに電話を受け取り、手短に要求を告げ、叩きつける様にして受話器を置いた。
口の動きを読み、ギコは相手の目的を理解した。
金と自由だ。

死刑執行を待つ彼の同胞の釈放、そして一千万ドル。
今から二時間以内に対応しなければ、人質を順に殺し、女は凌辱するとの脅迫だった。
呆れたギコは、コーヒーが冷めない内にそれを飲む事にした。
すると、強盗の一人がやって来て、ギコに向かって言った。

Ω「糞度胸があるみたいだが、それが最後の飲み物になるかもしれないぜ」

(,,゚Д゚)「お代りは自由だそうだ。 そう焦るな。
    どうせ、暫く客は入ってこない」

Ω「へっ」

(,,゚Д゚)「これが意外と美味いんだ」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:37:05.13 ID:rF+5eS+E0
支援

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:41:08.07 ID:Wd/NGIk10
Ω「……そうかい。
  おい、そこの女!」

ミセ;゚−゚)リ「ひっ……!」

呼ばれたウェイトレスは恐怖に青ざめていたが、こちらに近付いてきた。
よく見れば、彼女はジョンをギコの元に連れて来たウェイトレスだった。

Ω「コーヒーを持って来い」

ミセ;゚−゚)リ「は、はいっ」

(,,゚Д゚)「お代り」

Ω「……は?」

強盗はギコが何を言ったのか、理解できていない様子だった。
そこでギコは親切に、もう一度、子供に言葉を教える様にゆっくりと丁寧に告げた。

(,,゚Д゚)「ポットごと、お代りを持って来てほしいんだが」

Ω「おいおい、お前、人質らしくしようとは思わないのか?」

(,,゚Д゚)「人質らしくする為にも、そのウェイトレスが淹れたコーヒーが必要なんだ」

Ω「駄目だ。 お前はそのコーヒーだけで我慢しろ」

(,,゚Д゚)「……嫌だと言ったら?」

Ω「殺さない程度に殴る」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:46:10.91 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「やめておけ、三下。 自己責任で保険料は出ないぞ。
    福利厚生はしっかりと確認したか?」

Ω「舐めるなよ!」

アサルトライフルの銃床を振り上げ、男はギコに殴りかかった。
しかし、ギコの動きは俊敏で、反応は完璧だった。
手にしていたコーヒーを男の目にかけて視界を奪い、振り下ろされたライフルの銃床を掴んだ。
流れる様な動きでライフルを奪い取り、銃口で男の喉を潰した。

Ω「ごぇあっ?!」

Ω「動くな! 動くんじゃない、この糞野郎!」

足元で悶絶する男の背に銃口を向け、ギコは周囲を睨んだ。
銃を構えて接近してくる男の数は三人。
店内の見回りをしていた全員が、ギコにじりじりと近付いていた。
入り口の見張りをその場に待機させ、モララーとサブリーダーもやって来た。

(メ・∀・)「あんた、やるな。 軍人か警察ってところか?」

(,,゚Д゚)「残念だったな。 俺は今無職なん……
    ……そうか、これがニートと云う奴か。
    俺はニートなのか……
    ……喫茶店でゆっくりできないなんて、ニートも楽じゃないんだな」

(メ・∀・)「そいつは勿体ない。 どうだ、俺達と組まないか?」

(,,゚Д゚)「話が飛躍しすぎだ。 俺はコーヒーが飲みたかったんだ」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:49:31.09 ID:rF+5eS+E0
支援

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:50:22.65 ID:Wd/NGIk10

(メ・∀・)「幾らでも飲ませてやる。 高級なコーヒーに、イイ女も抱けるぞ」

(,,゚Д゚)「それよりも俺は今、そこの女の淹れた安っぽいコーヒーが飲みたいんだ」

(メ・∀・)「分かった、分かったよ。 おい、女。
     コーヒーを持って来い、ポットごとだ」

(,,゚Д゚)「あぁ、それでいい。
    後もう一つ。 俺は銃を突きつけられてコーヒーを飲むのが嫌いなんだ」

(メ・∀・)「その前に、あんたの持ってる銃を捨てな」

(,,゚Д゚)「言葉が欠けてるな。
    次からは、安全装置をかけて、ゆっくりと地面に置く様に指示するんだ。
    暴発してからじゃ遅い」

(メ・∀・)「そうしてくれ」

店にいる全員が、ギコの行動を見守っている。
まさか裏切るのでは、と云う視線を幾つか感じているが、ギコは気にした様子も無く安全装置を掛け、ライフルを地面に置いた。
例のウェイトレスが怯えたまま、コーヒーの入ったポットを持って来た。

(,,゚Д゚)「気にしなくていいから、コーヒーを淹れてくれ」

ミセ;゚−゚)リ「は、は、はい」

震える手でコーヒーが注がれ、ギコはウェイトレスのすがる様な目を無視して、コーヒーを一口啜った。
ポケットから数枚の硬貨を出して机の上に置き、ウェイトレスにチップとして紙幣を一枚手渡した。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:54:08.22 ID:Wd/NGIk10
(メ・∀・)「……で、あんた、俺達の仲間になるつもりはないか?
     あんたの腕があれば、今後の計画もスムーズに行く」

(,,゚Д゚)「計画?」

(メ・∀・)「革命だ」

(,,゚Д゚)「花の種が値上がりしたってニュース並みに心底興味が無い。
    トイレットペーパーが値上がりするってニュースの方が、俺は興味深いな」 

(メ・∀・)「必要なのはあんたの腕だ。 思想は最初から期待していない」

(,,゚Д゚)「悪いが、その誘いは断る。
    自分よりも弱い奴に、しかも頭の悪い奴の下で働くとロクな事にならない」

(メ・∀-)「残念だ。 じゃあ、死んでもらおう」

撃鉄の起きた拳銃の銃口がギコの米神を捉えていても、彼は動揺する気配を見せなかった。
何事も無いかのようにコーヒーを飲み、満足げな溜息を吐いて、コーヒーカップを机に置いた。

(,,-Д-)「ふぅ…… 残念だ」

左手で銃を掴んで、しっかりと米神に押し付けさせる。

(,,゚Д゚)「やるなら一発で頼む。
    45口径のコルトなら、あっという間だろ」

銃爪に掛かった指に力が込められ、撃鉄が落ちた。
だが。
撃針は、叩かれる事は無かった。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:54:23.60 ID:rF+5eS+E0
しえん

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:55:58.79 ID:klzOgXTR0
lw´‐ _‐ノv「米神さんもぐもぐ」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 19:58:09.02 ID:Wd/NGIk10
(;・∀・)「なんっ?!」

一枚の硬貨が撃鉄と撃針の間に挟み込まれているのを見て、モララーは間の抜けた声を上げた。
それが彼の最後に見た光景であり、最後に口にした言葉らしい言葉だった。
銃声が響き、銃弾がモララーの額から侵入し、背後に脳髄と骨片をぶちまけた。
即死したモララーを見て、部下はほんの数瞬、思考が現実に追いつかなかった。

瞬く間にサブリーダーが胸を撃ち抜かれて仰向けに倒れ、銃声が次々と響いた。
店内の警戒をしていた三人は急所を撃たれて死亡し、出入り口に立っていた二人はやっとライフルを構えた。
構え終わった時には、飛来した二発の銃弾が二人の顔に穴を開け、即死させた。
銃声を聞いた二人が店内に戻って来たが、彼等は人実を楯にすると云う手段を考え付かなかった。

無防備な喉と右目を銃弾が抉り、最後の二人を屠った。
この間、実に7秒。
硝煙を上げる拳銃、ベレッタM84を懐に戻し、ギコは机の上のコーヒーを一気に飲み干した。

(,,゚Д゚)「ごちそうさま」

その瞬間、店内から割れんばかりの拍手喝采が起きた。
二分後に警察が完全装備で到着した頃には、ギコとジョンは現場で優雅にコーヒーを飲んでいた。
市警の部長は二人に感謝しつつ、事情聴取をしなければならない旨を告げた。

( ,'3 )「こっちも一応義務ってものがあってね。
    あんた、名前は?」

(,,゚Д゚)「ジョン・ランボー」

( ,'3 )「はははっ! そうかい、ランボーか。 そいつはいい」

警官はギコの肩を叩いて笑った。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:01:40.25 ID:Wd/NGIk10

( ,'3 )「あんた、よくやってくれたよ。
    こいつら中々手強くて、ウチの署の人間が何人も殺されたんだ」

(,,゚Д゚)「それはお気の毒に」

それは、上辺だけの同情ではなく、本心からの慰めの言葉であった。
現場で仕事を果たそうとして殉職した警官が、勇敢で無くて何だと云うのか。

( ,'3 )「だから今回はフル装備で来たんだが、いざ来てみたら、一人を残して全員死んでた。
    それもほとんど急所を一発だ。
    是非ウチに来て若い奴等の教育をしてほしいんだが、どうだ?」

(,,゚Д゚)「教えるのは苦手でね。
    そう云う柄じゃないんだ、すまない」

( ,'3 )「だろうね。そう云う顔だ。
    さて、調書だが……
    それは、私が適当に作っておこう。 名前さえあればどうにでもなる」

(,,゚Д゚)「いいのか?」

( ,'3 )「あっちにいる人の上司が、上手く取り計らってくれるさ。
    あんたも、あの人の関係者らしいからな」

指さす先には、別の警官に事情聴取されているジョンの姿があった。
距離は開いており、加えて、周囲はやじ馬で大分騒がしくなっている。
彼にはこちらの会話は聞こえていないだろう。

(,,゚Д゚)「……ジョンか?」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:04:54.33 ID:Wd/NGIk10

( ,'3 )「おいおい、何を言ってるんだ。
    あれは秘書のオトジャ・ホークネストさんだよ。
    アニジャ副大統領の事で話してたんじゃないのかい?」

(,,゚Д゚)「そう云えばそうだった。
    ショックで忘れてたよ」

アニジャ・バーティゴ。
何故彼が、この件に絡んでいるのだろうか。
五人の警護が何を意味するのか、ギコには予測し兼ねた。
ただ分かるのは、警護対象の中に重要人物がいると云う事。

それに、オトジャ≠フ言っていた事が本当だとすると、中々に面白そうな話になって来た。
傭兵時代の戦友とまた作戦を共に出来る。
受けても損は無いのでは、とギコは考えを改め始めた。
ただし、サマリーと云う場所が唯一の問題だった。

体の反応は今のところ鈍っていないが、何時鈍るか分からない。
戦争が日常風景と化しているあの場所に行っても、まだ通じるのだろうか。
分からない。
分からないが、試してみるのも一つの選択である。

このまま腐って朽ち果てるのを待つか、それとも何か意味のある場所に向かうか。
答えは数秒の内に弾き出され、ギコは決断した。
警官に礼を言って、丁度解放されたオトジャの元に向かう。

(´<_` )「決まりましたか?」

(,,゚Д゚)「あぁ。 気が変わった。引き受けよう、オトジャ」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:06:22.98 ID:rF+5eS+E0
支援

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:08:36.88 ID:Wd/NGIk10
(´<_` )「……そうですか。
    では、改めて。
    よろしくお願いいたします、ギコ様」

(,,゚Д゚)「こっちもよろしく」

(´<_` )「後日詳細を連絡いたしますので、それまでお待ちください」

(,,゚Д゚)「分かった」

一日味わったあの虚無感。
生きている実感のない日常。
流れに身を任せる社会。
思考停止をして、決まった道筋を辿る実感の伴わない幸せ。

やはり、自分は駄目な人間だと、ギコは心の内で苦笑した。
争いの中に身を置かなければ、結局のところ、自分は何もできないのだ。
考える事さえもままならない。
今一度戦いに赴けば、新しい自分の居場所を見つける事が出来るかもしれない。

戦場以外の場所に、自分の生きて行ける場所、死に場所を見つける事が。
握手を交わしてオトジャと別れ、ギコは安アパートの埃っぽい部屋に戻った。
ベッドの上に寝転がり、今日の出来事を振り返った。

(,,゚Д゚)「……警護、か」

殺す事よりも護る事の方が遥かに難しい事を、ギコは知っていた。
驚異の潜んでいる場所や、襲撃の方法、時間、人数などによって戦況は変化する。
故にテンプレートは無く、状況に合わせた最適な対応が求められる。
五人を護るのに、五人の精鋭。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:11:44.07 ID:Wd/NGIk10
一人で一人を護る計算になるが、問題は敵以外にもある。
味方も、警護をする上では障害になり得る。
運動が苦手、閉所恐怖症、トラウマ等、思いもしない要素を秘めている可能性がある。
何が発端で何が起こるか、把握していなければ対処し辛い事がある。

その辺りを含めて、準備を整える必要がある。
少なくとも、物分かりの悪い子供でなければ、どうにかなるだろう。
瞼を下ろし、ギコは浅い眠りについた。

* * *

コバルトブルーの海と煌めく水面を見た時に感じた小さな感動は、今や微塵も残っていなかった。
目新しい変化も発見も無い水面を見て、ヒート・O・ワイルドは溜息を吐いた。
世界一周を目的とした豪華客船アントワネット号での船旅は、退屈の連続だった。
とある令嬢の警護を任されたヒートは、乗船初日から何かトラブルが発生しないものかと密かに期待していた。

期待は淡くも砕かれ、依頼人の周囲ではトラブルの火種さえ無かった。
乗客は皆表立っての諍いは好まない様で、策略を巡らせるのにもっぱら時間を割いている様だった。
殴り合いにでもなってくれれば、その機に乗じてストレスを発散できるのに、とも思っていた。
今彼女は、見晴らしがよく、人が来ない船の最上部に来ていた。

施錠されていたが、ヒートに言わせれば、お菓子のおまけ程度の錠だった。
解錠に十秒と掛からず、こうしてヒートは手頃な休憩スペースを獲得する事に成功していた。
依頼人の令嬢は金持ち同士の会話に忙しく、ヒートが近くにいると集中できないと不満を口にしていた。
そこで良き理解者であるヒートは喜んで他所に行き、必要な時に連絡をするようにと言い残し、ここに来ていると云う次第だ。

黒のスーツと白いワイシャツ。
そして赤いネクタイと云う格好は、二十六歳と云う年齢が醸し出す雰囲気と相まって、妙齢の女性が持つ素の魅力を引き出していた。
すらりと引き締まった体は無駄が無く、モデルかと見紛うばかりの体型だった。
肩まで伸びた亜麻色の髪は潮風と戯れ、空と同じ色をした碧眼は気だるげに海を眺めていた。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:12:03.69 ID:uqlKKJ9s0
支援

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:14:37.00 ID:Wd/NGIk10


ノパ听)「……だっる」


手摺に凭れかかり、ヒートはぼやく。
こうも暇だと、体がなまってしまう。
スリルを求めて入った傭兵なのに、今回の仕事はスリルとは無縁すぎた。
戦場での一日と船上での一日は、雲泥の差があった。

確かに料理は美味いし安全だが、心が腐る。
その点で言えば戦場は危険だが、常に心が鍛えられる。
美味い料理にあり付けるかどうかは、自分達次第だ。
砂漠で飲む高級料理よりも美味い水の事を、ヒートは知っている。

何より仲間がいる。
家族に等しい仲間は、ヒートの生き方を否定しないでくれた。
彼女は実感が欲しかったのだ。
生きているという実感が。

だからこそ、実業家の父の後を継がずに傭兵になったのだ。
それがどうだ。
この船に乗り合わせている客の全員が、嘗てヒートが嫌悪した人間達だった。
一体何の皮肉なのだろうか。

選ばれた人間だと錯覚している馬鹿と過ごすのは苦痛だったが、仕事だからと割り切って我慢していたが、限度がある。
依頼人も含めて、あの馬鹿達が食中毒で悶え苦しめば面白いのにと、ヒートは邪悪な想像に耽っていた。
ふと、ヒートは海上に変わった物を見つけた。

ノパ听)「ん? ……へぇ」

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:18:48.27 ID:Wd/NGIk10

――世界一周最終日。
最後の最後に、面白い催し物がありそうだった。
いそいそとその場を立ち去り、ヒートが向かったのは操舵室だった。
そこには最新鋭の機材が積まれ、船員達がコンソールを眺めながら雑談をしていた。

突然現れたヒートに、最初、船員達は目を丸くして驚いた。
何故なら操舵室には鍵が掛けられ、パスカードが無ければ入室できない仕組みになっているのだ。

ノパ听)「あぁ、ちょっといいか?」

(´・ω・`)「誰ですか、貴女は?」

逞しい口髭を生やした船長がやって来て、最初にしたのは質問だった。
有無を言わせぬ口調だったが、ヒートは軽く流した。

ノパ听)「レーダーに、何か映っていない?
小さい船が二隻か、三隻ぐらい」

(´・ω・`)「ここは関係者以外立ち入り禁止です。
どの様に入ったかは知りませんが、直ぐに出て行って下さい」

ノパ听)「まぁまぁ、私の話を聞いても損は無いからさ。
それを教えてくれたら出てくよ」

(´・ω・`)「……おい、どうだ?」

不毛なやり取りを避ける為に、船長は渋々と云った様子で船員に問いかけた。
レーダーを見ていた若い船員が、あっ、と声を上げた。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:22:41.08 ID:Wd/NGIk10
「船長、微小ですが、確かにレーダに船が映っています。
後方から二隻接近、前方の一隻は本船の航路に出ています」

(´・ω・`)「何? 警告しろ」

「分かりました」

オープンチャンネルで警告し始めた船員を見て、ヒートは鼻で笑った。
不愉快そうな目を向けて来た船長に対して、ヒートは無礼を詫びる事無く言った。

ノパ听)「いや、船長さん。 冷静に考えてみなよ。
     これだけでっかい船の前に一隻、後ろに二隻。
     乗ってる人間は皆金持ちだよ?
     落とし物を届けるにしちゃあ、随分とおかしくない?」

(´・ω・`)「ご協力には感謝しますが、今すぐ出て行って下さい」

ノパ听)「まぁ、そう焦らないで。
    警告するだけ無駄だってことさ。
    その間に船員に武器を持たせて、連中が乗り込んでくる前に対処したほうがいいと思うんだけど、私は」

(´・ω・`)「おい、ジミー! このご婦人を連れ出せ」

呼ばれてやって来たのは、ヒートよりも頭三つは背の高い大男だった。
日に焼けた小麦色の肌、丸太の様に太い両腕。
この船のトラブルを解決するのにもってこいの人材だ。

Θ「失礼」


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:23:21.25 ID:Wd/NGIk10
すみませんが、一休憩入れさせていただきます

残っていればこちらに、残っていなければしたらばの方に行かせていただきます

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:31:40.30 ID:LNBO8f7E0
ho


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:43:13.02 ID:o6WtwqH1O


51 :保守ありがとうございました:2011/12/29(木) 20:45:13.29 ID:Wd/NGIk10
ぶっきらぼうにそう言って、ジミーと呼ばれた大男がヒートの腕を掴んだ。
直後、ジミーは腰が抜けたようにその場に座り込んでしまった。

ノパ听)「レディにはもう少し優しくした方がいいよ、坊や」

Θ「なっ、なんで」

ノパ听)「力尽くじゃ、女の子は振り向かないってこと。
船長さん、そう思わない?
懐の銃を抜く前に、私はあなたを含めた五人を殺せるよ」

(;´・ω・`)「くっ……!
     目的は何だ?」

ノパ听)「おいおいおいおい、ちょっと、勘違いしないでよ。
    私はただ、あの海賊と遊びたいってだけ。
    腕の良い連中を何人か私に貸してくれない?」

(;´・ω・`)「悪いが、貴女を信用できない」

ノパ听)「へぇ。 真面目なのは感心するけど、頑固なのは感心できないね。
    臨機応変って知ってる?」

(´・ω・`)「私には乗客を守る義務がある」

ノパ听)「だったら尚更さ。
    私に任せてくれれば、全員無事なのは保障するし、連中を排除するのも保障する。
    それが、私の仕事でもあるからね」

(´・ω・`)「貴女の仕事とは?」

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:49:57.62 ID:Wd/NGIk10

パ听)「豚のお守を任せられて暇を持て余した傭兵」

(´・ω・`)「信用していい根拠は?」

「船長!」

若い船員が叫ぶが、船長はそれを無視してヒートの答えを待った。

ノパ听)「無いね。 結果で信用してほしいよ、私は」

(´・ω・`)「……私には、貴女に協力を要請するような権限は無い。
     だから、ここから出て行ってもらう」

ノパ听)「……」

(´・ω・`)「ただし、貴女は大変お強いでしょうから、数人の部下を使って安全な場所に連れて行かせます。
     暴れられると困るので、勿論部下には武器を持たせます。
     いいですね?」

ノパ听)「分かったよ、船長さん。 船が停まる前に、客を部屋に戻しておくともっといい」

船長は無言で頷き、船員の一人が走って部屋を出て行った。
それから、船長が指名した者、船内放送で呼び出した屈強な男達が操舵室に集まった。
各員はMP5短機関銃を持ち、険しい表情をしている。
ヒートを含め、総勢十名。

(´・ω・`)「私は貴女を何と及びすれば?」

ノパ听)「ヒートでいいよ」

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:54:11.86 ID:Wd/NGIk10

(´・ω・`)「分かりました、ヒートさん。
     本船はこれから約五分後に正体不明の船に接近し、停船します」

ノパ听)「了解。
    それじゃあ野郎共。 一つ景気よく行こうか」

ヒートはリーダ格の船員、セントジョーンズに案内を頼んだ。
アントワネット号は六階層あり、各層の船尾はバルコニーの様に開けている。
一階の船尾に向かって素早く人目につかないように移動し、船尾にいた客を船内に戻させた。

ノパ听)「悪いね、皆。 ちょっとここの整備をしなきゃいけないんだ」

船尾の床は芝生が敷き詰められ、小さな熱帯植物が植えられていた。
客がいなくなったのを確認してから、全員を木の影にしゃがませた。

ノパ听)「いいか、連中は目がいい。
    ギリギリまで武器を見せたら駄目だ」

(’e’)「私達の行動は?」

ノパ听)「この船が停まった時に、連中は仕掛けてくる。
    このデカイ船に乗り込むには、この場所を使うしかない。
    フックを使ってくるだろうから、来た時に撃てばいい」

(’e’)「分かりました。 ヒートさんは?」

ノパ听)「私一人で一隻に飛び乗って、前にいる船を潰す。
    他に質問は無いか?」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:57:06.75 ID:Wd/NGIk10

(’e’)「ありませんが、どうして一人でそこまでやるんですか?
   英雄的行動が好きな様には見えないのですが」

ノパ听)「退屈してたんだ。 それに、ストレスが溜まっててね。
    金持ちの連中は気に入らないんだ。
    私の依頼人が寄越すチップの額を知ってるか? 三セントだよ」

MP5を肩に掛け、ニヤリと笑みを浮かべたヒートを見て、船員達は皆呆れたように笑った。
やがて、船の速度が落ち、後ろから迫る船影が大きくなり始めた。
甲板には銃を持った男が数人おり、二隻とも重機関銃を備えつけていた。
ハンドサインで船員を配置に付け、セントジョーンズはヒートの横にいた。

ノパ听)「……さて、と」

船が完全に停まり、鋼鉄のフックが縁に三つ掛けられた時、ヒートは言った。

ノパ听)「状況開始」

ぎし、ぎし、とフックが軋みを上げる。
縄梯子を使って人が登って来ているのだと、誰もが分かった。
ヒートは拳銃を懐から抜き放った。
歯を見せてヒートが笑い、その場が一瞬で戦場に変わる。

姿勢を低く保ったまま走り出したヒートは、フックの下にある梯子を上って来る人間を二人撃ち殺した。
当然、待ち伏せされているとは予期していなかった海賊は、早急な対応に迫られた。
船はギリギリまで寄せて止められ、梯子は船に繋がっている。

ノパ听)「船の連中を撃て!」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 20:59:28.92 ID:Wd/NGIk10

短機関銃が一斉に火を噴いた。
備えつけのM2重機関銃を撃とうとしていた海賊は体中を血に染め、甲板に転がった。
操縦者に向けてヒートが撃ったが、防弾仕様のガラスに阻まれた。

ノパ听)「援護しろ!」

銃弾がシャワーの様に海賊船に降り注ぎ、海賊は船内に釘づけにされる。
その隙に、ヒートは縄梯子を使って瞬く間に海賊船に乗り込んだ。
援護射撃が止むと同時に現れた海賊は、アサルトライフルを構えるより先に撃ち殺された。
次から次へと撃ち殺し、僅か一分でヒートは海賊を皆殺しにして船を乗っ取った。

血のついたM2を回転させ、ヒートは隣にいる船に銃口を向けた。
恐怖に顔をひきつらせた海賊が、両手を上げて降伏の意志を示す。

ノパ听)「だーめ、だ」

無慈悲に撃ち込まれた銃弾は人を肉片に変え、船を穴だらけにした。
動く者が無くなった辺りで、その船が爆発した。

ノパ听)「よし……
     フックを外せ!」

船と船を結び付けていたフックが外され、ヒートは操舵室に入った。
漁船を改造した小さな海賊船を一気に加速させ、自動操舵に切り替えた。
速度を上げた船は客船を追い越し、その先にある海賊船を視界に捉えた。

ノパ听)「これでよし、っと」



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:01:43.71 ID:Wd/NGIk10

自動操舵をそのままに、船の針路だけを微妙に変更した。
目指すは、最後の海賊船。
甲板に移動して、ヒートは風を肌で感じ、気持ちよさそうに目を細めながらM2を撃ちまくった。
銃弾と共に船は猛烈な速度で海賊船に迫り、甲板の上で驚愕の表情を浮かべる海賊まで見えて来た。

海賊は慌てた様子で舵を切るが、間に合わない。

ノパー゚)「はっはっは! 遅いぞ!」

激突。
衝撃。
そして、ヒートは跳躍した。
船の横腹に船首が突き刺さり、何人かの海賊が悲鳴を上げて海に落ちた。

一方のヒートは、激突する直前に跳躍し、新たな船に乗り移っていた。
船の上は激しく揺れ、姿勢を保つのは至難の技だった。
少なくとも、ヒートにとっては問題にすらならなかった。
残された僅かな海賊をMP5で容赦なく撃ち殺し、海に捨てた。

リーダー格らしき男は両手両足を撃ち、自由と戦意を奪った。
海で助けを求める海賊に対しては、M2の銃弾が浴びせかけられた。
血で海は濁り、匂いを嗅ぎつけて寄って来た鮫が食事を始めた。

ノパ听)「ふぅ、おーわり、っと」

他愛ない。
何と他愛ないのか、とヒートは嘆く。
相手はズブの素人、最低の海賊だった。
船の数も大きさも、何かもが素人くさい。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:04:27.16 ID:Wd/NGIk10

第一、この巨大な船に対して僅か三隻、しかもあの貧弱な装備で挑む事が愚かなのだ。
多少の憂さ晴らしは出来たが、不完全燃焼である為に不満も募った。
自慰を半ばで中断した様な物だ。

ノパ听)「……ちっ」

冷静に考えてみれば、足元で悶えているリーダーを生かしておいても利点が無い。
海に向かって蹴り飛ばし、海賊のリーダーは瞬く間に鮫の餌となった。
数分後、船に戻ったヒートの元に船長がやって来た。

(´・ω・`)「助かりました、ヒート様」

ノパ听)「仕事だし、連中は素人だったから運も良かった。
    次からは気をつけな、船長」

これで相手が高速艇等を引き連れた大船団だったら、全力で逃げるしかなかった。
実際、迎撃出来たのは運の要素が大きかった。

(´・ω・`)「あぁ、ところでヒート様。
     先程、スカルチノフ・マクスウェル様からお電話がありました」

ノパ听)「……スカルチノフが?
    用件は?」

(´・ω・`)「何でも、お仕事がどうのとか。
     折り返し電話してほしいとのことでした」



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:08:31.63 ID:Wd/NGIk10

ノパ听)「分かった。 あぁ、船長さん。
    あなたの部下は中々に優秀だが、もう少し訓練させた方がいい。
    それと、船に積む装備を豊かにするともっといい。
    RPG-7か、贅沢を言えばジャベリンとミニガンがいい」

(´・ω・`)「分かりました。 気をつけておきましょう。
     何か困った事がありましたら、こちらに連絡をください」

そう言って、船長は名詞をヒートに両手で差し出した。
受け取った紙面を見ると、そこには名前と電話番号、そして住所が記載されていた。

ノパ听)「ショボン・ジョーンズ?」

(´・ω・`)「ショボンとお呼びください。
     今回、私は貴女にあらゆる面で助けられました。
     何か恩返しがしたい」

ノパ听)「それはまた別の日に取っておいてくれよ。
    焦って使っても、意味無いだろ?」

(´・ω・`)「ははっ、そうですね」

ノパ听)「ショボン船長」

(´・ω・`)「はい?」

ノパ听)「あなたは笑顔を浮かべている方がいい。
    それでは、残り少ないがよい船旅を期待しているよ。
    あの金の豚のお守は面倒だ。 これ以上の面倒は勘弁してほしい」

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:11:15.33 ID:Wd/NGIk10

(´・ω・`)「荷物を運ぶのが私の仕事ですから。
     例え豚でも人でも、等しく確実にお届けするのです」

* * *

連絡が来たのは、一週間後の夜の事だった。
蝋で封をされた古めかしい封筒が配達された時、ギコは銃の手入れをしていた。
銃身の掃除を終え、全ての調整を終えてから、ギコは封を切った。
ずらりと長い文章が並んでおり、大文字の部分だけを抜き出すと、一つの文章が出来上がる。

リライア美術館 今晩 2230

内容を覚えてからギコは手紙を握り潰し、灰皿の上で燃やした。
燃えカスまで徹底的に潰し、証拠を全て消した。

(,,゚Д゚)「ご丁寧なことだ。
    まるでスパイ映画だ」

弾倉に弾を込め、装填する。
遊底を引いて初弾を薬室に送り込み、安全装置を掛けた。
柔らかい皮のホルスターにM84を収め、腕時計を見た。
時針は夜の八時半を指していた。

(,,゚Д゚)「晩飯を食う余裕ぐらいはあるか」

独り言を呟いて、ホルスターを肩にかける。
ジャケットを羽織って、ギコはアパートを出た。
向かったのは、一週間前に厄介になった喫茶店だった。
店内の修繕は終わり、一部の机は新品に変わっていた。

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:14:13.02 ID:Wd/NGIk10
弾痕や血痕、脳漿が付着した机は流石に使い回せないと云う事であろう。
この街の人間は日常的に強盗が起こっているせいで、一度や二度、巻き込まれた所で気にしていなさそうであった。
一度やられた店なら、前回よりも警備に気を使っているのが当然だろう。
とか考えているのかもしれない。

ギコが到着したのは閉店の十分前、午後八時五十分。
客はほとんどおらず、店員は閉店を待つだけとなっていた。
そこに現れる客が歓迎されるかどうかと云えば。
答えは、来店を告げるベルが店内に響いた時のウェイトレスの不機嫌そうな顔を見れば分かる。

ミセ*゚ー゚)リ「あぁ、いらっしゃ…… あら、この前のお客さん!」

一瞬で表情は変わり、作り物ではない笑顔が浮かんだ。

(,,゚Д゚)「今、大丈夫か?」

あれから何度か外食をしたが、どの店も彼の好みでは無かった。
と云うのも、彼の趣味は変わっていた。
静かで、干渉は少なく、気取らず、美味く、そして安くて速い。
この店の隣にもレストランがあるが、そこは喧騒で満ちていた。

四ブロック進んだ場所にある評判の店は、妙に気取った雰囲気が癪に障った。
テレビで紹介されていた店は若者が多く集い、ギコは明らかに場違いだった。
更に、数人の血気盛んな若者が彼に因縁を付け、乱闘に発展した。
一方的に殴られた若者達は一ヵ月の入院を余儀なくされ、無傷のギコはその店に二度と行く事は無かった。

この様な事からギコは結局、この店に落ち着く事に決めたのだ。
自炊する事も可能だったが、手間を惜しんだ。
その間彼がしたのは、体がなまらないように鍛えることだった。
朝、昼、晩に腕立て伏せを二百回。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:17:10.91 ID:Wd/NGIk10
手頃な射撃場を見つけ、そこで射撃訓練を行った。
銃の調子は良好で、彼が初めて使った時から性能は衰えていない。
部品は一つ一つが交換され、調整され、改造されていた。
照星と照門にはスーパーミノルヴァ加工が施され、グリップは彼の手に合わせた特注品だ。

連射にも耐えられる銃身、ナイフとの戦闘を想定し、トリガーガードはより堅牢な材料に変えられている。
そのM84が脇に提げられている事を、笑顔を振りまくウェイトレスは知らない。

ミセ*゚ー゚)リ「勿論大丈夫ですよ。
      お客さんになら、幾らでもサービスしてもイイって、店長が言ってました」

(,,゚Д゚)「そうか。
   俺は何時ぐらいまでここにいてもいい?」

ミセ*゚ー゚)リ「何時でも。 もしよろしければ、閉店後、私と一緒にどこかに行きません?」

(,,゚Д゚)「悪いけど、先約があるんだ。 また別の日に期待しているよ」

ミセ*゚ー゚)リ「そうですか、残念」

言いつつ、ウェイトレスはギコを席に案内した。
驚いた事にその席は、彼が最初に座った席と同じ場所だった。

(,,゚Д゚)「覚えていたのか」

ミセ*゚ー゚)リ「そりゃあもう。 あんなに熱心に求められたの……初めてですから」

恥ずかしそうに頬を赤らめるが、ギコは冷静に言った。

(,,゚Д゚)「あの時は、コーヒーを飲みたかっただけだ」

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:20:25.70 ID:Wd/NGIk10
ミセ*゚ー゚)リ「ちぇっ」

ギコが席に着くと、ウェイトレスは注文を取らずに厨房に向かった。
それから直ぐにギコの元に戻り、彼の向かいに座った。

(,,゚Д゚)「仕事はいいのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「見ての通り、暇ですから」

(,,゚Д゚)「そうじゃない。 他の客がいるだろ」

ミセ*゚ー゚)リ「誰も気にしないですよ」

(,,゚Д゚)「店長もいるだろ」

ミセ*゚ー゚)リ「向こうの席で新聞読んでますけど?」

(,,゚Д゚)「……なんて店だ」

ミセ*゚ー゚)リ「んふふ、こう云う店なんですよ、お客さん」

(,,゚Д゚)「よく平気だな」

ミセ*゚ー゚)リ「そりゃあ、ここの売りは安くて美味い料理と、可愛いウェイトレスですから」

(,,゚Д゚)「なるほど、道理で今の時間が空いてる訳だ。
   ウェイトレスが不在で料理しかないんだからな」

ミセ*^ー^)リ「はははっ、お客さん、結構きついですね」

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:23:19.95 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「悪かったな」

ミセ*゚ー゚)リ「何時までもお客さん≠カゃ呼びにくいんで、名前、教えてくれませんか?」

(,,゚Д゚)「俺か? 別にお客さんのままで構わないんだが」

ミセ*゚ー゚)リ「いいじゃないですか。 これから常連になるんですから」

(,,゚Д゚)「なるとは言っていない」

料理人が自ら料理を持って来て、二人の前に置いた。
湯気の上がるシチューとパンだ。
何故か二人分ある。

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう、ティム」

ウェイトレスが礼を言って、パンを千切ってシチューに浸し、口に入れた。
美味そうに咀嚼する姿を見て、ギコも同じ様にパンを食べた。

(,,゚Д゚)「美味いな」

何種類ものソースが合わさり、そこにピリッとした刺激がある。
ゴロリとした肉を一口で食べる。
柔らかく煮込まれ、味が染み込んだ牛肉だ。
香辛料がふんだんに使われ、具は大きく切られ、食べ応えもある。

ミセ*゚ー゚)リ「ウチの自慢のシェフですよ」

(,,゚Д゚)「美味いと礼を言っておいてくれ」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:26:46.33 ID:Wd/NGIk10
ミセ*゚ー゚)リ「別にいいですけど、それより、名前を教えてくださいよ」

(,,゚Д゚)「面白くないぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「期待していませんよ」

(,,゚Д゚)「……むぅ。 ギコと呼んでくれればいい」

ミセ*゚ー゚)リ「ギコさん、ね。
私はミセリナ。 ミセリって呼んでください」

(,,゚Д゚)「よろしく、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「わぉ。 ギコさんにそう呼ばれると、結構キュンとくる」

(,,゚Д゚)「大人をからかうんじゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「やだなぁ、からかってませんよ。
ギコさん、おいくつなんですか?」

(,,゚Д゚)「当ててみろ。 当てられたら、この料理は俺が驕る。
外したら、奢ってもらう」

ミセ*゚ー゚)リ「私、結構勘がいいんですよ。
そうですねぇ…… 二十五歳!」

(;,,゚Д゚) 。゚ ・ ゚

ギコは咽た。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:30:32.46 ID:Wd/NGIk10
(;,,゚Д゚)「ぐっ、ごほっ!?
に、二十五?! おいおい、ミセリ、冗談はよしてくれ」

水を飲んで一息つき、ギコはゆっくりと言った。

(,,゚Д゚)「悪いが、俺は三十二だ」

ミセ*゚ー゚)リ「えぇっ?! そんなに老けてるんですか?」

(,,゚Д゚)「髪を見てみろ。 白髪だらけだろ。
勘がいいと云うのは人前で喋らない方がいいぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「あー、言われてみれば確かに。
でも、髪の事さえなければ本当に若いですよ」

(,,゚Д゚)「そりゃあどうも」

ミセ*゚ー゚)リ「私は何歳に見えます?」

(,,゚Д゚)「十六歳だろ」

ミセ*゚д゚)リ「な、何で分かったんですか?!」

(,,゚Д゚)「勘がいいんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「凄いですね」

(,,゚Д゚)「それより、もう閉店じゃないのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、そう云えばそうだ」

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:33:07.77 ID:Wd/NGIk10


店のシャッターが閉められ、客は今やギコだけとなっていた。
閉店時刻から五分が過ぎていた。

(,,゚Д゚)「食べ終わってから出て行ってもいいのか?
それとも、今すぐか?」

ミセ*゚ー゚)リ「食べ終わってからでいいですよ」

(,,゚Д゚)「そうか、悪いな」

ミセ*゚ー゚)リ「一人で食べるより、一緒にいる人がいた方がいいですから」

(,,゚Д゚)「何の話だ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ほら、私、今、食事中。
ギコさんも食事中」

(,,゚Д゚)「あぁ、そう云う事か。
だがお前は給料をもらっているんだろ、その分は働かないと」

ミセ*゚ー゚)リ「平気ですよ。 だって今、私食事中ですから。
食事中は誰にも邪魔されちゃいけないってルールがあるんですよ、この店には」

(,,゚Д゚)「ははっ、どうだか」

ミセ*゚ー゚)リ「本当ですよ」



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:36:19.87 ID:Wd/NGIk10
食事時、ギコは常に思う。
ひょっとしたら、これがゆっくりと味わう最後の食事になるのかもしれないと。
最後の食事が何であれ、終わる時は理不尽に終わりが来る。
避けては通れない。

そう云う道を選んだのだから。
不意に黙り込んだギコを見て、ミセリは不安そうな目をした。

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたんですか?」

(,,゚Д゚)「……気にしないでくれ。 昔の事を思い出してたんだ。
辛い時は過去に逃げたくなる生き物なんだよ、人間は」

ミセ*゚ー゚)リ「ふーん、私にはよく分からないです」

(,,゚Д゚)「その内分かる日が来るかもしれないな」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、逃げても何も変わらないですよ。
それなら前に進んだ方がいいですよ、絶対に」

(,,゚Д゚)「分かってるよ。 分かっていても、時々振り返りたくなるんだ。
こんな話をしてもつまらないだろう?」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな事ありませんよ。 新鮮ですから」

(,,゚Д゚)「そうか。 そんな事を言われたのは久しぶりだ」

ミセ*゚ー゚)リ「久しぶりってことは、前にも言われたんですか?」

(,,゚Д゚)「あぁ。 ……昔に、一度だけな」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:39:14.44 ID:Wd/NGIk10
ミセ*゚ー゚)リ「その話は聞かせてもらえないんですよね?」

(,,゚Д゚)「分かってるじゃないか」

たっぷりと時間を掛けて食べ終えた食器を、二人で厨房に持って行き、各自で洗った。
店長や料理人が止めたが、どうしてもとギコが無理を通し、皿を洗った。
こうしてギコは、この店の人間に気に入られる事となる。
彼としては単純に迷惑を掛けたからその償いをしたかっただけなのだが、悪い気はしなかった。

裏口から店外に出て、ギコは腕を組んでじっと待っていた。
夏の夜。
まだ少し涼しさが残っており、良い夜だった。
十分程そうしていると、裏口から次々に着替えた店員が出て来た。

ギコの姿を見て驚いたのは、ミセリだった。

ミセ*゚ー゚)リ「え、どうしたんですか?」

(,,゚Д゚)「まだ時間があるし、借りがあるからな。
家まで送ろう。 嫌なら別に構わないが」

ミセ*゚ー゚)リ「い、いえいえ!
お願いします!」

同僚が冷やかす中、ミセリが小走りで近付いて来る。

(,,゚Д゚)「俺が言うのも何だけどな、知らない人には付いて行くなよ。
例え三人だろうが何人だろうが、それは守った方がいい」

ミセ*゚ー゚)リ「わっかりましたー」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:39:23.41 ID:pixm9MR50
しえ

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:42:11.19 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「どうだかな」

苦笑しながら、ギコはミセリを先に歩かせた。
彼女の足取りは軽く、動きも機敏だ。
道中、ギコは問いかけた。

(,,゚Д゚)「運動でもしているのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「陸上部ですよ」

(,,゚Д゚)「そうか。中距離走だろ」

ミセ;゚д゚)リ「ど、どうしてそれがっ!!」

(,,゚Д゚)「勘がいいんだ」

どうして今日は、こんなに饒舌なのだろうか。
ギコは自問した。
答えは直ぐに出た。
気分が高揚しているからだ。

もう一度、終わったと思っていた事を再開できる。
それが何よりも嬉しいのだ。
夢の続きを見る様な心地で、ギコは夜空を見上げた。
騒がしいまでの星の海に、大きな月が浮かんでいた。

――傭兵が楽しいなどと抜かす人間は、世間では屑か戦争狂いと呼ばれる。
しかしギコに言わせれば、屑でもなければ戦争狂いでもない。
理解しようともしない連中に何が言えるのだろうか。
ラブアンドピースの考えで戦争が無くなると本気で思っている様な人間――頭がお花畑な哀れな状態――に、何が分かる。

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:45:28.50 ID:qwVx/qU30
http://m.youtube.com/?dc=organic&source=mog&hl=ja#/watch?v=6LIVQDKOGzY

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:45:46.50 ID:Wd/NGIk10

一度も戦争を体験したことも無ければ、経験したこともない。
見た事だけ。
それも、テレビで他人事のように報じられる映像と情報だけだ。
兵士は侵略者で悪人、住民は無害で善人。

そう云った考えが広まっている社会には、当然、カビの様に綺麗事が広まっている。
軍人時代、二人の仲間が戦場で殺された時の事を思い出す。
相手は子供だった。
手には銃が握られていた。

死んだ仲間には、家族がいた。
子供もいた。
仲間を殺した子供は即座に射殺された。
ニッキと云う名のジャーナリスト――後にギコが殺す事になった――はギコ達の話も聞かず、それを軍人による誤射だと報道した。

翌日、駐屯基地に平和団体が押し寄せ、プラカードを持って石と罵倒文句を投げて来た。
真実など、最初から聞くつもりはないのだ。
それは彼等の知る正義にも、綺麗事にも当てはまらない。
だから信じないのだ。

綺麗事が溢れ返った社会よりも、ギコには暴力と喧騒の溢れる社会の方が性に合っている。
それこそ、戦場が一番だ。
考え事をするにも答えを出すにも、あれほど自分に正直になれる場所は無い。
嘘偽りなく出した答えこそが、自分にとって最善の道なのである。

ギコは知る為に再びサマリーに戻る。
何かを得る為に、取り戻す為に。

ミセ*゚ー゚)リ「ギコさん」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:48:50.32 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「どうした?」

ミセ*゚ー゚)リ「また、あのお店に来てくれますか?」

(,,゚Д゚)「気が向いたらな」

ミセ*゚ー゚)リ「よかった」

(,,゚Д゚)「……どうして」

ミセ*゚ー゚)リ「はい?」

(,,゚Д゚)「どうして、俺にそこまで懐いてるんだ?
お前は誰かれ構わずついて行く様な女には見えないんだが」

ミセ*゚ー゚)リ「あぁ、それですか」

夜空を見上げ、ミセリは小さく溜息を吐き出した。

ミセ*゚ー゚)リ「私、母子家庭なんです。
だから、ギコさんみたいな人に頼っちゃうんです」

(,,゚Д゚)「……」

ミセ*゚−゚)リ「あの、迷惑ですか?」

(,,゚Д゚)「いや、構わない。
ただ、どう云う反応をしていいのか分からなくてな」

ミセ*゚ー゚)リ「そのままでいいと思いますよ」

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:51:26.72 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「そうか。
まぁ、危ない事には近付くなよ」

ぐしぐしと、ギコは乱暴にミセリの頭を撫でた。

ミセ*゚д゚)リ「ふぉ、ふおお!!」

こぢんまりとした一軒家の前に到着すると、ミセリは残念そうに言う。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、また今度」

(,,゚Д゚)「あぁ。 今度会った時は、パフェでも驕るよ」

ミセ*゚ー゚)リ「約束ですよ」

彼女が家の中に入るのを見届けて、ギコは時計を見た。
夜の十時。
頭の中にある地図を展開する。
リライア美術館の位置と、現在位置を確かめる。

丁度いい頃合いだ。
人通りの少ない道を通り、ギコは一度も誰かとすれ違うことなくリライア美術館の裏口に到着した。
わざわざ正面から訪問する必要はないし、目立つ行動は避けるべきだ。
裏口の扉は施錠されておらず、ギコは慎重に美術館に足を踏み入れた。

いつでも懐のM84を抜き放てるように身構え、暗い廊下を進む。
跫音が幾重にも重なり、不気味に木霊する。
扉が幾つもあるが、ギコはどの扉にも興味を示さない。
わざわざ美術館を指定してきているのだから、理由がある筈だ。

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:54:25.55 ID:Wd/NGIk10

スタッフ専用の部屋ではなく、美術品が展示されているフロアに意味がある。
最も高価な品が置かれている部屋の位置は分からないが、探していればその内見つかるだろう。
廊下の奥に到着すると、そこにはまた扉があった。
この扉の向こうが、一般の目で見る美術館内となる。

鍵は当然掛かっていない。
ここまで来て何か罠があるとも思えず、ギコは扉を開けた。
薄暗い館内にはギコを見下ろす幾つもの巨大な影があった。
それらは全て巨大な彫刻が作り出した影である事は、考えるまでもない。

一階には世界各国から取り寄せた彫刻が展示されている事が、事前の調べで分かっている。
出てすぐ横の位置に階段があり、ギコは上の階に向かった。
二階には絵画や装飾品が展示され、おり、その中で目的の部屋――取り分け高級品が展示されている――を探し、直ぐに発見した。
それは、大粒の宝石がちりばめられた装飾品が展示されている部屋だった。

二階の中央に位置しており、三方が分厚い壁に覆われている理想的な環境下にあった。
案の定、そこには二つの人影があった。
ギコが近付くにつれ、影の輪郭がハッキリとしてくる。
見えて来たのは、懐かしい面々だった。

ミ,,゚Д゚彡「……おっ、ギコさん!」

(,,゚Д゚)「やっぱりフサがいたか」

大柄の男、フサ・トロント。
赤毛の髪は短く刈りこまれ、日の下でなら彼の灰色の瞳も見れるだろう。
ギコの記憶では、フサは戦場でいつも機関銃を持っていたイメージがある。
ヘリの操縦は神業級だったが、それを披露する機会があまりない事に、不満を漏らしていた。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 21:57:09.96 ID:Wd/NGIk10

そしてフサは、レッドリング・マーセル傭兵派遣会社の中でも希少な存在でもあった。
ギコ同様、サマリーで戦い、生還した人間だ。
五発の銃弾を受けても尚機関銃を撃ち続けたと云う逸話を残す、正真正銘の猛者だ。
猛者とは言っても性格は温厚で、一度戦場から離れると彼は何処にでもいる気の良い男になる。

(,,゚Д゚)「ってことは、そっちはシャキンか」

(`・ω・´)「流石、隊長だ」

(,,゚Д゚)「フサがいるならお前もいるだろう」

クルーカットの茶髪と海の様な色の瞳を持つ青年、シャキン・フェザーライト、二十五歳。
恐らく現在レッドリング・マーセルに所属している中で、サマリーを経験した、最も若い人間である。
当時の彼が所属していた部隊を率いていたのがギコで、その時にフサもいた。
その時のサマリーは国連軍が介入して間もない頃で、非常に情勢が不安定だった。

部隊の中で彼が主に担当していたのは狙撃による援護で、その腕は一級品だ。
少し精神的に未熟な部分もあったが、それは克服されていると思いたい。
彼は優しすぎるのだ。
照れた時に頭を掻く仕草は、あの頃から変わっていない。

(,,゚Д゚)「この三人が揃うなんて、久しぶりだな」

(`・ω・´)「えぇ、隊長。 ガレンツィで一緒に空を飛んだ時以来ですね」

(,,゚Д゚)「飛んだんじゃねぇ、格好をつけて落ちただけだ。
ありゃあ確か、シャキン坊やが足を挫いた時だったな」

からかう様にギコがそう言うと、シャキンは困った様な笑顔を浮かべる。

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:00:14.40 ID:Wd/NGIk10
(;`・ω・´)「坊やは止めてくださいよ、隊長」

(,,゚Д゚)「一番若いんだ、諦めろ。
フサ、今日来る人間は分かっているか?」

シャキンの横にいるフサに、ギコは問いかけた。
合計で警護は五人だと聞いている為、後二人来るはずだった。

(`・ω・´)「さぁ、だけどサマリーに行った人間が来るのだけは間違いなさそうです。
それより隊長は、どうしてここに?」

(,,゚Д゚)「依頼人から直々にお呼びがかかってね」

ミ,,゚Д゚彡「ほぅ、依頼人は誰なんです?」

(,,゚Д゚)「アニジャ・バーティゴ副大統領の秘書だ」

その名を聞いた時、フサは眉を顰めた。
シャキンも意外そうな反応を示す。
腕を組んで、フサは慎重に言葉を選んだ。

ミ,,゚Д゚彡「……そいつはキナ臭いですね。
俺は、警護の仕事って聞いているんですが、副大統領――政府――絡みだなんて聞いていません」

(,,゚Д゚)「向こうも最初は黙っていたが、後で分かった事だ。
女と男、合計五人の警護だと聞いている。
サマリーに行く連中だ、きっと頭のいかれた団体か何かだろう」

ミ,,゚Д゚彡「副大統領が警護を頼むってことは、重要人物でしょう。
自殺願望があるとしか思えませんが」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:03:06.08 ID:Wd/NGIk10

フサの言う事はもっともだ。
副大統領が依頼する程の人間が、どうしてわざわざサマリーを目指すのか。
極秘の訪問にしては人数が多いし、ギコ達に頼まずとも自前の兵隊がいるだろうに。
そちらの方が安上がりだし、何より安心できる。

(,,゚Д゚)「シャキンはどう思う?」

(`・ω・´)「最近、あの国に行く団体は減っています。
それに、人数が五人なら団体とは言えませんね。
精々同好会、でしょう」

一呼吸入れ、シャキンは言う。

(`・ω・´)「隊長、幾ら俺でもこれはおかしいと思います。
でも、雇われた以上は仕事ですからね。
細かい詮索は寿命を縮めると、よく教えてくれたじゃないですか」

金を貰って依頼を遂行する。
それが傭兵だ。
依頼内容の細かな部分に口出しをして消えた人間を、ギコは知っている。

ノパ听)「……へぇ、シャキンも来てるのか」

突如聞こえた声に、三人は一斉に視線を声のした方向に向ける。
暗闇から現れたのは、亜麻色の髪と碧眼を持つ女性。
ヒート・O・ワイルド。

(`・ω・´)「ヒートさん!」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:05:54.30 ID:Wd/NGIk10

真っ先に反応を示したのはシャキンだった。
年齢が近い事もあり、彼はヒートを姉の様に慕っているのだ。
最も、二人が特別な間柄なのではなく、部隊にいる殆どの人間は誰であれ、仲間には敬意を払っている。
それに値しない人間は、最初の戦闘で大体死ぬ事になる。

ノパ听)「隊長、お久しぶりです」

(,,゚Д゚)「本当に久しぶりだな、ヒート。
大分、日に焼けたな」

ノパ听)「えぇ、世界中の海を肌で経験するとこうなるらしいです。
……サマリー組でも作るつもりなんでしょうか?」

そう。
ヒートもまた、サマリーからの生還組だ。
彼女は二度、サマリーで起きた市街戦を経験している。
観察力の鋭い彼女は、一目でこの場の全員が持つ共通点に気付いた。

(,,゚Д゚)「これだけいれば、戦記だって書けそうだ。
ヒートは連絡で、どこまで聞いたんだ?」

ノパ听)「私はスカルチノフさんから、サマリーで男女五人の警護、としか聞いていません」

(,,゚Д゚)「やっぱり、随分とアバウトだな」

ノパ听)「でもまさか、隊長がいるとは思いませんでしたよ」

(,,゚Д゚)「俺は五人で五人を護ると聞いたんだが、となると、後一人足りないな」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:07:59.31 ID:Wd/NGIk10
ギコの言葉にフサとシャキンは顔を見合わせ、分からないと云う風に肩を竦めた。
溜息と共に、フサが言う。

ミ,,゚Д゚彡「恐らく、残る一人もサマリーの経験者でしょう。
ミルナ辺りでは?」

フサの推測を、ヒートが否定する。

ノパ听)「それはありません。
ミルナさんは今、ライファンに行っています。
ジョルジュでは?」

今度はシャキンが否定する。

(`・ω・´)「ヒートさん、ジョルジュさんは地雷を踏んで入院中です。
恐らく現場復帰は無理ですよ。
この前、若い看護婦の胸を揉んでいる写真が送られてきました」

(,,゚Д゚)「……とすると、だ」

ギコは腕を組んで考え、一人の女性の名を口にする。

(,,゚Д゚)「ツンじゃないのか?」

ξ゚听)ξ「正解です、隊長」

返事をしたのは、五人目の警護だった。
声は凛としていて淀みなく、まるで歌でも歌うかのように軽やかだった。
暗闇から悠然と現れたその女性の美しさは、暗闇であろうと霞む事は無い。
腰まである金色の髪は優雅に踊り、月よりも尚明るい金色の瞳が楽しそうにギコを見据えた。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:10:17.69 ID:Wd/NGIk10
彼女こそ、ギコが予想した人物に相違なかった。
雌獅子≠フ渾名を持つ、ツィーナ・D・テルソン、その人である。

ξ゚听)ξ「二週間ぶりですね」

(,,゚Д゚)「あんまり離れていないな。
どうだ、何か変わった事はあったか?」

ξ゚听)ξ「いいえ、いつも通りです」

全員が揃い、昔の話をしようとしたところ、ようやく、依頼人が姿を見せた。
オトジャ・ホークネストだ。

(´<_` )「皆さん、揃いましたね?」

誰もが口を閉ざし、オトジャを見る。

(´<_` )「それでは、お仕事の話をさせていただきます。
ご想像の通り、この件は私の主に関わるお仕事です。
ですので、決して口外されぬように」

(,,゚Д゚)「知っている仕事の内容について、こっちには大分開きがある。
まずはその開きを埋めてから、話を進めて欲しい」

(´<_` )「分かりました、ギコ様。
今回の依頼は五名の男女を警護していただく事です。
二泊三日を予定しておりますが、場合によっては変動する可能性もあります。
無傷の方が好ましいですが、サマリーから生きて帰る事が出来れば、それで結構です。

以上が仕事の内容となりますが、質問は?」

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:13:04.44 ID:Wd/NGIk10

初めに挙手したのは、ヒートだった。

ノパ听)「武器は?」

(´<_` )「そちらのご要望に応じて用意します」

手も挙げず、ツンが続けて質問する。

ξ゚听)ξ「詳しい目的地及び宿泊先、移動手段は?」

(´<_` )「移動手段はこちらで用意した専用機を使ってマースティ空港へ、そこから車で首都マーディッシュへ行きます。
宿泊先はマーディッシュのホテル・リアドランデ、部屋の位置は五階、最上階です」

ξ゚听)ξ「よりにもよって、マーディッシュか」

深い溜息を吐き、ツンは頭を押さえた。
サマリーの首都、マーディッシュ。
内陸部に位置し、東に数十キロ行って山を越えた所に海がある。
瓦礫と砂塵だらけの、世界で最も治安の悪い街である。

首都の治安が悪いのには理由がある。
外国人観光客や、その他外国人がサマリーを訪れると、殆どの場合マーディッシュに宿泊する。
他の地域にはホテルや民宿が無く、水も無い。
地下水の豊富なマーディッシュに人が集まるのは自然な流れで、人が集まれば当然、犯罪も横行する。

元々犯罪を取り締まる法律が無く、だからこそ、人の多い場所では犯罪が多発するのだ。
五人が経験したサマリーでの市街戦は、何を隠そうこのマーディッシュで勃発していた。

(´<_` )「何か問題でも?」

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:15:44.81 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「あり過ぎて何処から言えばいいんだろうな、この場合」

(´<_` )「お辞めになりますか?」

普通なら断る。
まともな神経を持っていて、マーディッシュについて少しでも知識があれば、まず行かない。
大金を積まれようが、結局は命があって初めて金は意味を成す。
だが、ギコは違った。

まともな神経もあるし、知識もある。
戦闘経験もあれば、警護の経験もあった。
それらを踏まえても尚、ギコは断る気にはなれなかった。
これだけ危険な場所に赴けば、新しい自分の可能性を見つけられるかもしれない。

その希望の方が、金よりもギコには重要だった。
鼻で笑って、ギコが最初に喋る。

(,,゚Д゚)「いいや、辞めないさ」

続いてフサが。

ミ,,゚Д゚彡「俺も、仕事だからな」

遅れを取るまいとシャキンが。

(`・ω・´)「僕も同感です」

そして、ヒートとツンがほぼ同時に。

ξ゚听)ξ「私も」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:17:20.77 ID:Wd/NGIk10

ノパ听)「あたしもだ」

五人が一人も断ることなくこの依頼を受けた事に、オトジャは満足そうに頷いた。
そして深く頭を下げ、オトジャは礼を述べた。

(´<_` )「ありがとうございます」


* * *


翌日、放課後の時間を利用して五人の生徒は間近に迫って来た計画について話し合っていた。
最終調整とも言えるこの話し合いで、イモジャ・バーティゴは嬉々として昨夜の事を伝えた。
即ち、父親からの許可と援助が受けられたと云う物である。

l从・∀・ノ!リ人「で、五人のボディガードが同行する事が条件だそうで」

( ´∀`)「五人もいるのかモナ?」

イモジャの言葉に最初の疑問を投げかけたのは、モナーだった。

l从・∀・ノ!リ人「うむ。 やはり、マーディッシュは危険な地域で、私達だけでは危ないそうじゃからの」

( ´∀`)「そっか。 でもそれだけいれば安心して皆を助けられるモナ。
どんな人が来るのか分かるモナか?」

l从・∀・ノ!リ人「少ししか聞いておらぬが、何でも、凄腕の傭兵さん達だとか」

(;´∀`)「げぇっ、傭兵って……」

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:19:05.78 ID:Wd/NGIk10
彼等は戦争に行くのではなく、平和活動の一環の為にサマリーに向かうのだ。
だのにどうして、警備会社の人間ではなく傭兵を選んだのだろうか。
人殺しの人間と共に平和活動をするのは、どう考えてもおかしい。
出来る事ならモナーは傭兵以外の人間を要求したいところだったが、イモジャの父親の考えを想像した。

彼にとっても、そこがせめてもの妥協点だったのだろう。
愛娘を危険な地域に送り出す親心。
確かに、傭兵でもいなければ安心できないかもしれない。

(*゚ー゚)「……私、反対です」

モナーの気持ちを打ち砕いたのは、シィの言葉だった。

(*゚ー゚)「咎人の方がいては、私達の活動が意味を成しません。
お金をもらって戦争をして、人を殺す方なんて、私、認められません」

( ´∀`)「でもな、シィ。
そうでもないと、イモジャのお父さんが安心できないんだモナよ。
我慢しとけモナ」

(*゚ー゚)「そんなこと、神がお許しになりません」

( ´∀`)「シィがその人達を改心させればいいんじゃないかモナ?」

モナーの提案に、シィは顔を輝かせ、頷いた。

(*゚ー゚)「そうですね! ありがとう、モナー」

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:19:47.48 ID:rF+5eS+E0
支援

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:21:08.64 ID:Wd/NGIk10

彼女が時折見せる意地のような物に振り回されてきたモナーにとって、このぐらいは慣れたものだ。
何処かに行くにしても、何をするにしても彼女はその溢れんばかりの信仰心を通じて、物事を見る。
そのせいで生徒間のトラブルが絶えず、一年生の時、孤立していた彼女に話しかけたのがモナーだった。
それから彼女はモナーと友人になり、彼女の数少ない友人であったレモナもモナーと親交を持つ事になった。

変わった者同士が集まり、自然な流れでイモジャ、そしてクーの五人でつるむ事が増えた。
学年が変わってもそれは変わらず、こうして三年生になっても五人は友人のままだった。

|゚ノ ^∀^)「それで、私達は何で行くの?」

レモナの質問に、イモジャが得意げに答える。

l从・∀・ノ!リ人「お父様が飛行機を用意して下さる事になったのじゃ。
お昼御飯も出るのじゃ、すっげぇのが」

( ´∀`)「すげぇモナ!」

|゚ノ ^∀^)「イモジャちゃんはすっごいねぇ」

l从・∀・ノ!リ人「まぁ、私が凄いんじゃなくてお父様が凄いだけなのじゃ。
出発は三週間後じゃ」

|゚ノ ^∀^)「結構開くねぇ」

l从・∀・ノ!リ人「どうも、お父様達の準備に時間がかかるそうなのじゃ。
その三週間の内に、私たちの準備を仕上げるのじゃ」

* * *


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:23:12.81 ID:Wd/NGIk10


生徒五人が話し合っているのと同じ頃、五人の傭兵もレノルタホテルの一室で話しあっていた。


(,,゚Д゚)「俺が注文した装備は一週間後に到着するそうだ。
二週間でその装備に慣れてもらう。
XM8を使った事のある奴はいるか?」

ソファに浅く座っていたギコの質問にツンとフサは首を横に振り、ヒートとシャキンはいいえ≠ニ答えた。
その反応に、ギコは傍らに置いていたボストンバックを膝の上に乗せた。

(,,゚Д゚)「本当なら、ルメルニア製のカラシニコフを用意したいところなんだが、ちょっと考えがあって却下した。
護衛対象が何であれ、副大統領の知り合いを護衛する訳だから、銃に嫌悪感を持っているだろう。
それに、あれを持って歩き回れば、ロクな事にならない。
そこで……」

ジッパーを外し、バックの中から灰色と黒のカラーリングが施された一挺の銃を取り出した。

(,,゚Д゚)「これを使ってもらう」

一目見て分かる様に、その銃には金属の部品が殆ど見当たらなかった。
全体を光沢を消した強化プラスチックで覆い、丸みを帯びたフォルムと、未来的なシルエット。
別に取り出した弾倉は半透明で、こちらはポリマー製だった。
これが、ギコの注文した武器。

H&K社のアサルトライフル、XM8だ。
ヒートはその銃を興味深そうに見つめ、感想を漏らした。

ノパ听)「G36に似てますね」

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:24:56.29 ID:GrRP3sHA0
このくどさ、歯車じゃねぇか

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:25:28.70 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「そうだ。 これはあれの系統だ。
ただし、G36よりも性能はずっといい。
ヒート、これを持ってみろ」

差し出された銃床を掴み、手に持った瞬間、ヒートが驚きに目を見張った。

ノパ听)「軽い……
これは、本物ですか?」

(,,゚Д゚)「本物だ。 反動も少ないし、片手でフルオートも出来る。
汚れにも強い上に、もう一つ、俺がそれを選んだ理由がある。
組み替えるだけで、そいつはカービンモデルにも狙撃銃にも、支援火器にもなる。
弾が同じだから、それ一種類で俺達の武器は揃うんだ。

あぁ、勿論、弾はホローポイントだ。
アーリジュのレンジャーと同じ失敗はしない」

ノパ听)「しかし、どうしてこれを仕入れるのに時間がかかるんですか?」

銃をツンに渡して、ヒートが尋ねる。

(,,゚Д゚)「この銃はまだそんなに出回っていないんだ。
それに、組み替えるのに必要な部品も揃えなきゃいけない。
弾やベストも一緒に頼んである」

ノパ听)「拳銃は何を使うんです?」

(,,゚Д゚)「M84だ。 確か、ここにいる皆はそれを使ってるだろ」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:27:38.47 ID:Wd/NGIk10

ノパ听)「自前の銃は?」

(,,゚Д゚)「シャキン、あとはツン。
一応、狙撃銃を持ってきてくれ」

(`・ω・´)「了解です、隊長。
自分はM14を持って行きます」

ξ゚听)ξ「分かりました。
じゃあ、あたしはドラグノフを」

(,,゚Д゚)「よし。
……この五人が一度に揃うなんて、初めての事だな」

ミ,,゚Д゚彡「そうですね。
サマリーのスペシャリスト集団、ゴールドメンバーですよ」

XM8を持っていたフサが、真面目な口調でそう言った。
皆、口には出さなかったがその意見に同意した。
ここにいる全員が、他の仲間を信頼し、評価している。
何も言わなくとも意志疎通が図れる彼らなら、五人の警護を無事に果たせるだろう。

(,,゚Д゚)「一先ず、武器が到着するまで各自好きに過ごしてくれ。
ただし、準備は怠るなよ。
っと、ヒート。
荷物の手配は大丈夫だったか?」

ノパ听)「えぇ、二つ返事で受けてくれました。
当日には確実に空港にあるそうです」

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:29:31.26 ID:Wd/NGIk10

何やら警護対象の五人は、サマリーに巨大なコンテナを持って行く計画を立てているそうだ。
それを運ぶ為のトラックや、護衛の為の武装ハンヴィーを予め向こうに届ける必要があった。
飛行機では一度に運びきれないし、空港で止められる可能性が高い。
驚いた事に、ヒートはそれらを邪魔されることなく届けてくれる人物を知っていた。

ノパー゚)「ショボンは約束は守る男ですよ」

* * *

極寒の地には、度数の高い酒がある。
飲めば体の底から温まり、気付けや消毒にも用いられる。
燃える様に熱いウォッカをグラスから一口飲んで、スミノフ・ドクオ・ノーマッドは満足そうに唸った。

('A`)「……くっ」

彼は自宅にいた。
妻がいたが子供はおらず、妻とは十年前に死別していた。
彼の妻は美しく、気量も良かった。
孤児院を運営し、親を失った子供達にとって彼女は母親だった。

妻が病死してから孤児院は経営が難しくなり、ドクオは身の回りの物を売って、どうにか運営を続けていた。
功績が認められ、大将から譲り受けた高級車を金に変えたが、それでも金は足りない。
妻が残した孤児院と子供達を見捨てる事は、今の彼にはどうしても出来なかった。
アルコールと思い出に依存して、もう何年経っただろうか。

部屋の明かりは全て落とされ、彼の姿を照らすのは暖炉にくべられた火だけだ。
パチパチと音を立てて木が燃え、炎はゆらゆらと揺れる。
深々とソファに凭れかかったまま、ドクオはもう一口ウォッカを飲んだ。
今度は唸らず、彼は低く笑った。

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:31:35.57 ID:Wd/NGIk10

('A`)「く、くくっ……」

ようやくツキが廻って来たと思ったのが、つい一週間前の事。
嘗て特殊部隊で多くの勲章を得た彼を見込んで、政府高官からある仕事が舞い込んで来た。
前金で受け取った金額は、彼の孤児院を五年は運営出来るだけの額だった。
成功した暁には更にその四倍の額を払うと言われたが、先払いに変更させた。

計画の内容を聞いた時、彼は耳を疑った。
あまりにも簡単過ぎるのだ。
人員は非正規の精鋭百名。
装備は最新式の物で統一され、必要な物は全て揃う。

警護の人間が五人いたとしても、それは問題にならない。
目的はたった一人の誘拐。
その一人を除いて全員を殺せば、何て云う事は無い。

ハハ ロ -ロ)ハ「……んぐっ……ゅっ……」

彼の股間に、若い女が顔をうずめていた。
雄々しく反り返った彼の陰茎を口に咥え、音を立てて丹念に舐めまわしている。
仕事とはいえ、女は演技とは思えないほどにその好意に熱中していた。
太くて硬い彼の陰茎は、若い女には魅力的に映るのだろう。

亀頭を舌先で刺激され、尿道を尖らせた舌を突く。
技術は二流。
愛想は三流だった。
流石に政府が派遣してきただけあって、容姿は一流だ。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:33:50.25 ID:Wd/NGIk10

来た時はスーツ姿だった女は、今や下着とワイシャツだけと云う服装だった。
鳶色の髪をしていて、気だるげに垂れた目と泣きボクロが魅力的だった。
女の顔が、彼の嗜虐心を掻きたてる。
壊してやりたいと云う暴力的な欲求に、彼は素直に従った。

('A`)「……飲め」

女の後頭部を掴み、ドクオは強引に引き寄せた。

ハハ ロ -ロ)ハ「んぶっ!?」

喉の奥にいきなり陰茎を突っ込まれた女は、目を大きく見開いた。
呼吸が停まった彼女の喉の奥に、ドクオは数カ月ぶりに性を解き放った。
射精が終わると、ドクオは女が喉を鳴らして精液を全て飲んだのを確認してから、手を離した。
苦しそうに咳き込みながら、女は非難がましい目でドクオを見上げる。

ハハ;ロ -ロ)ハ「ごっ、ごほっ……!
な、何するんですか!」


('A`)「黙れ」


これまで積み重なって来た鬱憤を、ドクオはその女に向けてぶつける事にした。
彼にこれから仕事があるのと同じように、これが女の今の仕事なのだ。
氷の様な瞳に睨まれ、女は押し黙った。

('A`)「乗れ」


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:35:16.39 ID:uqlKKJ9s0
支援

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:36:07.81 ID:Wd/NGIk10

目の前に居る女は、彼にとっては性欲処理の為の人形と同じだ。
人形との違いは、命令をすればそれに従うと云う事だろう。
従わなければ、従わせるだけだ。
例え指を折った所で、性交に支障はないのだから。

内に秘めた感情を表に出すことなく、女は黙ってドクオの上に対面して座った。
グラスを小さなテーブルの上に置いて、彼は女の小振りな乳房を乱暴に握った。
胸の上の下着を下にずらし、親指の腹と人差し指でピンク色の女の乳首を強く摘まんだ。

ハハ;ロ -ロ)ハ「っつぁっ!」

突然の痛みに、女が体を仰け反らせた。
逃がすまいと、ドクオは左手で女の腰を押さえる。
指に込められた力は強さを増し、女は快楽ではなく痛みに喘いだ。
その行為を止めさせようと、女がドクオの手首を掴む。

動かそうとしたが、全く動かなかった。
鉄骨を動かそうとしている様な、圧倒的な力の差。

ハハ;ロ -ロ)ハ「い、痛いからっ、痛いから止めてよ!」

('A`)「……」

無言で、ドクオは指を離した。
赤く充血した乳首は、ピンと立っていた。


('A`)「自分で入れろ」


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:38:09.74 ID:Wd/NGIk10
命令は絶対。
逆らえば何が起きるか分からないと云う恐怖に、女は従う他なかった。
射精しても硬さが変わらない陰茎を手で掴み、足の付け根に誘導する。
腰を沈めて、それを膣内に入れた。

既に愛液で濡れていた為、挿入はスムーズに行われた。
想像以上に太い陰茎に、彼女は一瞬呼吸が出来なかった。
果たして、動けるのだろうかと躊躇していると。

('A`)「動け」

ハハ;ロ -ロ)ハ「す、少し……まって……」

('A`)「……」

結合部に、ドクオが手を伸ばす。
先程とは比べ物にならない激痛が、彼女を襲った。
陰核を潰す勢いでつままれ、体を弓なりにして悲鳴を上げる。

ハハ;ロ -ロ)ハ「きっ、ゃあぁぁぁ?!」

逃げようとするが、体勢と腰に回された手のせいで動けなかった。

('A`)「動けと言った」

指が離れると、女は息を整える事もせず、腰を動かした。
痛みと恐怖は、人を簡単に動かす。
動物的本能に従って、女は一心不乱に腰を上下させ、ドクオを絶頂に導こうとする。
水っぽい音が結合部からし始め、彼は片手で女の腰を押さえたまま、もう片方の手で胸を握る。


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:40:23.03 ID:Wd/NGIk10

痛みが呼び起こされ、女の体が緊張した。
膣が収縮され、痛みに備える。
しかし、痛みは訪れなかった。
彼はただ、軽く握っただけだったのだ。

あたかも正常な愛撫≠フように、掌で弄ぶ。
緩和された膣の最深部に、ドクオの陰茎が達した。
僅か一瞬の緩みを演出する為に、一瞬の油断を。
子宮口をこじ開けようとしているのが、分かった。

天井を仰ぎ見たまま、息が出来なかった。
それが痛みなのか、それとも未経験の快楽のためなのか。
彼女には、理由が分からなかった。
ただ、開いた口からは酸素を吸えなかった。

ハハ;ロ -ロ)ハ「は……あ゛っづ……!」

動きが再び止まった為、ドクオが再度陰核を指で潰した。

ハハ;ロ -ロ)ハ「いづぁあ゛あ゛あああああああああっ!?」

絶叫。
体を串刺しにされて悶える様に、女は暴れた。
逃げようと腰を上げる。
その腰を、ドクオが押し戻す。

痛みを利用したピストン運動は、ただ、彼が快楽を得る為だけに行使されていた。

ハハ;ロ -ロ)ハ「も、や、やめ…… 止めてぇ!」

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:42:28.28 ID:Wd/NGIk10


懇願は聞き届けられなかった。
爪を立てて陰核がつままれ、女は泣き叫んだ。
乱暴な性交は、女が泣き疲れて全てを諦めるまで続けられた。
幾度も膣内に射精された末に床に寝かせられ、女は気を失った。


息一つ乱さずに、ドクオは女を見下ろした。
胸が動いているのを見る限り、死んではいない。
それだけを確認して、ドクオは熱いシャワーを浴びに風呂場に向かった。
風呂場から戻ってくると、床に寝ていた筈の女はいなくなっていた。

代わりに暖炉の前に居たのは、三人組の黒ずくめの男だった。
屈強な体つきからして、彼等が相当な訓練を積んでいる事が分かる。

('A`)「女は?」

不審がる様子もなく、ドクオは適当な男に尋ねた。
体格の良い男が一歩前に出て、感情の籠っていない声でそれに答えた。

( ゚∋゚)「処分するよう命令されておりました」

('A`)「そうか」

抑揚のない声でそう言って、ドクオは改めて男達に向き合い、敬礼した。
一斉に、男達も敬礼を返した。
機械仕掛けの人形の様な動きに、ドクオは口元を歪めて満足そうに笑んだ。
目の前に居る彼等こそが、この度政府から非正規の任務を受けた部隊の一員だった。


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:44:30.99 ID:Wd/NGIk10

ウォッカが僅かに残ったグラスの下には、一枚の調書が置かれている。
そこに書かれている人物こそが、彼等の唯一の標的。
その名は。
アニジャ・バーティゴの一人娘、イモジャ・バーティゴ。

* * *

届いたXM8の構造や癖を把握した五人は、予定の一時間前に空港の待合室に到着していた。
専用機を使うとのことで、彼等はゲートを通る必要は無かった。
ポロシャツにチノパンと、一見してラフな格好をしているが、彼等が背負っているリュックには銃が入っている。
シャキンとツンはライフルケースを肩にかけ、周囲に目を配っていた。

五人がいるガラス張りの待合室には備えつけの椅子が五十脚近くあり、彼ら以外にも多くの客がそこにいた。
老人から若者までここで飛行機が到着するまで時間を潰したり、待ち合わせをしたりしているのだ。
分厚いガラスは防弾性で防音性も高く、ここはある意味で安全地帯だった。
だからこそ、この場所を待ち合わせ場所に指定したのだろう。

誰も待合室の椅子に座る事はせず、壁に背を預けている。
ギコはツンと話をしていた。

(,,゚Д゚)「大丈夫か、ツン」

ξ゚听)ξ「えぇ、大丈夫です。
少し楽しみなだけです」

(,,゚Д゚)「楽しみ?」

ξ゚听)ξ「どんな馬鹿が来るのか、気になりませんか?」


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:47:03.78 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「確かにそれは気になるな。
ツンはどんなのが来ると思う?」

自動ドアが開き、三人組の老人が入って来た。
この三人ではないだろう。

ξ゚听)ξ「笑顔の絶えない馬鹿かと」

(,,゚Д゚)「はははっ、なるほどね」

三十分程話をしていると、今度は中年の男女五人が入って来た。
先程の老人達は既に出た後だ。
入って来た五人は空いている席を見つけ、そこにドカドカと座った。

(,,゚Д゚)「違うな」

ξ゚听)ξ「……どうしてです?」

(,,゚Д゚)「匂いが違う」

ξ゚听)ξ「フェチなんですか?」

(,,゚Д゚)「違う。 あいつらからは金とブランドの匂いがする。
サマリーに金は無い、だから、違う」

ξ゚听)ξ「あぁ、なるほど」

(,,゚Д゚)「サマリーのブランドは危険だけだ。
それを、あの脂っぽい奴等が欲しがるとは思えない」

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:49:52.73 ID:Wd/NGIk10
腕時計をちらりと見て、ギコは時間を確認した。
集合時間のどれぐらい前に来るかで、その人間性が分かる。
まともな思考を持ち合わせている人間なら、そろそろ来てもおかしくない。
マーディッシュに行くという時点で、まともな思考をしているとは思えなかったのだが。

その直後、五人の若者が待合室に入って来た。
キョロキョロと周囲を見て、ギコ達を見てひそひそと話している。
嫌な予感がしたが、そんな馬鹿な事は有り得ない、少し想像力が豊かすぎるとギコは自分で自分を罵った。
嘗ての仲間に聞かれたら大笑いされることだろう。

傭兵を引退して良かった。
やはり自分は耄碌している。
どう見てもティーンエイジャーの人間がサマリーに行くなどと、一瞬でも想像してしまった。
横にいるツンが、囁く様に小さな声で言う。

ξ゚听)ξ「……ギコ隊長」

(,,゚Д゚)「……なんだ」

ξ;゚听)ξ「あたし、嫌な予感がするんですが」

(,,゚Д゚)「気のせいだ」

ξ;゚听)ξ「こっちを見ています」

(,,゚Д゚)「道に迷ったんだろう」

ξ;゚听)ξ「一応聞きますが、合言葉、覚えていますよね?」

(;,,゚Д゚)「……あぁ、覚えてる」

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:52:16.39 ID:Wd/NGIk10
話している間にも、目の前の五人組は相談を続けていた。
やがて、唯一の少年がギコの前に来た。

(;´∀`)「すみません、あの」

(,,゚Д゚)「……なんだ」

頼むから違ってくれと、ギコはアルカイックスマイルを浮かべる少年を威圧的に睨みつけた。
眼には怯えの色が浮かび、手が震えた。
この程度で臆している様では、サマリーではオムツが必要だろう。


(;´∀`)「何か、いい事ありましたか?=v


(,,゚Д゚)「……」

最悪だ、と云う言葉が喉まで出かかったのを、ギコは気合いで押さえた。
この少年が口にした言葉は、合言葉に相違なかったのだ。
だとすれば、ギコは否が応でも答えなければならない。

(;´∀`)「あの……」


(,,゚Д゚)「……籠から逃げた青い鳥を見つけたんだ=v


こうして、五人の警護と警護対象者は対面を果たした。



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:54:06.18 ID:Wd/NGIk10





Title Call
       →
            (,,゚Д゚)青い鳥のようです


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:55:53.82 ID:Wd/NGIk10
飛行機の中は快適だったが、警護を担当する五人の誰一人として、その快適さを喜ぶ者はいなかった。
中年か、それとも耄碌した老人か。
そのいずれかであれば、まだ納得できる。
しかし、これはあんまりだった。

空港での対面の後、十人は滑走路に停まっていた飛行機に乗り込み、離陸前に自己紹介をした。
彼等は呆れ果てている事を悟られないように努め、簡単に自己紹介を済ませた。
警護の五人が一層不愉快になったのは、シィ・ベンジャミンと云う少女が彼等を見る目つきだった。
哀れな物や、汚い物を見る慈悲深い目つき。

同情心の溢れる目だった。
自己紹介が済んでから、各自座席に移動した。
横に三列、縦に六列。
席は三席で一組となっており、回転させる事が出来る物だった。

全員が席に着いたのを操縦士が確認してから、飛行機は離陸した。
中央最前列にヒート・O・ワイルド、シャキン・フェザーライト、フサ・トロントの三人が。
中央最後列にギコ・カスケードレンジとツィーナ・D・テルソンが座っていた。
五人の学生は、中央の座席で和気藹々と話していた。

それが警護の五人を更に苛立たせた。

ミ,,゚Д゚彡「……冗談じゃねぇぞ」

小さくフサがぼやく。

(`・ω・´)「落ち着いて下さい、フサさん」

ミ,,゚Д゚彡「シャキン、俺は頼まれればスーパーのタームセールにだって行くし、婆さんの肩だって揉む。
だけど、自殺志願者のピクニックのお守なんて云うのは御免だ……」

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 22:57:54.17 ID:Wd/NGIk10
(`・ω・´)「子供のお守だと思えば楽ですよ。
二泊三日、何をするかは知りませんが、余計な事をさせずにホテルに閉じ込めておけば」

ミ,,゚Д゚彡「お前は前向きの天才だよ、シャキン。
自殺旅行の理由を聞いて来い、お前が一番若いんだ」

そう言ってフサは顔にタオルを乗せ、座席を倒した。
シャキンが何か言おうとしたが、フサは既にイヤフォンで外音を遮断し、音楽を聞いていた。
溜息を吐き、シャキンは一言だけ残した。

(`・ω・´)「分かりました」

ゆっくりと腰を上げ、あたかも彼等に興味を持ったかのように席を移動する。
最初にシャキンが近付いて来たのに気付いたのは、モナーこと、茂名輝だった。

( ´∀`)「えっと、シャキンさん?」

(`・ω・´)「あぁ、そうだよ。
君はモナー、だったね。 どうかよろしく」

( ´∀`)「どうしたモナか?」

(`・ω・´)「なにね、君達が随分と楽しそうに話しているから、僕も混ぜてもらおうと思ってね。
短い間だけど、一緒に過ごす訳だし。
仲良くなっても問題は無いと思うんだ」

( ´∀`)「そりゃあ歓迎ですモナよ、シャキンさん。
なぁ、皆」

|゚ノ ^∀^)「うん。 私もお話したかったよぁ」

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:00:04.93 ID:Wd/NGIk10
川 ゚ -゚)「別に」

シャキンは頭の中で素早くメモを取った。
レモナ・インハイトは人見知りをせず温厚で、クー・アケーディアは淡泊で無愛想。
対の存在として、シャキンは記憶した。

l从・∀・ノ!リ人「私も構わんのじゃ」

最重要人物、イモジャ・バーティゴの事は特に注意深く観察をした。
社交的、外交的。
しかし、まだ情報が少ない。

(`・ω・´)「それは良かった」

唯一返事が無かったのは、要注意人物のシィだ。
警戒しているのか、それとも軽蔑しているのか。
彼女は無言で俯き、極力シャキンの言葉を聞かないようにしているのがよく分かる。
目も合わせようともしない露骨ぶりだ。

( ´∀`)「そうだ、シャキンさん。 一緒にトランプしませんかモナ?」

(`・ω・´)「ポーカーか?」

( ´∀`)「いやいや。 大富豪ですモナよ」

(`・ω・´)「いいだろう、大富豪は俺の得意分野なんだ」

クーの隣に座ると、モナーが慣れた手つきでトランプを切り、六人に配った。
三人が向かい合って座り、シャキンの横にはクーとイモジャが座っている。
配られたカードを見て、シャキンはニヤリと笑う。

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:02:13.19 ID:Wd/NGIk10

(`・ω・´)「悪いが、俺は遠慮はしないんだ。
狙った獲物は逃がした事が無くてね」

ハートの3を持っていたクーから、ゲームはスタートした。
ローカルルールの中身を確認しながらゲームを続け、シャキンは順調に手札を減らしていく。
二枚あるジョーカーの内の一枚をシィが使用した時、シャキンは手札を再確認した。
手札がダイヤの2とジョーカー、そしてクラブの4。

彼は勝負を仕掛けた。
最初にダイヤの2を出し、ジョーカーを出し、そしてクラブの4の順番で出せば勝利だ。
既にジョーカーが使用されている為、2に勝てるカードはシャキンしか持っていない。
となれば、2の後のジョーカーは必ず通り、見事シャキンが勝利する。

2の後にジョーカーを出した時、彼の次に手札が少ないクーが反応した。
ジョーカーの上に、スペードの3を出したのだ。
これによってシャキンの目論見は破綻した。
瞬く間にクーは手札を消化し、シャキンから勝利を奪い取った。

(;`・ω・´)「ば、馬鹿な……!」

川 ゚ -゚)「ふっ」

二番目に弱い四では、勝てる見込みは少ない。
これが逆転である。
クーは満足そうだった。
結局シャキンは最下位となり、二戦目、三戦目とゲームは白熱して行った。

トランプの束をシャッフルしながら、シャキンはさり気無くイモジャに尋ねることにした。
彼の見る限り、今回の馬鹿げた計画の立案者は彼女で間違いない。

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:04:09.98 ID:Wd/NGIk10

(`・ω・´)「そう言えばイモジャさん達は、マーディッシュには何をしに行くんだい?
実を言うと、僕達の上司が面倒くさがり屋で、あまり詳しく教えてくれなくてね」

l从・∀・ノ!リ人「うむ、医療品と食料を届けに行くのじゃ」

(`・ω・´)「なるほど」

如何にも子供の発想だったが、大した決断力と行動力だ。
最初は頭の狂った集団だと思っていたが、彼らなりに考えて、今回の行動に出たらしい。
目的が気の触れた観光客で無くて、本当に良かったと、シャキンは安心した。
ただ、医療品の配布だけでも危険な事に変わりは無いのだが。

すると、予想外の人物が会話に加わって来た。
それまで無言だったシィだ。

(*゚ー゚)「……サマリーでは、子供達が飢餓に苦しんでいると聞きます」

(`・ω・´)「それは違う」

(*゚ー゚)「えっ?」

(`・ω・´)「大人も子供も、だ」

(*゚ー゚)「そう、ですか……
私達、その状況を少しでも良くしたいんです」

(`・ω・´)「立派な事だ」

(*゚ー゚)「それで、医療品の他に、花を配ろうと思うんです」

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:06:19.83 ID:Wd/NGIk10

シャッフルする音が止まった。

(`・ω・´)「花?」

(*゚ー゚)「はい、花を見れば誰だって心が安らぎますから」

修道女が説き伏せるかのように、シィは胸の前で手を組んで、真っ直ぐにシャキンを見た。
シャキンは呆れるあまり、言葉を失っていた。
適切な言葉が見当たらず、言ったところで、果たして通じるのだろうか。
直ぐにシャッフルを再開し、平静を装う。

(`・ω・´)「ふぅん」

曖昧な相槌をして会話を終わらせようとしたところに、ギコとツンがやって来た。

(,,゚Д゚)「俺達もいいかな?」

(;´∀`)「あ、あぁ、はい勿論ですモナ」

シャキンの横にギコ、ギコの向かいにツンが座る。
流石に人数が多くなった為、大富豪の続行は困難になった。
如何せん机が無い上に、横に広がってしまっているのだ。

( ´∀`)「えっと、何か机でも……」

(,,゚Д゚)「ポーカーでもやろう。
ルールは分かるか?」

( ´∀`)「一応、昼休みに時々やってるので」

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:10:33.03 ID:Wd/NGIk10

(,,゚Д゚)「じゃあ問題は無いな。
誰かが山札を持っていればそれでいい。
折角だから、何か賭けないか?」

(*゚ー゚)「賭けごとは良くありません」

シィの言葉を無視して、ギコはモナーにもう一度問う。

(,,゚Д゚)「どうだ、モナー?
別に金を賭けるわけじゃない」

(*゚ー゚)「モナー、駄目です。 賭けごとは人を堕落させます」

(,,゚Д゚)「嫌なら、お嬢さんは参加しなければいい。
イモジャはどうだ?
本物のポーカーをやって見たいとは思わないか?」

l从・∀・ノ!リ人「……何を賭けるのじゃ?」

(,,゚Д゚)「一日命令権なんてどうだ?
明らかに無茶な命令は無効、当然、複数の命令もなしだ。
言うなればあれだ、一つだけ有効な命令だ。
お前らの内誰かが勝てば、その権利をやろう。

ただし、俺達の内誰かが勝てば、逆に権利を貰う。
繰り返すが、これは一日だけ有効だし、無茶な命令は無効だ。
どうだ?
これを使えば、例えば誰かの父親に行くなと言われているような場所に、俺達が連れて行く事も出来る」


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:12:05.81 ID:Wd/NGIk10

イモジャがリーダーなら、必ず考え込み、同意する筈だ。
何せ彼等は現実を知らないのだ。
だとすれば、彼等にとって魅力的な物を見せてやればいい。
ギコの予想は当たった。

l从・∀・ノ!リ人「分かったのじゃ、私はやるのじゃ」

( ´∀`)「じゃあ、俺もやるモナよ」

|゚ノ ^∀^)「だったら、私もやるよぉ」

川 ゚ -゚)「面白そうだから、私もやろう」

結局、不満を漏らすシィ以外全員が同意した。

(,,゚Д゚)「そしたら、俺とツンの二人チームが相手になろう。
シャキン、悪いが……」

(`・ω・´)「いえ、構いません」

座席を移動し、四人と二人が向い合う。
シャキンはシィと共に席を移り、勝負を見守る。
シィはこれから罪を冒す友人の罪を許し、勝利をプレゼントしてくれる様にと神に祈った。
一方、シャキンは勝負の結果を知っていた。

彼が見たいのは、現実を知った時の子供達の反応だった。
細かなルールを取り決め、三回勝負で決着をつける事となった。
勝負は二回で終わった。
当然、ギコ達の勝ちだ。

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:14:45.78 ID:Wd/NGIk10


イモジャ達は健闘したが、勝負の世界にあるのは勝ち負けだけで、健闘は負け以外の意味を持たない。
気休めの言葉など不要だが、クーが自力でフォーカードを出した時は、流石のシャキンもひやりとした。
ツンがストレートフラッシュを出さなければ、一敗していた。

(,,゚Д゚)「と云う訳だ。 悪いが、俺達の勝ちだ」

(;´∀`)「……あ、有り得ねぇモナ」

(,,゚Д゚)「おいおい、モナー。
勝負の世界に有り得ない、は無いんだ。
現にこうして有り得てる」

カードを集めてシャッフルし、その束をモナーに渡した。

(,,゚Д゚)「お前の用意したカードで戦ったんだ。
何かしようもないだろう」

(;´∀`)「くっ、くそぅっ……!」

(,,゚Д゚)「これを機に何かを学ぶんだ。
経験から学ばないと、何も出来ない。
さて、この権利は今日にでも使わせてもらおう」

l从・∀・ノ!リ人「な、何を命令するつもりなのじゃ?」

怪訝な顔をしたイモジャが、恐る恐ると云った様子で尋ねた。
ギコとツンは見合わせ、笑い声を上げた。


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:16:34.78 ID:Wd/NGIk10

ξ゚ー゚)ξ「はははっ! そんなに心配しなくても、私達は酷い命令はしないよ。
悪かったね、楽しんでるところ。
ほらシャキン、元の場所に戻りな」

(`・ω・´)「了解です」

|゚ノ ^∀^)「あの、ツンさん、ギコさん」

今度は、レモナが尋ねて来た。

ξ゚听)ξ「ん? なんだい?」

|゚ノ ^∀^)「私達と、大富豪しませんか?」

ξ゚听)ξ「賭け無しでなら、いいよ」

|゚ノ ^∀^)「やったぁ!」

l从・∀・ノ!リ人「シィちゃん、賭けごとでなければ、一緒に遊べるのじゃ」

(*゚ー゚)「えぇ、それは、まぁ」

口を濁すシィを見て、ギコは無言で席を立った。
イモジャがそれを引き止めた。

l从・∀・ノ!リ人「一緒にやるのが嫌なのか?」

(,,゚Д゚)「俺はいいんだが、そっちのお嬢さんが俺の事を嫌いらしいからな。
空気が悪くならない方がいいだろ」

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:19:05.83 ID:Wd/NGIk10
(*゚ー゚)「そ、そんなことありません!」

シィは力強く否定したが、その言葉は説得力に乏しい。
ポーカーを通じて、ギコとツン、そしてシャキンはこの五人の特徴をある程度掴んだ。
その中でも取り分け面倒なのが、やはり、このシィと云う少女だと云うのが五人の共通の結論だった。
信仰心が強く、それを人に押し付ける癖が彼女にはある。

尚かつ、彼女の場合、それは口先だけの事であって行動に移せるレベルではない。
まだまだ未熟な修道女、と云った評価を三人は下していた。
目は口ほどに物を言う。
シィがギコを見る目に好意の色はなく、本心で否定したのではないと分かる。

神の前では皆平等と云う教えがあるから、彼女は義務的にこう言っているだけなのだ。
イモジャとモナーはこちらに興味を持っている様で、クーに関しては未だ情報が不足している。
レモナは恐らく、この五人の中でも特に気を配るタイプだ。
警護を円滑に進める為に押さえるのは、シィを置いて他に居ない。

(,,゚Д゚)「そうかい、それならやろう」

ここで変に断ると、シィの様なタイプは必ず意地になる。
そうなると確実に面倒に発展するので、ギコは結局、大富豪に加わる事にした。

|゚ノ ^∀^)「ツンさん、私の隣に座ってよ〜」

ξ゚听)ξ「はいはい」

理由は不明だが、レモナはツンに懐いた様子だった。
それまでシャキンが座っていた位置にギコが座り、大富豪が始まった。
心なしか、クーの視線がギコに注がれている気がしたが、ゲームは滞りなく進んだ。
その後は大したトラブルや諍いも無く、機内で夜を過ごした。

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:21:04.71 ID:Wd/NGIk10

* * *

翌朝。
機内で最初に目を覚ましたのは、ギコだった。
音を立てないように席を立って、機内後部に備えつけられているドリンクバーに向う。
コーヒーを二つ淹れて戻ると、ツンが起きていた。

(,,゚Д゚)「おはよう」

挨拶しながら渡したコーヒーを受け取り、ツンはそれを軽く啜った。

ξ゚听)ξ「……いよいよ、近付いて来たんですね」

蚊の羽音程の声量で、二人は会話を始めた。

(,,゚Д゚)「分かるか?」

ξ゚听)ξ「空気が違います。
隊長は……、どう思います?」

(,,゚Д゚)「昨日の事か」

ξ゚听)ξ「はい。 出来れば、彼等を外に出したくないのですが」

(,,゚Д゚)「俺も同感だ。 だからこそ、あの賭けをしたんだ。
今日一日はホテルにいてもらう。
ただ、問題はシィだ。 あいつは意地でも外に出て何かをする」

ξ゚听)ξ「私もそう思います。 今の内に分担を決めておきますか?」

117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:22:23.80 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「そうだな」

警護一人で一人を護れる形を取っておけば、有事の際に素早く行動に移れる。
その形態を取るとすれば、問題になるのは組み合わせだ。
相性の悪い者同士を組み合わせると、まともな警護が出来なくなる。
少し考えた結果、ギコは決断した。

(,,゚Д゚)「シィはシャキンに任せる。
フサはレモナ、ヒートはモナー。
ツンはクー、俺がイモジャを護る。
何か問題は?」

ξ゚听)ξ「いいえ、ありません」

(,,゚Д゚)「……ありがとう、ツン」

ξ゚听)ξ「どうしたんです? いきなり」

(,,゚Д゚)「サマリーでは皆に助けられたが、特にお前に助けられた記憶が強いんだ」

ξ゚听)ξ「恐縮です、隊長」

(,,゚Д゚)「今回も、背中を頼めるか?」

ξ゚听)ξ「えぇ。 雄獅子≠ニ仕事が出来るんですから。
あたしは出来る事は何でもやりますよ」

(,,゚Д゚)「無理だけはするなよ、いいな?」

ξ゚听)ξ「分かっています。 生きてこそ、ですから」

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:24:04.47 ID:Wd/NGIk10

二人は無言でコーヒーを啜り、物想いに耽った。
サマリーで二人が経験したのは、完全な孤立だった。
非正規部隊に任された任務は、サマリー政府の要人の暗殺。
情報がどこからか漏れており、暗殺は困難を極めた。

暗殺は出来なかったが、要人の家ごと爆破して、どうにか任務を遂行した。
撤退する際に作戦に参加した小隊が半分に引き裂かれ、ギコとツンを残して全員殺された。
惨殺だった。
捉えられ、生きながらに肉を引き裂かれ、腸を取り出された。

死体は野晒しにされ、ハゲワシと野良犬に食い荒らされた。
生き延びた二人には懸賞金が掛けられ、瞬く間にマーディッシュの民間人が彼等に銃口を向けた。
街中を逃げる事の難しさは語るまでもない。
死に物狂いで市街を脱出し、一週間かけてようやく基地に生還したと云う訳だ。

(,,゚Д゚)「腹が減ったな」

ξ゚听)ξ「まだ朝早いですから。
恐らく、もうフサさん達も起きているでしょう。
子供達はまだ寝てそうですけど」

(,,゚Д゚)「……いいや、一人起きてる。
クーだ。 あいつだけ呼吸が違う」

ξ゚听)ξ「話を聞こうとしているんでしょうか?」

(,,゚Д゚)「さてね。 どうにも、あいつは分からない。
ま、俺達はいつも通りに振る舞おう」


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:26:12.62 ID:Wd/NGIk10

起きて来たモナー達と共に朝食を食べたのは、二時間後の事だった。
サンドイッチとコーヒーの朝食が食べ終わった辺りで、窓の外に広大な大地が見えてきた。
見渡す限り、殺伐とした茶色の風景。
遂に彼等を乗せた飛行機は、サマリー上空に到着したのだ。

『間もなく到着しますので、シートベルトを締めてください』

機内アナウンスが流れ、ギコ達はシートベルトを締める。
やがて機体がゆっくりと高度を下げ、着陸態勢に入る。
砂煙を巻き上げながら機体は無事に着陸し、一行はサマリー唯一の空港、マースティ空港に到着した。
機体は格納庫に移動し、停止した。

モナー達が立ち上がるより先に、警護の五人が立ち上がり、持って来た装備を直ぐに取り出した。
高性能防弾プレートの入った防弾ベストを装着し、そこに装備が収まっているかを確認した。
ナイフ、拳銃、そして予備の弾倉。
装備の確認が済むと、銃の点検に入った。

リュックから出した砂漠様の偽装迷彩を施したXM8に弾倉を込め、コッキングレバーを引いて初弾を装填した。
その音を聞いた少年少女達は、一様に身を強張らせた。
フサとギコはグレネードランチャーが装着されたXM8で、スリングベルトを使って袈裟がけに提げている。
ヒートはカービンモデルに変えた物にマスターキーを装着し、こちらもスリングベルトで肩から提げていた。

ツンとシャキンの二人は狙撃用に換装し、やはりスリングベルトを使って肩から提げていた。
全員装備が終わると、二人組と三人組に別れ、互いの装備を点検した。
早朝にギコが決めた分担は、その際に密かに発表された。
そうしてからようやく、ギコが言った。

(,,゚Д゚)「ようこそ、サマリーへ。
これから全員に服を配るから、それに着替えてくれ」

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:28:14.26 ID:Wd/NGIk10

体全体を覆い隠せる、ゆったりとしたローブの様な布を全員に配り始める。

(*゚−゚)「……」

真っ先に反応すると思われたシィは、唖然としていた。
怒りに震える声で、彼女は言った。

(* − )「……どうして」

ノパ听)「あぁん?」

ヒートが不機嫌そうな声で、聞き返す。

(*゚−゚)「平和の為に来たのに、どうして銃がいるのですか?」

(,,゚Д゚)「必要だからだ」

ヒートの代わりにそれだけ告げて、ギコはそれ以上何も言わなかった。
シィ達五人の準備が終わると、操縦室から一人の青年がやって来た。
執事服に身を纏い、肩まで伸ばした金髪と碧眼が特徴的だった。

爪゚ー゚)「イモジャ様、いかがでしたか?」

l从・∀・ノ!リ人「えぇ、いつも通り素晴らしかったのじゃ。
っと、貴方の事を紹介しておかないといかんのじゃ」

爪゚ー゚)「これは失礼しました。
皆様、私はジィ・フーリッシュ。
どうかジィとお呼びください」

121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:30:06.34 ID:Wd/NGIk10
l从・∀・ノ!リ人「ジィは昔、特殊部隊にいたのじゃ」

シャキンはその言葉に興味を示し、質問した。

(`・ω・´)「へぇ。 どこの部隊です?」

爪゚ー゚)「ネイビーシールズです。
任務中に足を撃たれて、それで辞めたんです。
激しい運動さえしなければ問題ないのですが、それでは部隊に残れませんので」

(`・ω・´)「良い判断ですね」

爪゚ー゚)「えぇ。 そのおかげで、お嬢様にお仕え出来ているのですから。
怪我の功名と云う訳です」

l从・∀・ノ!リ人「ジィはサマリーで私達の身の回りの細かい世話をする事になっているのじゃ」

(,,゚Д゚)「ちょっと待ってくれ。 初耳だぞ、それは」

食ってかかったのはギコだった。
彼の情報では警護対象は五人。
足手纏いが一人増えるなどと云う話は、聞いていない。

l从・∀・ノ!リ人「大丈夫じゃ。 ジィは私のボディーガードも兼ねている優秀な執事なのじゃ」

(,,゚Д゚)「足を負傷しているんだったら、あまり過信しすぎない方がいい。
……万が一の事があっても、俺達はジィを助けられない。
精々、苦しまないように頭を撃ってやるぐらいだ。
それでもいいなら、ついてくればいい」

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:32:29.02 ID:Wd/NGIk10
l从・∀・ノ!リ人「っ……!」

何か言おうとしたイモジャだったが、理性がそれを止めた。
彼女にとってみればジィは家族なのだろうが、ギコにとっては他人だ。
警護対象ですらない。
他所の国ならまだしも、サマリーでは感情で動くべきではない。

家族の事を大切に思うのなら、マーディッシュに連れて行くのは止めるべきなのだ。

(,,゚Д゚)「最初に言っておくが、この国はお前達が持っている常識は通用しない。
法律も無ければ憲法も無い。
絶対に忘れるな」

一気に機内の空気が悪くなったのが、ギコには分かった。
仕方がないのだ。
こうでもしなければ、マーディッシュで花を配ろうと考えている人間には伝わらない。
多少強引でも、厳しくして危険を認識させる必要がある。

(,,゚Д゚)「ジィ、悪いがこの国ではこっちの指示に従ってもらうぞ」

爪゚ー゚)「心得ました」

(,,゚Д゚)「武器は?」

爪゚ー゚)「グロック・オートマチックがあります」

(,,゚Д゚)「弾を持てるだけ持って来てくれ。
サマリーの経験は無いんだろう?」

爪゚ー゚)「恥ずかしながら」

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:36:34.23 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「気にするな。 誰でも初めての事はある。
それじゃあ、行こう」

ギコ達五人はサングラスを掛け、配置についた。
飛行機の扉を開けると、一気に乾いた熱風が機内に舞い込んで来た。
最初にタラップを踏んで外に出たのは、ギコだった。
その後にツンが続き、着替えを終えた子供達に混じってジィもその後から出て来た。

殿を務める三人が最後に出て来て、合計十一人がマースティ空港の格納庫内に降り立った。
降りてすぐの場所にミニガンを搭載したスモークガラスのハンヴィーが二台停めてあり、ミニガンは分厚い布で覆い隠されていた。
二班に分かれて分乗する事になり、一台目にフサ、ヒート、そしてシィ、レモナ、モナーが乗った。
残りは二台目に乗り、助手席にツン、運転席にはギコが座った。

ジィは運転手のシャキンと共に、食料品、医療品、そして花が詰まったコンテナを搭載した大型トラックに乗った。
一台目の運転手を務める事になったのはフサで、彼が車を発進させ、トラックが後に続いた。
最後尾をギコ達のハンヴィーが走り、三台は空港を出た。

道中でギコは、空港から二十キロ程走れば、マーディッシュの市街に入る事を説明した。
不機嫌そうな顔をして、イモジャは無言で窓の外を眺めていた。

(,,゚Д゚)「言っておくが、俺はジィを馬鹿にした訳じゃない。
彼は優秀な執事だ。 それは見れば分かる」

l从・∀・ノ!リ人「……」

(,,゚Д゚)「イモジャ、君が彼を信頼しているのは分かっている。
だが、事実は事実だ。
それほどサマリーは危険な地域なんだ」

l从・∀・ノ!リ人「……そうか」

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:37:50.64 ID:qwVx/qU30
頑張れー

125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:38:08.89 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「悪いが、向こうに着いたら君達が予定していた様な事は出来ないと思っておいてほしい」

川 ゚ -゚)「どうしてですか?」

その質問はイモジャからではなく、クーからだった。

(,,゚Д゚)「マーディッシュの状況は知っているか?」

川 ゚ -゚)「無政府状態の国の首都ですよね?」

(,,゚Д゚)「そうだ。 だが、細かいところまでは知らないだろう。
どこまで調べた?」

川 ゚ -゚)「治安が悪くて、水道が無いことぐらいでしょうか」

(,,゚Д゚)「間違っていないが、それは大雑把な部分だな。
治安の悪さが世界一って街を想像出来るか?
街中を一時間歩いていれば、ほぼ確実に犯罪に巻き込まれる。
スリ、強姦、殺人、誘拐、詐欺。

兎に角なんでもだ。
君達が一番気をつけるのは怖い大人でも、優しそうな大人でもない。
子供だ」

川 ゚ -゚)l从・∀・ノ!リ人『子供?』

後部座席にいる二人の声が重なる。
気にせず、ギコは運転と話を続けた。


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:40:29.71 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「そうだ。 子供だ。
君達が子供を救いたい気持ちで来たのは分かったが、実際問題、それは難しい。
純粋故に、犯罪を犯罪と思わないし、大人に命令された事を躊躇わずに実行する。
少年兵には随分と苦労させられた」

l从・∀・ノ!リ人「……何人殺したのじゃ?」

イモジャの問いに、ギコは天気の話をする様な気軽さで答えた。

(,,゚Д゚)「食った小魚の数と同じでいちいち覚えていない」

l从・∀・ノ!リ人「子供なんじゃから、話せば……」

(,,゚Д゚)「分かり合えない。 分かり合う必要もない」

沈黙。

(,,゚Д゚)「……俺はお前達二人がまともな思考をしていると信じて、この話をする。
二人の部下が少年兵に殺された。
二人には妻も子供もいた。
よく写真を見せられて、自慢させられたものだ。

二人は、自分の子供と同じくらいの歳の少年兵に殺された。
それを許せと?
捕えて更生させて、妻と子供残して逝った二人が浮かばれるとでも?
目の前で仲間が殺された事のない君達には、一生分からないだろうな」

l从・∀・ノ!リ人「……」


127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:42:23.88 ID:Wd/NGIk10
(,,゚Д゚)「だが、行動力だけは褒めてやる。
使い方が間違っているけどな。
まぁ、俺は昨日勝ち取った命令権を使って、今日一日は大人しくホテルにいてもらおうと思ってる」

l从・∀・ノ!リ人「そんな! それでは、貴重な一日が潰れてしまうのじゃ!」

ξ゚听)ξ「落ち着きなよ、イモジャ」

顔を後ろに向け、ツンが会話を引き継いだ。

ξ゚听)ξ「悪いけど、皆が持って来た医療品や食料品は三十分もあれば直ぐに無くなる量だ。
あの花の代わりにもう少し量を増やせば、四十五分はもったかもしれないけどね」

l从・∀・ノ!リ人「でも、花は必要なのじゃ。
花を愛でる余裕があれば、少しは安らげると思うのじゃ」

ξ゚听)ξ「……まぁ、ここであたしが何かを言うよりも実際に見た方が早いね。
見て、経験すれば、嫌でも分かるよ。
っと、そんな事言ってる間に見えて来たよ」

砂塵の向こうに、それは突然現れた。
忘れ去られたかのように寂れ、朽ち果てた砂色の建物が群れを成している。
茶色に彩られたその景色を見ても、それが一国の都市だとは誰も思わないだろう。
だが、事実なのだ。

近付いて来るこの街こそが、サマリー共和国首都、マーディッシュ。

* * *


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:44:45.66 ID:Wd/NGIk10
その頃、マースティ空港には新たな飛行機が到着していた。
黒塗りの機体が空から降りて来た時、空港にいた作業員達は不安に駆られた。
最新型の巨大な輸送機から降りて来た男達は皆若く、目は剃刀のように鋭かった。
まるで機械の様に無表情で、感情が一切見えない。

鮮血で染めたかのようなバンドを腕に巻き、無駄なく動く様は正に兵隊アリだ。
その兵隊アリ達に指示を出しているのは、最も年老いた男だった。
スミノフ・ドクオ・ノーマッドは完璧な動きを見せる部下達を前に、大いに満足していた。
彼の国の言葉でスズメバチを意味するシャープシェン≠フ名を冠する、特殊部隊。

国内の特殊部隊の中でも、人を捉える事に特化した人間を集めたこの部隊は、当然非正規部隊だ。
人狩り専門の部隊が公になれば、祖国の評価が落ちる。
シャープシェンの隊長としてサマリーにやって来たドクオは、手に持っていた電子端末を見た。
標的の位置は、これで大体把握出来る。

たった今、標的一行はマーディッシュに到着したようだ。
端末から顔を上げ、彼は近くにいた隊員に声を掛けた。

('A`)「同志ブラック・マーラー」

(;;・∀・;;)「はっ!」

('A`)「鳥が餌場に来た。 蟻共を動かせ」

(;;・∀・;;)「はっ!」

マーラーと呼ばれた隊員は敬礼をしてからその場を離れ、無線機で連絡を始めた。
彼が連絡している間、ドクオは別の隊員――隊の中で最も醜い顔をした男――に声を掛けた。

('A`)「同志ドール・イチマツ」

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:46:16.79 ID:Wd/NGIk10
从`゚溢゚从「はっ!」

('A`)「移動の準備はどうだ」

从`゚溢゚从「はっ! 後二十分で全装備の積み替えが完了いたします!」

('A`)「よろしい。 作戦に変更は無い。
各員に通達しろ」

从`゚溢゚从「了解いたしました!」

直立不動の姿勢で敬礼をして、駆け足でイチマツはその場を去った。
彼等の飛行機の近くに、黒塗りのバンが二十台停められていて、その周りで隊員達は忙しなく動いていた。
主に荷物の積み替えをしていて、ギアボックスや防弾ベストに紛れて銃器も運ばれている。
手際良く荷物はバンに積み込まれ、到着してから三十分で全て完了していた。

作業を終えた隊員達が、ドクオの前に整列する。
百名の屈強な若者達は、黙って気を付けの姿勢をして、彼の言葉を待っていた。

('A`)「同志クックル!」

ドクオが呼んだのは、部隊の中で最も傷の多い男だった。
地鳴りの様な低い声で、クックルは短く声を発する。

( ゚∋゚)「はっ!」

('A`)「踏み散らせ」


130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:48:20.10 ID:Wd/NGIk10
邪悪な笑みをもって、クックルはその命令を実行に移した。
百名の隊員達は各自割り振られたバンに向かうと、防弾ベストを身にまとって武器を受け取り、点検した。
素早く点検を終えると、無言で彼等は空港のロビーに向かった。
遅れて、ドクオも着替えを済ませ、ヘリカルマガジンが特徴的なビゾンを手にロビーに向かう。

程なくして、銃声と悲鳴が空港中から聞こえて来た。
廃れた空港のガラスが砕け、体中を血まみれにした男の体がそこから落ちた。
ガラス窓の向こうに助けを求める様にして手を押し付けた女は、直ぐにそのガラスに顔と脳漿を貼り付ける事になった。
文句無し、一方的な殺戮である。

('A`)「ふふふ、はしゃぎ過ぎだ」

ロビーに到着すると、そこは血の海となっていた。
悲鳴と絶叫、助けを求める声が銃声によって確実に減らされてゆく様は、身震いがする程に完璧だ。
死体の横に出来た血溜を跨いだ時、彼の足元から呻き声が聞こえた。
呻き声の主は、中年の男性の物だった。

「た……す……」

無言で銃弾を男の頭に撃ち込み、沈黙させた。
地上階の制圧は済んでいるようで、銃声と悲鳴は上の方からしか聞こえてこない。
ドクオも死体を踏み越えて上の階に向い、そこで彼が見たのは、隊員達の遊戯だった。
捉えた人間を窓際に一列に並ばせ、必死に命乞いをさせ、殺すと云う物だ。

彼等を楽しませる事が出来れば生かしてやる、と言っておくことがポイントだった。
だが、彼等に出来るのは命乞いが精一杯。
足元に広がる灰色の脳味噌と血の海を前にしては、錯乱して思考を働かせることなど、とてもではないが無理だ。
銃口を向けられているのであれば尚更だ。


131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:50:13.21 ID:Wd/NGIk10
クックルの指示で銃声が鳴り響き、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした人間が次々と押し黙り、死体となって倒れる。
その一部始終を見届けてから、ドクオは指揮をしていた男に声をかけた。

('A`)「クックル。 供物≠ヘ?」

( ゚∋゚)「確保してあります、同志」

('A`)「案内しろ」

絨毯の様に広がる人体の一部が混じった血溜を避けようともせず、ドクオはそれを踏みながら、クックルに案内をさせた。
やって来たのは、従業員用の休憩室だった。
空調設備があるが、窓ない。
誰かを監禁するにはもってこいの場所だった。

そこにいたのは、五人の少女と一人の女性だった。
年端もいかない少女は完全に怯え、泣き、絶望していた。
二十代前半の女性は目の前で起きた現実を受け止めきれず、呆然としていた。
六人に共通している点は、女で、そして若くて美しいという点にある。

('A`)「ふむ。 三十人をここに残しておく。
今日中にロビーの死体を始末し、監視カメラの映像を全て破棄しろ。
我々の痕跡を残さず、テロリストの仕業に見せかけろ」

( ゚∋゚)「はっ!」

('A`)「同志クックル、君が今からここの指揮を執れ。
状況に応じて君の裁量で指示を出せ」

その言葉を聞いたクックルは、嗜虐的な笑みを浮かべた。


132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:52:24.54 ID:Wd/NGIk10
( ゚∋゚)「分かりました、同志。
それでは早速、供物≠ノ危険が無いか念入りに検査をさせていただきます」

('A`)「それは構わないが、指揮を怠るな。
以上だ」

それだけ言ってドクオは部屋を後にした。
近くにいた隊員二人を呼び付け、供物≠フ居場所と臨時の指揮官、ここに残る部隊を指示した。
背後にある休憩室から女性の悲鳴が聞こえて来たのは、その直ぐ後の事だった。
その三十分後には少女達が母親に助けを求める声がしたのだが、ドクオは空港にはいなかった。

少女達の母親は、冷たい骸となって地面に転がっていた。

* * *

ハンヴィーがマーディッシュに到着した途端、飴に群がる蟻のように現地人が寄って来た。
窓ガラスを決して下げないようにと、各車では乗員に注意が促されていた。
先頭を走るフサは運転席でドアと窓をロックして、警告の為にクラクションを鳴らしてアクセルを踏み込んだ。
案の定、後部座席に座っていたサマリー未経験者達は、非難するような口調で質問を運転手に投げかけた。

(*゚−゚)「どうして止まらないんですか!」

これはシィ・ベンジャミンの言葉だ。
それに対してフサは溜息を吐き、こう答えた。

ミ,,゚Д゚彡「今はその必要が無いからだ」

(*゚−゚)「求められたら、与えるのが……!」


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:54:38.15 ID:Wd/NGIk10
クラクションを鳴らし続けても、人の群れが車を取り囲む。
窓を叩いたり、車体を触ったり。
何か物を見せて来る者もいた。
スモークガラスで心底良かったと、フサは改めて思った。

ミ,,゚Д゚彡「静かにしてな。
ここでお前の配る予定の物を渡したら、今日中に帰国する事になる。
物が少ないなら、もう少し頭を使って考えろ」

(*゚−゚)「貴方には、人の心が無いのですか?!」

シィの放ったこの言葉は、フサの怒りを買った。
だがフサは子供相手に表立って怒り狂う事もしないし、手を出す事もない。
敵対の立場を明確にするぐらいだ。
ゆっくりと堪忍袋の緒を切って、フサは静かに喋った。

ミ,,゚Д゚彡「何が人の心かは知らないけどな、一時の感情だけで動くのが馬鹿って言うのは知ってる」

(*゚−゚)「神の教えでは……!」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、そうだ。
それも言っておかないといけないな。
この国では神の話はなしだ。
特に、お前の信じている宗教は絶対に口にするな」

(*゚−゚)「何故ですか? 私に信仰を捨てろと?」


134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:54:50.01 ID:snB96KYLO
今って支援なくても大丈夫なんだっけ?
色々変わっててよくわからん
けど見てるよー頑張って支援

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:56:06.62 ID:Wd/NGIk10
ミ,,゚Д゚彡「そこまで言っていない。
信仰は人の自由だ。 だから、お前は人にその信仰を押しつけるんじゃない。
この国の人間が信じているのは、お前の信じている神とは別だ。
それを覚えておけ」

(*゚−゚)「私は、私の信仰に従って行動しているだけです」

ミ,,゚Д゚彡「何も考えずに感情だけで行動しろと教えてるのか?
そりゃすごい! 迷惑極まりない教えだな。
フーリガンやテロリストと一緒だ。
お前の神様はモヒカンで肩にトゲ付きパットでも付けて、日々汚物を消毒してそうだな」

(*゚−゚)「違います! 常に弱い人の為に働くと云う事です!
人を助けるのに、お互いの宗教なんて関係ありません!
汝の隣人を愛せよと云う教えに従うだけです!」

ミ,,゚Д゚彡「考え方だけはビックリする程立派だな。
だが教えてやろう。
あの糞モヒカン野郎の言う隣人ってのは、同じ宗派の、肌の白くて自分の言う事だけを素直に聞く間抜けの事だ。
ちなみに、他の神を信じている奴は殺してでも改宗させろってのが教えにあるのを知ってるか?」

(*゚−゚)「もう結構です! 今すぐ車を停めてください!」

ミ,,゚Д゚彡「悪いがそれは出来ない。 俺達の仕事はお前達の安全確保だ。
ここで降りて、糞モヒカン神がどうのとか抜かしてみろ。
左の頬を差し出す前に命と貞操を差し出す事になる。
俺はお前と宗教の事で議論するつもりはない。

ただでさえ暑いのに、これ以上喋って疲れるなんて馬鹿馬鹿しい。
……ちっ、邪魔な」

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:56:16.74 ID:sEdvUMf20
>>134
精神的には大いに必要だと思う
マラソンの声援と一緒

俺も他のことでかかり切りだからろくに支援できんけど、ガンバレ!!!!

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:58:10.51 ID:Wd/NGIk10
一際強くクラクションを鳴らし、アクセルを踏み込んで強引に車を進めた。
最も接近していた数人を軽く跳ねたが、直ぐに脇にどいた。
車はようやく速度を取り戻し、舗装されていない道を進み始めた。

(*゚−゚)「何てことを!
私はここで降ります! あの方達に謝罪して、介抱を……っ!」

ドアに手を伸ばした途端、シィは気を失い、ガラスに顔を押しつけて動かなくなった。
首筋に強烈な空手ショップを喰らわせたのは、助手席に座っていたヒート・O・ワイルドだった。

ノパ听)「悪いな、モナー、レモナ」

茂名輝とレモナ・インハイトは気まずそうに俯いて、ヒートの言葉を聞いていた。

ノパ听)「……想像と違っただろ?
フサさんの言った事は本当だ。
ここで内戦が続いているのは知ってるだろう?
その一端を、宗派の違いが担ってる。

それだけデリケートな問題なんだ、宗教は。
まぁ、女なら直ぐには殺されないだろうけど、最終的には殺される。
それが異教の修道女だって分かれば、ますますここの内戦がややこしくなる。
使命感は持たない方が長生きするって事を、ここで学ぶといい。

本当にシィの事を友達だって思うのなら、止めてやるのも友人の務めだ。
これが、最初にここで君達二人が学ぶ事だ」

モナーとレモナは、何も答えられなかった。


138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/29(木) 23:59:26.98 ID:Wd/NGIk10
* * *

五階建てのホテル・リアドランデは、マーディッシュの街の中でも一番立派な建物だった。
事実上最も新しい建物で最も背が高く頑丈で、この街で外国人が唯一安らげる建物でもあった。
屋上にはヘリポート、高圧電流が走る背の高い鉄条網に囲まれた広い駐車場。
ロビーには観葉植物まであり、安全な水が飲めるように、冷水器が導入されている。

眼の前には市場が広がり、野菜や肉と並んで銃が売られている。
建物内はエアコンも効いており、外の世界と比べると天国のような涼しさだった。
予約してあった十人ともう一人が到着した時、受付の従業員は笑顔で出迎えた。

「いらっしゃいませ」

この国の人間の殆どは肌が黒く、従業員の男もこの国の血が流れているらしく、彫りの深い顔立ちだった。
コーヒー色の肌を持ち、髪は黒くて短く、瞳はブラウンだった。
ホテルで働く上で欠かせないのが外国語の習得であり、その点、この男は完璧に近い発音をしていた。
ギコ・カスケードレンジはあえて現地語を使って、従業員に話しかけた。

(,,゚Д゚)『予約している者だ。
少し予定が変わって十一人になったんだが、大丈夫か?』

『はい、大丈夫でございます。
この国は初めてではないのですか?
発音が素晴らしいですね』

自国の国の言葉を流暢に喋る人間に、いきなり嫌悪感を抱く者はまずいない。
異国で円滑な人間関係を築く事に成功すれば、後に役立つ事が多い。


139 : ◆VnfvP.QFYU :2011/12/30(金) 00:00:41.31 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)『何度か来ているんだ。
すまないな、急に人数が増えて』

白い歯を見せてにこりと笑い、従業員の男は首を横に振った。
現地人と交流を深める最も有効な手段は、現地語を使うことだ。
そして、敬意をもって接する事。

『お気になさらずに。
昼食はお済ですか?』

(,,゚Д゚)『いや、これからだ』

『長旅でお疲れでしょう』

男はギコの後ろ、シャキン・フェザーライトに背負われたシィ・ベンジャミンを見てそう言った。
傍から見れば疲れて寝ている様に見えるが、実は気絶しているだけなのだ。

(,,゚Д゚)『……あぁ、何せ子供だからな。
冷たい飲み物を、後で頼めるか?』

『勿論です。 ビールにしますか? それとも、オレンジジュース?』

(,,゚Д゚)『オレンジジュースを頼む。
色々とありがとう、えっと、名前は……』

『ラヴォレアット・クラーク、ラットで構いません。
友人も家族も、皆私の事をそう呼びます』


140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:02:18.70 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)『分かった。 ありがとう、ラット。
ところで、車は駐車場に停めてあるんだが、盗られたりはしないか?』

乗って来た二台のハンヴィーと大型トラックは、ホテルが持つ駐車場に停めてある。
新しい車を見て、車泥棒が黙っているとは思えなかった。

『それでしたら、大丈夫です。
アウディとメルセデスが停まっていませんでしたか?』

(,,゚Д゚)『そう言えば、停まっていたな。イイ車だ』

『何を隠そう、オーナーである私の車なんです。
駐車場に入ろうとしたらどうなるか、ここの連中は骨身に染みて分かっていますよ。
だから、あれは安全の証明書の様な物です』

(,,゚Д゚)『それなら大丈夫そうだな。
それにしても、オーナー自らお出迎えとは、恐れ入った』

『私の主義でしてね。 現場は自分が動かさなければ気が済まないんです』

(,,゚Д゚)『立派な主義だ』

『昼食はお部屋にお持ちいたします。
お飲み物はその時でもよろしいですか?』

(,,゚Д゚)『そうだな。 そうしてもらおう』

『必要であれば、私の方でお荷物をお預かりいたしますので、その際はお申し付けください』

(,,゚Д゚)『分かった。 その時になったら呼ぶよ』

141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:04:11.95 ID:QWSY1V5Q0
後ろに控えていた面々に目で合図をして、全員がラットの案内で部屋に向かう。
一行は二機のエレベーターに分乗して、五階を目指した。
二機はほぼ同時に到着し、十一人がラットの後ろをぞろぞろと付いて行く。
部屋は二部屋用意されていた。

たった二部屋と少年少女達は思ったが、ラットが面白そうに部屋の扉を開けると、その思いは消え去った。
広々としていて、赤い絨毯が敷かれた部屋は、外の世界からは想像も出来ない程現代的だった。

( ´∀`)「すげぇモナ……」

涼しい風がエアコンから吐き出され、室内は快適な温度を保っている。
シングルサイズのベッドが六つ並び、部屋の片隅にはテレビもあった。
これだけ広い部屋が二つもあれば、確かに足りる。

(,,゚Д゚)「部屋を割り振ろう。
と言っても、モナー。 残念だがお前がハーレムを形成する事は無い。
避妊具を持って来たのなら、水筒代わりに使うか財布にしまっておけ」

(;´∀`)「んなっ?!」

(,,゚Д゚)「そっちの部屋は女が使う。
こっちは男だ。 ジィもそれでいいな?」

爪゚ー゚)「分かりました」

(,,゚Д゚)「ツン、ヒート。
そっちは頼んだ」

ξ゚听)ξ「了解しました」


142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:04:41.12 ID:eYe997RlO
日付変わっちまったか
支援支援

143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:06:05.77 ID:QWSY1V5Q0
ツンが返事をして、ヒートはシャキンから気絶しているシィを受け取って部屋に連れて行った。
扉が閉められ、残った男性陣をラットが案内する。
割り振られた部屋は、女性の部屋の直ぐ隣だった。
内装は女性が使う部屋と全く同じで、違うのは窓から見える景色だけだった。

『それでは、ごゆっくり』

(,,゚Д゚)『あぁ。 ラット、これはお礼だ』

懐から一枚の紙幣を手渡すと、ラットは満面の笑みを浮かべた。

『ありがとうございます。
何かありましたら、何なりとお申し付けください』

(,,゚Д゚)『もし俺達を尋ねて来た人がいたら、ここにはいないと言っておいてくれ。
その後で、電話してくれないか?』

『心得ました』

ラットは恭しく礼をして、その場を後にした。
男全員が部屋に入ってから、ギコは扉を閉めた。

(,,゚Д゚)「さて、と。
後で昼飯が来るから、今の内にしっかりと食べておけ。
モナー」

( ´∀`)「はい」


144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:06:16.76 ID:OZky3QZs0
昨日の刑務所の人?

145 :>>144違います:2011/12/30(金) 00:08:27.70 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「ここでの食事にはルールがある。
何が出て来ても、絶対に残すな。
例えお前の口に合わなくても、米の一粒も残す事は許されない。
ここにいる人の事を想うのなら、尚更だ」

( ´∀`)「分かりましたモナ、ギコさん」

(,,゚Д゚)「よし。 フサ、シャキン。
ご苦労だった。 で、道中、何があって気絶させる事になった?」

ミ,,゚Д゚彡「シィが車外に出ようとしたので、気絶させました」

(,,゚Д゚)「分かった」

荷物をベッドの上に置いて、ギコはそこに腰かけた。
フサとシャキンも同じ様に腰を下ろし、8インチのデザートブーツの紐を解いて、脱いだ靴をベッドの傍らに置いた。
しかし、ギコはブーツを脱がなかった。
奇妙に思ったのか、ジィが不思議そうな眼でギコを見ていた。

(,,゚Д゚)「全員が靴を脱ぐと、いざって時に誰も何も出来ないだろ。
だから最低でも誰か一人は靴を履いておくんだ。
ジィも寛いでおいた方がいい。 明日からが大変なんだ」

爪゚ー゚)「今日はどうされるのですか?
イモジャ様達のご予定ですと、今日から荷物の配布を始めるそうなのですが」

(,,゚Д゚)「それはまず無理だ。
あいつらはまだこの土地を知らな過ぎる。
それに、大分疲れているから今日は休ませるんだ。
明日の午前中で街を見て、午後から荷物を配ればいい」

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:10:31.90 ID:QWSY1V5Q0
爪゚ー゚)「半日で配り切れますか?」

(,,゚Д゚)「一時間も経たない内に無くなる。
数年前まで、ここには赤十字が来ていたんだ。
来ていた時は、赤十字が食料品を配布していた。
女も子供も、皆必死になって食料品を奪い合って家に持ち帰るんだ。

途中で奪われる奴もいた。
勿論、奪い合いの途中で殺される奴もいたよ」

( ´∀`)「……」

ギコの言葉をモナーは信じていない様で、未だ挑戦的な目を向けながら、ギコの話を聞いていた。
彼ぐらいの歳になると、色々と難しいのだろう。
モラトリアムの真っただ中にいるのだから、多少は配慮しておこう。

(,,゚Д゚)「モナー、ここで一番弱いのはどんな人だと思う?」

( ´∀`)「子供ですモナか?」

(,,゚Д゚)「違う。 老人だ。
老人は自分で動けても、耐える事が出来ない。
体力が低下しているからだ。
子供はそう云った老人から奪う。

足を狙えば簡単な事だ。
そうやって生き延びた子供は体力を付け、衰えた人間、弱い人間を狙う。
自然の摂理ってやつだ」


147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:12:36.76 ID:QWSY1V5Q0
(;´∀`)「……ひ、酷い……」

(,,゚Д゚)「そう。 酷いが、これが現実だ。
お前達は明日、そんな中で配布を行う。
いいか、何があっても絶対に連中を刺激するな。
外国人の事を、連中はあまり好意的な目で見ていない」

( ´∀`)「どうしてですモナか?」

(,,゚Д゚)「外国が散々内戦鎮圧を名目に介入して、国を引っかき回して、石油の利権を持ってトンズラこいたからだ。
だからここまで目茶苦茶になったんだ。
指導者もいない、政府もない。
指導者候補が出て来ても、不適切だと判断した外国がそいつを消して、またやり直しだ。

より一層混沌として、それを何度も繰り返してきたんだ」

( ´∀`)「不適切?」

質問が多いのは、彼が興味を示している何よりの証拠だ。
ギコは説明を続けた。

(,,゚Д゚)「内戦が終わったとして、新しい指導者が産まれたとする。
そうした時に、指導者が外国に敵対心を抱いている様な人間が指導者だったら、どうだ?
外国にしてみれば、肥溜に入って汚れて、わざわざ敵を作りだした様なものになる」

( ´∀`)「じゃあ、どんな指導者なら歓迎されるんですモナか?」

(,,゚Д゚)「それは勿論外国に協力的な人間だ。
だけど、そうすると今度は国内が面白くない」


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:14:16.32 ID:QWSY1V5Q0
( ´∀`)「え? だって、国が前よりも良くなるモナよ?
どうして……」

(,,゚Д゚)「例え話をしよう。
お前の家がもっと良くなるからと言われて、ある日突然他人がお前の家をいじくり回したとする。
家のペンキを塗り替え、家中をそいつ好みに改造するんだ。
不要だと判断された物は捨てられ、もう一度買う事は許されない。

自分で内装を変えたり、家具を買い直そうとしたら、そうはさせまいと厳つい人間が力づくで言い聞かせる。
で、そのお礼として、勝手にお前の家にある高級な果樹から実を格安で買い、高額で売る。
それが父親の友人だったとしても、嫌だろう?」

必死に考え込むモナーを見て、ギコは答えを待った。
辛抱強く待った結果、彼は一つの答えを出した。

( ´∀`)「その人にとっていいと思っている事でも、やられる人にとっては良くない事もあるってことモナか?」

(,,゚Д゚)「そうだ。 物事は幾つもの視点を持っている。
一面しか見ないで行動をすると、それはただの迷惑になる。
二面だとまだ足りない。
だから、多面的に捉える必要がある。

お前達のメンバーの中で、モナーが一番まともそうだったから、俺はこうして話しているんだ。
シィの行動を注意してやれ。
あいつが何をしようとしているのか、多面的に見れば分かるはずだ。
友達、なんだろう?」

( ´∀`)「はい……」

(,,゚Д゚)「男らしくしろ!」

149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:16:05.96 ID:QWSY1V5Q0
( ´∀`)「はい!」

威勢の良い返事をしたモナーを見て、フサとシャキンが笑った。

ミ,,゚Д゚彡「いい返事だ、モナー」

(`・ω・´)「えぇ。 昔の俺みたいだ。
返事もいいが、次は行動で示すんだ。
そうすれば、どんな女も子猫になる」

シャキンの冗談に、ジィがくすり、と笑った。
男達は全員で笑い合い、やがてギコが言った。

(,,゚Д゚)「よし。 それじゃあ、向こうの部屋に移るか」

ベッドの脇に置いてあった二枚重ねのテッシュを箱から一枚取って、一枚剥がした。
それを更に小さく千切り、丸めた。

(,,゚Д゚)「先に出ててくれ」

ギコ以外は全員スリッパに履き替え、部屋を出て行った。
最後にギコも出たが、扉を閉める前に先程のテッシュを扉に挟んだ。

(,,゚Д゚)「おまじないさ」

それだけ言って完全に扉を閉めると、オートロックが作動した音が短く鳴った。

* * *


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:18:12.78 ID:QWSY1V5Q0
女性陣の部屋で食べた昼食は、美味い物ではなかったが、決して不味い物でもなかった。
わざわざサマリーにまで来ているのに、フランス料理を食べたいと思う者はいない。
いたとしたら、その者は真正の馬鹿だけだろう。
十一人に出された食事はサマリーの代表料理で、高価な食材が惜しげもなく使われていた。

小麦粉から作ったナン状のパンを主食に、牛肉と野菜を炒めた物。
ニンニクとバターを使った魚のフォイル焼き、そしてオレンジジュースとデザートのフルーツサラダ。
どの食材も痛んでおらず、なお且つこれだけの食事を食べられるのは、良いホテルの証だ。
食事への不満は一言も漏れなかったが、シィ・ベンジャミンの恨みの籠った視線は、食事を楽しんでいるとは言えなかった。

手刀で気絶させられた事に対しての恨みを込めているのだろうが、そんな物でヒート・O・ワイルドは怯まない。
ヒートは涼しげな顔でその視線を受け止め、完全に無視して食事をしていた。
レモナ・インハイトは茂名輝とイモジャ・バーティゴと共に、食事を楽しんでいた。
彼女達にとって、ここの料理は目新しい物ばかりなのだ。

食事をしている中で最も礼儀が出来ていなかったのが、シィなのは言うまでもない。
ところがそのシィは、ヒートを睨みつつも、モナーの食べ方に品が無い事を注意していた。
それが空気を悪くしているのを見かねて、シャキン・フェザーライトが口を出した。

(`・ω・´)「シィ、モナーの食べ方はここではマナー違反ではないんだ。
食事のマナーが国ごとに違うのは、君も知っているだろう?
ジャポネシアでは、パスタ類を啜る事が――僕達には信じられないけど――マナーなんだ。
だから、君が君のマナーを守るのは構わないけど、それを人に強要するのはよくない。

いいかい、ここはサマリーなのを忘れないように」

(*゚−゚)「お言葉ですが、食材に感謝して食べる事はどこでも同じだと思います。
食料が手に入りにくいここでなら、尚更です。
品位を持って食べるべきです」


151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:20:27.28 ID:QWSY1V5Q0
(`・ω・´)「そうだね、シィ。 君の言っている事は正しいよ。
だけど、君はどうなんだい?
食事を楽しんでいないだろう。
それが食材に対して感謝している人の態度なのかい?

モナーは確かに品が無いかもしれないが、食事を楽しんでいる。
君が食べているのは何だ、栄養補助食品かい? 油と炭水化物とビタミンの固まりかい?
人が作ってくれた食事を楽しまないのが、一番悪いマナーだ。
食材やら調理法に文句を言うよりも尚最低な行為だよ」

(*゚−゚)「くっ……!」

どうにも、シィが浮いてしまっている。
原因は彼女の思考にあるのだが、問題は彼女がそれに気付いていない事。
更に、幾ら注意しても直す兆しがない事にあった。
一人だけ先に帰国させた方がいいのではないかと、五人の傭兵は思っていた。

彼女が熱心にこの問題に向き合っているのは分かるが、独り善がりの考えしか出来ていない。
問題が起こるならば、間違いなくこの少女が銃爪になる。
彼女のお守を任されたシャキンは、接し方のプランを練っていた。
数年前に彼が任された任務に、似たような女性が関わっていたのを思い出した。

その女性もまた修道女で、紛争地域に赴いて怪我人の治療と食料の提供をしていた。
紛争が激化して、外国人が危険に晒されるとの事で、帰国命令が下った。
彼が迎えに行くと、教会と仲間を置いて一人だけ帰れるわけがないと帰国を拒絶した。
何度も説得したが彼女の意志は変わらず、仕方なく彼はブラックホークに乗ってその場を撤退した。

後日、協会が襲撃されて修道女が凌辱されて殺されたニュースを聞いて、シャキンは溜息を吐いた。
彼の教訓で言えば、修道女の多くは何かしらの宿命を感じており、それに殉じる事を生甲斐にしている。
フルーツサラダを食べていたツィーナ・D・テルソンは口の中の物を飲み込み、モナーに短い忠告をした。

152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:22:33.47 ID:QWSY1V5Q0
ξ゚听)ξ「モナー、もっと綺麗に食べるんだ。
皿に残ってる。 そのパンを使って、汁の一滴まで残さず食べるんだよ。
この国の人を救いたいなら、飯を粗末にしない事が最初の一歩だ」

言われてみれば確かに、ツンの皿には汚れが無い。
モナーは隣に座っているクー・アケーディアの皿と自分の皿を見比べて、あっ、と声を上げた。

( ´∀`)「す、すみませんモナ」

ξ゚听)ξ「次からは気を付けな」

食事中でさえ、どうしてシィは問題を起こすのだろうか。
何を焦っているのかは分かるが、どうにかして彼女の行動を変えさせる必要がある。
フサ・トロントとギコ・カスケードレンジは、口には出さなかったが同じ結論に至っていた。
全員が食べ終わった頃合いを見計らって、ギコは立ち上がった。

(,,゚Д゚)「よく聞け。 今日はずっとここに待機していてもらう。
各自休んでおけ。
体の調子を戻しておかないと、明日に響く。
予定している配布は、明日の午後から始める」

(*゚−゚)「どうしてですか?」

最早狂犬レベルの節操の無い噛み付き具合に、ギコはもう溜息を隠そうともしなかった。

(,,゚Д゚)「はぁ……
いいか、トラックに積んである物の量なら、一時間未満で無くなるんだ。
だから、焦っても意味は無い。
それなら万全の状態でやったほうがいい。 分かるか?」


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:24:27.96 ID:QWSY1V5Q0
(*゚−゚)「一時間未満と云う根拠は?」

(,,゚Д゚)「赤十字が持って来たあの半分の量の食料品が、十五分足らずで全部無くなったんだ。
分かったか?」

l从・∀・ノ!リ人「せめて、明日の午前から配るのでは駄目なのか?」

(,,゚Д゚)「明日の午前は街の見学、昼はラリってる人間が多いからここで昼休みだ。
少し街の空気に触れて、それから配布を開始した方が効果的だ」

(*゚ー゚)「それは今からでも出来ます」

(,,゚Д゚)「駄目だ。 時差ボケもあるし、初日から張り切って街に出て怪我をされると困る。
飛行機で俺が勝ちとった命令権は、ここで使わせてもらう。
いいか、全員今日はこのホテルで休んでおけ。
明日からが忙しいんだ」

(*゚−゚)「でも、私は賭けに参加していません」

レモナも、クーも、イモジャも、そしてモナーも言葉を失った。

(*゚ー゚)「賭けに参加していないのですから、私は自由に行動する権利があります。
街に出て、皆さんの為に祈らせていただきます。
その方が、直に触れ合えます」


154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:26:19.49 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「警護をするのは俺達の仕事だ。
勝手に出歩くのは許可できない。
何の為にわざわざ目立ちにくい格好をしたのか、まさか察していなかったのか?
なら言ってやる、外国人はここでは金の塊だ。

それに、昼間はここの若者はヤクでラリってハイテンションになってる。
何が起こるか分からない中、勝手に出て行こうとするな」

(*゚ー゚)「ご安心ください。
私は、私の責任で行きます」

(,,゚Д゚)「偉そうな言葉を使っても、お前に責任は取れない」

(*゚ー゚)「怪我をしても、例え天に召されても、私は一切文句を言わないと誓います。
これでも責任ではないと?」

(,,゚Д゚)「残念ながら、それは責任じゃなくて常識と言うんだ。
国際問題に発展する可能性だってあることを、忘れないでもらいたい。
お前が何をされようとも、正直俺は困らない。
困るのはお前の家族と政府だ。

分かったら、部屋で大人しくしているんだ」

食器を重ね、ギコとフサはそれをカートに乗せた。
他の面々も食べ終わった皿を重ねて、カートに乗せる。
ギコとフサの二人は先に部屋を出て、廊下の隅に移動した。

(,,゚Д゚)「どう思う?」


155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:28:21.70 ID:QWSY1V5Q0
ギコの言葉に、フサは諦めたように溜息を吐く。

ミ,,゚Д゚彡「確実に何か行動を起こすでしょう。
あれは、何回か体験しなければ学習しないタイプです」

(,,゚Д゚)「サマリーに来て教師の真似ごとか……
念の為、俺とツンであいつを見張ろう。
その間、他の子供達を頼めるか?」

ミ,,゚Д゚彡「任せてください。
ところで、一つ訊いてもいいですか、隊長」

(,,゚Д゚)「スリーサイズ以外はいいぞ」

ミ,,゚Д゚彡「どうして、ツンなんです?
ヒートでも自分でも、シャキンでもいいと思うのですが」

(,,゚Д゚)「……サマリーで背中を任せた事がある。
二人で行動する時は、あいつと一緒の方が落ち着くんだ。
勿論、フサ達も信頼している。
経験値の差だよ、単純に。

それに、あいつは衛生兵として極めて優秀だったんだ。
お前も命を救われた身。軍医が見捨てても、あいつは見捨てなかった事を覚えているだろう?」

ミ,,゚Д゚彡「納得しました。 てっきり自分は、隊長がツンに……」

言葉の途中で、ジィ・フーリッシュがモナーとシャキンを引き連れて扉から出て来た。
全員が揃い、ギコが部屋の前に行って鍵を開けた。


156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:30:06.45 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「よし」

部屋を出る前に仕掛けた簡易装置は、侵入者が無かった事を示していた。
扉を開けのると同時に落ちたテッシュ片を拾い上げ、ゴミ箱に捨てた。
男性陣が全員部屋に入り、オートロックが作動する。

(,,゚Д゚)「ジィ、お前のグロックを見せてくれるか?」

爪゚ー゚)「はい」

懐から取り出されたグロックの銃把を掴み、その重みから弾が入っている事が分かった。
慎重に取り扱う為に、安全装置が掛かっている事を確認した。
次に弾倉を外し、遊底を引いて薬室の弾を取り出した。
それなりに使い込まれた銃で、良い銃と呼べる一品だった。

(,,゚Д゚)「良い銃だ」

爪゚ー゚)「ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「利き手を見せてもらえるかな?」

爪゚ー゚)「どうぞ」

手相を見る様に、ギコはジィの右手を入念に調べた。

(,,゚Д゚)「最近は撃っていないんだな」

爪゚ー゚)「一週間に一度、レンジに行って撃つぐらいですので」


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:32:07.93 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「今度から一日一回行くといい。
ジィ、恐らく、高い確率で俺とツンはこのホテルを離れる。
その間、フサ達に手を貸して、彼等を見守っていてほしい」

爪゚ー゚)「分かりました」

( ´∀`)「ギコさん達、どうかしたんですモナか?」

(,,゚Д゚)「俺達と云うよりも、シィの件だ。
あの子は必ず外出する。
少し泳がせて、危険な目に逢ってもらう。
そうすれば多少物分かりがよくなる筈だ」

( ´∀`)「でも、友達を危険に晒すのを黙って見ている事は出来ないモナ」

(,,゚Д゚)「良い言葉だ。
だったら、残りの子がホテルから外に出ないようにしてくれると助かる」

( ´∀`)「頑張ってみますモナ」

(,,゚Д゚)「フサ、シャキン。
その時は頼んだぞ」

ミ,,゚Д゚彡「了解しました」

(`・ω・´)「了解です」

銃を組み立て直し、薬室から抜いた一発は弾倉に戻して、その弾倉を銃に戻し、安全装置が掛かっている事を確かめた。
銃口を自分に向け、銃把をジィに向けて渡す。
彼はそれを受け取って、懐にしまった。

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:32:18.07 ID:hSYW+X3R0
支援

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:34:45.78 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「何事もないのが一番いいんだけどな」

* * *

女性だけの部屋には、気まずい空気が流れていた。
気まずいと感じているのはレモナとクー、そしてイモジャで、ヒートとツンは面倒くさいとしか考えていなかった。
原因は言わずもがな、シィである。
窓の外を眺めて何事かを呟き、心ここに在らずと云った状態だった。

学校で思う存分発揮されていた彼女の癖が、ここに来ても現れた事は、レモナ達にとって歓迎すべき事ではなかった。
彼女の信仰心に火がつき、周囲にも飛び火しそうな勢いとなっている。
それが彼女の純粋な善意の行動である事を知っているだけに、友人達は下手に口出しも手出しも出来ない。
友人の行動を否定する事に、彼等は慣れていなかった。

イモジャは自分でも気付かない内に、シィを連れて来た事を密かに後悔していた。

|゚ノ;^∀^)「どうしよぅ……」

沈んだ声でレモナがそう言うと、イモジャが彼女の頭を撫でた。

l从・∀・ノ!リ人「大丈夫じゃ」

そうとしか言えない自分に歯噛みしつつ、イモジャは助けを求める様にクーを見た。
クーは相変わらずの無表情で、ベッドの上に腰かけて文庫本――A.J.クィネルの作品――を読んでいた。

川 ゚ -゚)「……」


160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:36:09.23 ID:QWSY1V5Q0
レモナはトランプでもして場を和ませようかと考えていたが、それは止めておいた。
この状態でトランプで遊んでも、楽しくもなんともないからだ。
どうして、こうなってしまったのだろうか。
彼女は必死に考えたが、良い案は浮かんでこなかった。

入口の近くにヒートが控え、カービンモデルのXM8を手に椅子に座っていた。
レモナ達の傍に座っているツンは、ライフルケースから取り出したドラグノフ狙撃銃を整備していた。
堅牢な木材で作られた深い焦げ茶色の銃床とハンドガードは傷だらけで、金属の部分も同様だった。
ただし、外装は昔のままだが、中身に関しては近代化改修が済んでおり、改造も施されていた。

常に前線で戦ってきたツンにとって、銃の精度は命に繋がる。
銃爪を引けば確実に弾が出ること、そして当たる事。
この二点に重きを置いて、ツンはドラグノフを自らの手で改造していた。
ツンは楽しみながら黙々と作業をこなした。

全ての作業を終えてドラグノフをライフルケースに戻し、次はXM8の点検に取り掛かった。
その時である。
不意にシィが立ち上がり、扉に向かって進み始めたのだ。
彼女の背を見て、ツンは口元に薄らと笑みを浮かべた。

入口に控えていたヒートが、シィに問う。

ノパ听)「なんだい?」

(*゚ー゚)「お手洗いに行きます」

ノパ听)「……そう。 戻ってきたら大人しく寝てるんだ。
いいな?」

(*゚ー゚)「はい」

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:38:11.12 ID:QWSY1V5Q0
胸に提げた十字架を握り、シィは部屋を出て行った。
ヒートが部屋の壁を二回ノックすると、隣の部屋から一回だけノックが返って来た。

|゚ノ ^∀^)「……何なんですか?」

レモナが不安そうに訊いて来たので、ヒートは楽しそうに答えた。

ノパ听)「シィが外に行ったって連絡したのさ」

|゚ノ;^∀^)「と、止めないんですか?」

ノパ听)「あたしらが止めたって、あの子は聞かないだろ?
だったら、現実を見せてやった方がいいと思ってね。
大丈夫、何人かバックアップに入るから。
皆は大人しくここで待っていればいい」

その言葉通り、十秒後にギコが部屋を訪れた。
防弾ベストは身に付けておらず、レッグホルスターにはM84が入っており、そして、リュックを背負っていた。
軽装の理由は言わずもがな、追跡の為である。
タダでさえ目立つのに、更に目立つ格好をする必要はない。

(,,゚Д゚)「ツン、行くぞ」

ξ゚听)ξ「了解しました」

ツンも防弾ベストを外し、予備弾倉とXM8をリュックにしまう。
ヒップホルスターを付け、彼女はリュックを背負って立ち上がった。

(,,゚Д゚)「それと、暇だろうからこいつをやろう」


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:40:06.71 ID:QWSY1V5Q0
そう言ってギコが脇に退くと、モナー達が部屋に入って来た。
一箇所に集める事で、容易に全員を見張る事が出来る。
それに、部屋で大人しくしていろと言って大人しくしているとは思えなかった。
彼なりの配慮だ。

折角外国に来たのだから、せめてこの辺りが妥協点だ。
外に広がっている現実は、今はまだ知らない方がいい。

(,,゚Д゚)「モナー。
レディには優しく接するんだぞ。
ヒート、虐めすぎない様に」

ノパ听)「了解です」

部屋を後にした二人はラットにシィの事を尋ねた。
案の定、彼女はホテルの外に出て行ったと云う。

ξ゚听)ξ「分かりやすいですね」

(,,゚Д゚)「単純馬鹿は扱いが楽でいい」

布で顔を覆い隠した二人はホテルを出て、彼女の行きそうな場所を目指した。
外国人はこの土地では嫌でも目立つ。
そして、直ぐに見つかった。
ホテルの正面で、既に何か説法を始めていたのだ。

予想の中でも、最悪の行動をしている。
国教が違う国で、自分の宗教の教えを説く事の危険性をまるで理解していない。
呆れを通り越し、殺意さえ芽生えて来た。
だがそれを押し殺し、二人は彼女の死角に回り込んで、観察を続けた。

163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:42:19.75 ID:QWSY1V5Q0
数人は彼女の話を聞いていたが、致命的な問題があった。
この国の言語で喋っていないのだ。
あれでは何を喋っているのかも分からないし、質問されても答えようがない。
見事な独り善がりだった。

言葉が通じなくても、彼女の周りには子供が大勢寄って来ていた。
それに気を良くして何か話しかけるが、子供が話を聞いている様子は全く無い。
それはそうだ。
彼等は、彼女の持ち物を何か盗ろうとしているだけなのだ。

めぼしい物が無いと分かると、直ぐに何処かへ走って行った。
主に話を聞いていたのは女性で、好意的な目では無かったが、興味を持っていた。
数分後に、事態が動き始めた。

(,,゚Д゚)「……来たぞ」

荷台に機銃を備えつけたピックアップトラックが、ゆっくりと近付いてきている。
その荷台には、鋭い目つきをした屈強な男が五人乗っていた。
肌の色と色褪せた服から、現地人である事が分かる。
手にはカラシニコフを持ち、車はシィに向かって進んでいた。

車が停車してエンジンを切ると、荷台から男達が次々に降り立った。
頭にバンダナを巻いた男が大声で現地語を叫び、指示を出してゆく。
十中八九、あれがリーダーだ。

『全員捕まえろ! 今は殺すな!
連れて帰る!』

買い物をしていた住民が、蜘蛛の子を散らした様に慌てふためく。
何事かと周囲を見回すシィに、銃を持った男達が近付いて行く。

164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:42:42.89 ID:hSYW+X3R0
しえん

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:44:19.29 ID:QWSY1V5Q0
(*゚−゚)「な、なんですか?」

『お前はイモジャ・バーティゴか?!』

腕を乱暴に掴んで、男は問いただした。
だが言葉が通じていない。
その様子を見ていたリーダー格の男が歩み寄り、シィにも分かる言葉で訊き直した。

「お前、イモジャ・バーティゴか?!
イモジャ、どこにいる?!」

(*゚−゚)「な、何故ですか?」

「必要ない、知る。
お前逆らう、俺お前殴る!
言え! 直ぐに!」

周囲に助けを求めようとするが、誰も手を出さない。
遠目に見ているだけだ。
当人以外、こうなる事は誰にでも予想が出来ていた。

(*゚−゚)「だ、誰か……」

声は蚊が鳴く様にか細く、最後まで言葉は紡がれなかった。
怯えきったその表情には、もう恐怖の色しか浮かんでいなかった。
隠れてその様子を窺っている二人にも気付かず、シィは強引に男に顔を向けられた。

「言え! 早く!」

(*゚−゚)「し、し、知りません」

166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:45:26.56 ID:eYe997RlO
内戦紛争とかって難しいよね
にしても描写が濃いな
大好物なんですけどね!

しえーん

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:46:26.47 ID:QWSY1V5Q0
「嘘を吐くな!」

容赦なく平手打ちされたシィは、恐怖で喋る事さえもままならなくなり、彼女の眼に涙が浮かんだ。

「言え!」

(*;−;)「ひっ!」

やがて、何も喋れないと分かると、リーダー格の男は他の仲間に現地語で命令した。

『こいつだけでも連れて行け。
残りで探してくる!』

命令された男が、シィの腕を掴んだまま引き摺る様にして車に運んで行く。

『来い!』

(*;−;)「い、いや、助け、助けて……」

懇願も虚しく、ひ弱なシィはあっという間に車に押し込まれた。
二人乗りの前部に三人が乗り、運転手の男がエンジンを掛ける。
だが、上手く掛からないらしい。
リーダーと他の三人は、周囲で聞き込みを始めた。

その隙に、二人は物陰から目立たない様に移動を開始した。
さり気無くトラックの荷台に乗り込み、近くにあったぼろ布を被った。
やがてエンジンが始動し、車が動き始めた。
街中を移動している間は行動を起こさず、二人はじっとしていた。


168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:48:09.06 ID:QWSY1V5Q0
車が市街を抜けたのを音で確認してから、布を取った。
二人は同時にM84を抜き放ち、音も無く立ち上がる。
それからの行動は、全て同時に行われた。
呼吸を合わせて左右の扉を突然開き、混乱している男二人を車外に引き摺り落とした。

走行中の車から投げ出された二人は何度も体を地面に打ち付けて転がり、動かなくなった。
運転席にギコが乗り込み、車を急旋回させ、方向を反転させた。
タイヤがけたたましく悲鳴を上げ、横にいたシィも悲鳴を上げる。
ツンは笑っていた。

来た道を戻った車は、地面に横たわる二人の男の前で停車した。
キーを抜いて、二人はシィを車内に放置したまま男達の元に駆け寄った。
足で顔を蹴り飛ばし、生きているかどうかを確認する。
ツンが蹴った方は反応を示したが、ギコの方は何も反応しなかった。

何の反応も示さない男の頭に照準を合わせ、銃爪を引いた。
一度体がビクリと跳ね、それっきりとなった。
生きている方の男の腕をツンが勢いよく踏むと、骨の折れる音と悲鳴が聞こえた。
車外にシィが飛び出し、二人に近付いて来る。

(*゚−゚)「な、何をしているのですか?!」

(,,゚Д゚)「黙ってろ」

(*゚−゚)「暴力では何も解決しません!
どうしてお話を聞こうとしないのですか?!」

微塵も懲りた態度を見せないシィを、ツンが一瞥した。
刃の様に鋭い視線に睨まれ、シィが怯んだ、その一瞬。


169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:50:08.31 ID:QWSY1V5Q0
(*;д;)「……はっ、くっ?!」

ツンの拳が、腹に深々と埋まる。
絞った様な悲鳴を上げ、シィはその場に崩れ落ちた。

(,,゚Д゚)『目的はなんだ?』

その間にも、ギコによって尋問が進められていた。

『し、知らない!
本当だ!』

(,,゚Д゚)『ツン』

折れた腕をツンが更に強く踏み、骨が砕けた。
絶叫を上げる男の頭をギコが蹴り飛ばし、もう一度同じ質問をした。

(,,゚Д゚)『目的は?』

『た、頼まれたんだよ!
イモジャ・バーティゴを連れて来いって』

(,,゚Д゚)『誰に?』

『言ったら殺される!』

(,,゚Д゚)『今ここで言わなければ、お前の首を晒して、お前の家族を切り刻む。
娘がいれば凌辱して殺す。
どっちがいい?』


170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:52:14.12 ID:QWSY1V5Q0
『……本当に知らないんだ。
だけど、リーダーなら何か知ってる筈だ。
何度も電話していたんだ』

(,,゚Д゚)『つまりお前は、イモジャを誘拐して連れて来いと言われたのか。
他の人間の扱いに関しては?』

『こ、殺していいと言われた。
命令はリーダー経由だから……』

(,,゚Д゚)『そうか。 リーダーの名は?』

『ビッドレッド・ディスガンジーだ。
俺達はビーって呼んでいる』

(,,゚Д゚)『よし、分かった』

銃声が一つ鳴り響く。
頭に小さな穴が空き、名も知らぬ男は即死した。

(,,゚Д゚)「ツン、急いで戻った方がいい」

ξ゚听)ξ「迎撃ですか?」

二人は歩きながら話をしていた。
足元に蹲るシィをツンが抱きかかえ、助手席に押し込んだ。
ここに来る時と同じ座席で、車はマーディッシュに再び戻った。

(*゚−゚)「どう、どうして……殺したの……ですか?」


171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:54:13.02 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「必要だからだ。
少しは懲りるかと思ったけど、全然懲りないな。
誰のおかげで今生きているのか、よく考えろ。
お前の大好きな神様じゃない事だけは言える」

普段通りの声だったが、ギコの威圧感はそれ以上の質問を許さない。

(*゚−゚)「……」

それっきりシィは沈黙し、何も余計な事は喋らなかった。
未舗装の道を走り、三人は再び街に戻って来た。
適当な場所で車から降りて、ツンがシィに手を貸した。
二人はいつでもXM8を取り出せるようにリュックを前に抱え、急いでホテルへと向かう。

厄介なのは、ホテルの正面で堂々と布教活動をしていた事だ。
これは十分な足掛かりとなる。
最も、聞き込みをすれば直ぐに分かる事だが。
子供にでも出来る。

(,,゚Д゚)「急ごう」

それだけ言って、三人は人目を避ける様に市場の裏を抜け、ホテルの前にやって来た。
急ぎ足でホテルに駆け込み、ギコは脅威がいないかを素早く確認した。
ラットがロビーでのんびりと新聞を読んでいた。

「おや、お帰りなさい」

(,,゚Д゚)「ラット、何か来なかったか?」


172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:56:07.90 ID:QWSY1V5Q0
「えぇ、来ましたよ。
礼儀の出来ていない連中でしたので、お引き取り願いました。
大丈夫です、このホテルにはいないと言っておきました」

(,,゚Д゚)「ありがとう、助かる」

上の階に行くまでは安心できない。
安全装置はそのままに、エレベーターではなく、非常階段を使って五階に向かった。
慎重に扉を開き、気配を探る。
硝煙の匂いも血の匂いもしない。

静かに扉を閉めて、ギコは一歩一歩、奥の部屋へと進んだ。
時折声が聞こえてくるが、何を喋っているのかまでは把握できない。
何事も無く扉の前にやって来たギコは、二回、ノックをした。
直ぐにヒートの声が帰って来た。

ノパ听)「どちらさん?」

(,,゚Д゚)「俺だ」

扉が内側に向けて開かれ、銃を手に持ったヒートが三人を出迎えた。
三人は直ぐに部屋に入って、鍵とチェーンを掛けた。
ツンは空いているベッドの上にシィを座らせ、ギコの横に戻る。
フサとシャキンも集まり、小さな集会が始まった。

(,,゚Д゚)「何かあったのか?」


173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 00:58:11.76 ID:QWSY1V5Q0
ミ,,゚Д゚彡「外が急に騒がしくなって、銃を持った連中が誰かを探していました。
いずれこっちにも来るだろうと思って、こうしているのですが。
ラットから電話があって、暫く外に出ない方がいいと。
恐らく連中が訪ねて来たのでしょう」

フサは的確に状況を報告した。
誰が指示したのかは分からないが、警護対象は全員窓から離れた位置に集まっている。
窓にはカーテンを引き、外部から部屋を見られない様にしていた。
的確な指示であった。

(,,゚Д゚)「それがいい。
今すぐ帰るべきだ。
それか、明日の朝一番で帰るかの二択だ」

不安そうにイモジャが尋ねる。

l从・∀・ノ!リ人「な、何があったのじゃ?」

(*;−;)「私のせいです……」

シィは、涙声で続ける。

(*;−;)「私が、ギコさん達の忠告に従っていれば……」

(,,゚Д゚)「あぁ、今回は誰がどう見てもお前が100パーセント悪い。
言っておくが、誰もお前に同情はしないし、同意もしない。
それと、謝ろうが懺悔しようが、もうこの状況は変わらないんだ。
本当に反省しているのなら、二度と勝手な真似をするな」

(*;−;)「……」

174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:00:16.22 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「いいか、この国では宗教の事は金輪際口にするなよ。
勿論、神の教えとやらも喋るな、そして実践するな。
次に同じ事をしたら、お前の前歯を折る。
俺はそれぐらい怒っているんだ」

(`・ω・´)「……で、隊長。
何があったんですか?」

場の空気を変える事よりも、まずは状況把握が重要だ。
シャキンの言葉を聞いて、深々と溜息を吐く。
それから、ギコは説明を始めた。

(,,゚Д゚)「シィが誘拐されかけた。
誘拐した連中は、ただの誘拐犯じゃない。
最初はシィを誘拐するのが目的だと思っていたが、そうじゃなかった。
目的は別にあったんだ。

恐らく、情報を聞き出したらシィは殺されていた。
その点では、お前の頑固さが役に立った」

(`・ω・´)「目的? 他に何があるんです?」

(,,゚Д゚)「イモジャ、お前だ」

l从;・∀・ノ!リ人「……え?」

(,,゚Д゚)「連中は誰かに雇われて、お前を誘拐しようとしていた。
俺達はそのついでに殺すつもりだったらしい。
さて、ここまで聞いてまだやりたいとは言わないだろう?」


175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:02:09.89 ID:QWSY1V5Q0
l从・∀・ノ!リ人「……どうして、私が……」

(,,゚Д゚)「少しは思い当たる節があるだろ」

大国の副大統領の娘と云うだけで、その利用価値は高い。
外交としての切り札にもなるし、金を巻き上げるにしても良いカードだ。

(,,゚Д゚)「お前が悪いわけじゃない。
それに、俺達の仕事はお前らを生かして帰国させることだ」

沈黙を守っていたクーが、質問をした。

川 ゚ -゚)「明日の朝出て行くって言ってますけど、大丈夫なんですか?」

(,,゚Д゚)「何かどうにも嫌な予感がするんだ。
連中がどこからこの情報を手に入れたのかはさておいて、俺はこれだけじゃ終わらない気がする。
念の為、向こうに連絡をしておこう」

フサが投げて寄越したイリジウム携帯電話を受け取り、アニジャ・バーティゴ副大統領に電話を掛ける。
だが、電話は通じなかった。
砂嵐の様な音から、ギコはジャミングを受けている事を確信した。
首を横に振っただけで、その事は彼の部下全員に伝わった。

イリジウム携帯電話をジャミング出来る装置が、このサマリーにあるはずがない。
取り寄せて、何処かに設置されているのだ。
そしてその装置は、そう簡単に手に入れる事は出来ない。
主に軍用に作られたそれは、それこそ一国の軍から買うしかない。


176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:04:10.37 ID:QWSY1V5Q0
それだけ高価な機器が使われているという事は、この話は、ギコが想像している以上に深く大きい事になる。
この状況を説明して、果たして、少年達に伝わるだろうか。
人間は想像を絶する危機に見舞われた時、それを信じようとはしない生き物なのだ。
ギコは決断した。

(,,゚Д゚)「……この計画は即刻中止にする。
今晩にでもここを離れて、飛行機で帰る」

|゚ノ ^∀^)「そんなぁ……」

レモナが悲しそうに俯く。

(,,゚Д゚)「今から俺が話す事は、誇張してもいないし、冗談でもない。
だから良く聞いてくれ。
今俺達は、俺達が考えている以上にデカイ何かに巻き込まれている。
長居は良くない」

それからギコは、今の状況について細かく説明した。
ジャミング装置の値段と敵の規模が見合っていない事から、増援が来ると予測できる事。
イモジャさえ確保できれば敵の目的は達成される事から、他の全員が危険に晒される可能性が高い事。
敵の正体と最終目的が分からない事等を説明すると、クーが再び質問してきた。

川 ゚ -゚)「持って来た食べ物とかはどうするんですか?」

(,,゚Д゚)「ラットに後は任せておく。
彼なら上手くやるだろう」


177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:06:26.39 ID:QWSY1V5Q0
今度ばかりは、シィは文句を言わなかった。
事態の深刻さを理解したのか、それともツンのパンチが効いたのかは定かではないが、良い傾向だ。
全員落胆していたが、それに気を遣うよりも、目の前に迫って来ている命の危機の方が重要だ。

(,,゚Д゚)「さて、今の内にもう一つ言っておくことがある。
万が一逸れた場合、二人一組で行動するように。
組み合わせはこっちで決めた」

既に飛行機内で決められていた組み合わせを発表し、次の説明に移る。

(,,゚Д゚)「ジィ。 お前は俺と一緒にイモジャを警護してくれ」

爪゚ー゚)「了解しました」

(,,゚Д゚)「後でラットに言って、適当な武器を売ってもらうといい。
それでは全員、俺が指示を出すまでこのホテルから出ない様に。
窓辺には立たず、一人で行動をするな。
部屋を出るなら、さっき言った人間と一緒に行け。

繰り返すが、今は非常事態だ。
初めての経験になるだろうが、慌てず、俺達の指示に従ってくれ。
っと、そうだ。
これも言っておかないと」

ヒート達は次に言う言葉が分かっていた。
確かに、これは言っておかないといけない。
何も知らない子供達に向かって、ギコは当然の様に言った。

(,,゚Д゚)「俺達は、何があっても誰も置き去りにしない」


178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:08:28.58 ID:QWSY1V5Q0
* * *

銃を手に外国人を探す四人の男達のせいで、市場は混乱していた。
彼等は手当たり次第に外国人の少女を見なかったかどうかを聞き、情報を集めていた。
ビッドレッド・ディスガンジーは、地面に唾を吐き捨てた。

「くそっ!」

ビーが今回の仕事を受けたのは昨夜遅くで、楽な仕事だと聞いていた。
妙な訛りのある言葉で依頼をしてきた男が何者であるかは、分からない。
彼は電話でのやりとりしかしていないのだ。
前金を寄越せと言うと、翌朝に金が届けられた。

そこで彼は手下を引き従え、イモジャがいると言われた市場にやって来たのだ。
説法をする異教徒がまず目に入った。
外国人の少女で、如何にもいい所の育ちをしていた。
その女は何も喋らなかったので、仲間に連れ帰らせた。

イモジャでなければ、仲間内で輪姦して売り飛ばせばいい。
他にも仲間がいると聞いていたので、今こうして探しているのだ。
ところが、得た情報を頼りにホテルに行くと、オーナーはここには外国人はいないと言った。
彼はそのオーナーの恐ろしさを知っていたので、それ以上の質問はせず、ホテルから出て行った。

市場で聞き込みを始めてまだ数分だが、やはりあのホテルに泊っているらしいとの情報しか得られない。
忌々しげにホテルを見た時、彼の脳漿を一発の銃弾が骨片と共に背後に吹き飛ばした。
五分後、彼の仲間は全員同じようにして射殺された。

* * *


179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:11:07.66 ID:QWSY1V5Q0
部屋にはまだ火薬の鼻を突く匂いが漂っていた。
紫煙の様に漂う硝煙を、エアコンの風が掻き消す。
しかし、張りつめた緊張感は微塵も揺るがなかった。

ξ゚听)ξ「……終わりました」

ツィーナ・D・テルソンの言葉で、ようやく部屋の緊張が和らいだ。
ベッドの上に腹這いの状態になっていたツンは、ゆっくりと立ち上がる。
弾倉を取り出し、ツンはドラグノフを下ろした。
コッキングレバーを引いて薬室の弾を取り出す事も忘れない。

銃口からサプレッサーを取り外し、ドラグノフを壁に立てかける。
床に落ちている四つの薬莢を拾い上げ、ツンは目にかかっていた髪を後ろに漉き上げた。

ξ゚听)ξ「シィを追っていた連中は、全員沈黙。
一般人への被害はありません」

(,,゚Д゚)「よし」

ギコ・カスケードレンジは短くそう言って、双眼鏡から目を離した。

(,,゚Д゚)「相変わらず良い腕だ」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます」

男性部屋として使っていた部屋には二人しかいない。
他の人間は皆、女性部屋に集まって夜まで時間を潰すことになっている。
ホテルに戻って来た二人は、状況説明の後、シィを攫った残党の始末を始めた。
残党を始末する事によって、脅威を少しでも減らすと共に、事情を知る人間にある種の警告をする事になる。


180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:13:14.39 ID:QWSY1V5Q0
造作もなく迎撃が出来る戦闘力をこちらが有していると知れば、考えが変わるかもしれない。
それでも挑んでくる可能性は高いが、しないよりはいい。
挑んできた場合、相手は確実に全力で来ると仮定できる。
少なくとも、油断する事は無いだろう。

不利な状況に陥るかもしれないが、相手の行動を狭い範囲に指定できるのだ。
プロらしい行動を起こすと仮定すれば、その裏をかいた罠を張り巡らせる事が可能だ。
素人のでたらめな動き程恐ろしい物は無い。

(,,゚Д゚)「ツンならどうやって来る?」

彼女は丁度、弾倉一杯に弾を込め直している最中だった。

ξ゚听)ξ「下からですね」

上から強襲するとしたら、ヘイロー降下をするか、ヘリを使う他なく、相当な手間がかかる。
とすると、下から来るのが普通だろう。
普通なら、だ。

ξ゚听)ξ「……隊長」

(,,゚Д゚)「なんだ?」

ξ゚听)ξ「これは、個人的な質問なのですが、よろしいですか?」

(,,゚Д゚)「言って見ろ」

最後の一発を弾倉に込めたツンは、ギコの眼を真っ直ぐ見た。
視線だけで気押される事は殆どないと思われたギコが、ここにきて初めて動揺した。


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:15:17.35 ID:QWSY1V5Q0
ξ゚听)ξ「私に構っているのは、どうしてですか?」

(,,゚Д゚)「……」

ξ゚听)ξ「デレ姉さんの事を、まだ気にしているんですか?」

ツンが口にした女性の名を、ギコは一時も忘れた事が無い。
彼女の本名は、デレシア・D・テルソン。
ギコよりも二つ年上だった、ツンの姉だ。
そう。

だった≠フだ。

ξ゚听)ξ「もう八年も経っているんですよ?
それに、あれは事故だったんですから、隊長には何も責任はありません」

―――九年前。
ギコには愛した女性がいた。
変わった女性だったが、美しく、そして優しかった。
出逢ったのは、彼が戦場から帰って来て、久しぶりの休暇を外国で過ごしている時だった。

静かなバーのカウンター席でカクテルを飲んでいると、見知らぬ一人の女性が彼の肩を叩いた。
その女性こそ、デレシア・D・テルソンだったのだ。
最初、ギコは一言も喋る気がなかったが、デレの持つ雰囲気に押され、会話を始めてしまった。
話す内に二人は打ち解け、会話を楽しむようになった。

夜も更け、閉店した後、二人はギコの宿泊するホテルに向かった。
だがギコは手を出さず、ベッドの上で子供の様にスヤスヤと眠るデレを見守りながら、ソファで一夜を過ごした。
翌朝、ベッドで熟睡しているデレを起こさない様にコーヒーを淹れ、一人テレビを見ていた。


182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:17:08.22 ID:QWSY1V5Q0
ζ(゚ー゚*ζ「おはよ〜、ギコ君」

まるで、春の陽だまりの様な笑顔だった。
おっとりとしていて、聞いているだけで心が和む声。
朝陽に輝くふわふわとしたウェーブの金髪と、金色の瞳を、ギコは鮮明に記憶している。

(,,゚Д゚)「お、おはようございます」

ζ(゚ー゚*ζ「昨日は私に手を出さなかったねぇ。
うへへ、やっぱり私の思った通り、ギコ君はいい人だ。
実を言うと私、泊る場所が無くて困っていたんだ」

(,,゚Д゚)「何を基準にいい人と言っているのですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「私は人を見る目があるんだよ」

(,,゚Д゚)「眼科に行かれた方がいいのでは?
ひょっとしたら、自分が貴女を襲っていたかもしれないんですよ」

ζ(゚ー゚*ζ「言うねぇ。
でもね、私には分かるんだ。
ギコ君に、そんな甲斐性はないよ。
君は、年上の人に逆らえないって顔してるもん」

(,,゚Д゚)「……その通りです」

こうして二人は奇妙な出逢いを果たした。
休暇を取った際には、いつもギコはデレと酒を飲み、話し合った。
遠慮なく話し合う二人の距離は瞬く間に縮み、いつしか、親密な関係になっていた。
この時、ギコは自分の感情がどのようなものか、理解できていなかった。

183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:19:05.21 ID:QWSY1V5Q0
当時は滅多に休暇を取る事が無かった為に、ギコは休暇中は常にホテルを利用していた。
だが、デレと出逢ってから、彼は休暇を取る事が増え、安アパートの一室を一括で購入した。
家具も揃え、戦場から帰ったギコは彼女とそのアパートで共に時間を過ごした。
その生活が何の前触れもなく終わったのが、八年前。

列車の脱線事故に巻き込まれ、呆気なくデレの人生は終わりを告げた。
デレを失って初めて、ギコは自分が彼女を愛していた事に気付いた。
それ以来ギコは、喪失感を胸に戦場に駆け巡った。
余計な事を考えずに済む戦場へ、逃げたのだ。

その逃げた先に、ツンがいたのである。
デレと同じ珍しい苗字を持つ彼女に尋ねると、ツンがデレの妹である事が分かった。
偶然にも二人は同じ部隊に所属していて、作戦行動を共にする事が多かった。
素性を知られない様に過ごし、悟られない様にツンを護った。

彼の隠し続けて来た真実は、傭兵を辞める二週間前の作戦終了時、ツンの口から語られた。
ツンはギコの事を傭兵になる前から知っていて、姉と恋人同士であった事までも知っていた。
聞けば、デレは二人の関係を妹であるツンに手紙に書いていたのだと言う。
全て知られていると分かったギコは、心からツンに謝罪した。

自分はデレに何も教えておらず、傭兵をしている事を一切伏せて付き合っていたのだと。
いつか言うつもりだったが、結局、自分はデレを騙して付き合っていた男なのだと説明した。
必要ならばこの場で殺してくれてもいいとまで言ったが、ツンは咎めもせず、怒りもしなかった。
デレはツンの職業について薄々勘付いていたと、ツンは言った。

会う度に体に新しい傷が増えているのを見れば、誰だって疑う。
ましてやそれが銃創や切創であれば、何をしているのかは大体察しが付く。
ギコとデレが出逢った頃から軍に入隊していたツンは、自分の予想を手紙に書いて姉に送った。
軍にギコは所属していないことから、恐らく傭兵かボディーガードの仕事をしているのではないか、と。


184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:21:25.45 ID:QWSY1V5Q0
それでも尚ギコと付き合っていたのだから、何も問題は無いと、ツンは至極当然の様に言った。
その言葉がどれだけ彼を救った事か。
罪悪の年に苦しんで生きて来た八年が、ようやく許されたのだ。
重荷からの解放が背を押し、彼に退職を決意させた。

(,,゚Д゚)「―――どうなんだろうな」

ギコの返答は曖昧で、どこか自嘲気味にも聞こえた。

(,,゚Д゚)「実を言うと、傭兵を辞めて分かったんだが、俺には何もなかったんだ。
楽しみも、趣味も、生甲斐も。
あの日、デレに会わなかったら、俺はどこかの戦場で死んでいた。
いつの間にか、生きてもう一度会いたいと思う様になっていたんだろうよ。

だからこうして生きている。
だけど、デレはもういないんだ。
俺にはデレだけだったんだ。
辞めて初めてその事に気付いて、自分に何もない事が分かった。

まだ何か、俺に残っている事があるんじゃないかと思って、この仕事を受けたんだ」

一つ息を吐いて、ギコは話を続ける。

(,,゚Д゚)「そしたら、ツン、お前がいた。
だったらせめて、この仕事の間はデレの妹を俺が護ろうって決めたんだ。
責任感とか、義務感とかじゃない。
悪いな、上手く説明できなくて」

ξ゚听)ξ「……いいえ、分かります」


185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:23:04.17 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「……そうか。
さて、これで連中にこっちがただの猫じゃない事が分かった筈だ。
ツン、この状況をどう思う?」

ξ゚ー゚)ξ「くふふっ、非常に楽しみです。
何と言っても、こっちはストレスフルな仕事をしているんですから。
精一杯発散させてもらうとしますよ」

(,,゚Д゚)「フサもヒートも、相当苛立ってたからな」

弾込めを終えた弾倉をドラグノフに戻し、ライフルケースにそれをしまった。
ライフルケースを肩にかけて、ツンは言った。

ξ゚听)ξ「残念な事に、早めの帰国になってしまいます。
隊長の探している物がその間に見つかるといいのですが」

(,,゚Д゚)「なぁに。
生きていればその内見つかるさ。
ここに来て思い出したよ。
明日は自分で作る物だってね」

* * *

シャープシェンを乗せた黒塗りのバンは、マーディッシュから五キロ離れた地点にある廃村に停まっていた。
日に日に激化する内戦によって潰された村には、砂に埋もれた人骨が幾つも見受けられる。
この村にも、嘗ては子供がいて、人がいた。
その証に、大人の頭蓋骨と子供の頭蓋骨が、並んで地面に落ちている。


186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:25:07.48 ID:QWSY1V5Q0
生きていた記憶も、証も、全ては砂に埋もれて消えてしまう。
サマリーはそう云う場所なのだ。
今日を生き延びた者だけが、明日を生きる。
恐ろしいまでの自然の摂理に従って、サマリーは廻っている。

人も、動物も。
力のある者が生き延び、弱者は滅びる。
大国が経済力を武器にしたように、この国では暴力が武器になる。
ある意味で廃村は、それを如実に語っている。

力が足りなかった為に、滅ぼされた。
確かに、普通の生活に置いても無力は罪となる。
単純に暴力だけが力と云う訳ではない。
財力も、力の一つだ。

シャープシェンの隊長、スミノフ・ドクオ・ノーマッドはその力が足りなかった為に、妻を失った。
彼の場合、金が足りなかった。
妻の病気は不治の病ではなく、高額な治療費を払えば生き残る可能性≠買えた病だった。
家や車の財産全てを売り払ったとしても8パーセントにも満たない金額に、ドクオはただただ絶望した。

妻は彼にこう言った。

从´ヮ`从ト「私にお金を使うのなら、子供達に使って上げてください」

その言葉の直後、自宅のベッドの上で妻が死んだ。
安らかな死に顔だった。
無力さに泣き、彼はあらゆる意欲を失った。
失われた何かを取り戻す為に、妻の残した孤児院を存続させる為に。

彼は、再び修羅の道に戻った。

187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:27:12.55 ID:QWSY1V5Q0
('A`)「……」

小さく溜息を吐き、ドクオは村だった場所を見回した。
風化した建物の群れは、まるで墓標だ。
ブーツの爪先に感じる、真鍮製の薬莢の存在。
きっと、この辺りの砂を退かせば新たな薬莢や銃弾が見つかる事だろう。

強い日差しの下、ドクオは茜空の向こうからやって来た小さな点を見据えた。
夕陽に重なって見える小さな点は徐々に大きくなり、その独特の羽音が聞こえてくる。
砂を巻き上げて現れたのは、一機の小型ヘリコプターだった。
黒い機体の側面には、白いスズメバチのシルエットが描かれている。

シャープシェンの最大の強みは、その制圧力の高さと素早さだ。
強襲様に特化して改造された、リトルバード。
これが今回の作戦の要だ。
外と内側、そして上からの同時強襲で相手を一気に殲滅する。

相手が例え子供の集まりであったとしても、彼等のやり方は全く変わらない。
スズメバチの一刺しと同じなのだ。
例えヘリの音に気付いても、その時にはもう遅い。
三方向からの同時攻撃を持って、全てが終わる。

「ドクオ隊長、報告があります!」

('A`)「何だ?」

廃屋で通信を担当していた部下が、急ぎ足で駆け寄って来た。
敬礼し返すと、その部下が短く、そして重要な事を告げた。

「蟻からの連絡がありません」

188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:27:25.55 ID:eYe997RlO
見てたいけどごめん眠い
最後のしえーん

189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:29:36.23 ID:hSYW+X3R0
俺に任せろ

190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:30:01.54 ID:QWSY1V5Q0
('A`)「最初から期待していない。
途中で逃げたか、それとも失敗したか。
どちらにせよ、鳥≠フ位置は変わっていない。
作戦は予定通り行う」

「了解いたしました」

妙な胸騒ぎを覚えながらも、ドクオは軽い食事をとる為に廃屋に向かった。

* * *

作戦の説明は思いのほか短くて済んだ。
空が茜色に染まる頃には全員の疑問点を解消し、手順を確認する余裕さえあった。
下準備まで全て終えてから、彼等はホテル・リアドランデの一室で夕食をとる事にした。
早めの夕食は質素だったが、美味かった。

用意された夕食はギコの指示通りで、直ぐに食べられるような物だった。
夕食を届ける際に、頼んでおいた武器と弾薬、そして六着の防弾ベストを受け取った。
サプレッサーとホロサイトを装着したクリンコフ突撃銃は、ジィに渡された。

(,,゚Д゚)「使い方は分かるか?」

ギコの言葉に、防弾ベストを身に付けたジィは頷いた。

爪゚ー゚)「えぇ。 これなら良く知っています。
良い銃です」

(,,゚Д゚)「使う機会が無いといいんだけどな」

( ´∀`)「ギコさん、俺達には武器はないモナ?」

191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:31:29.16 ID:OY2+3M/FP
歯車?

192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:32:04.49 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「モナー、お前は銃を撃った事は無いだろ?」

( ´∀`)「そりゃあ、ないけど……」

l从・∀・ノ!リ人「私、お父様と一緒にクレー射撃をした事があるのじゃ」

(,,゚Д゚)「人を撃つのと物を撃つのじゃ、全然違う。
いざという時に撃てない人間に銃は渡さない。
それに、イモジャだって人殺しを経験したくないだろ?
レモナも、もちろんシィにも、クーにだってそれはさせるつもりはない」

緊張の為か、レモナもシィも無言だった。
この状況で平常心を保つなど、プロでも難しい技だ。
流石のクーも、ポーカーフェイスを保つのがやっとと言ったところだろうか。

(`・ω・´)「まぁ、皆はそこまで心配しなくても平気だ。
俺達が責任を持って護るからさ」

シャキンは場の空気を読む事に関しては天才で、子供達は否が応でも彼の言葉を信じるしかない。

(,,゚Д゚)「一先ず、流れ弾に当たっても怪我をしない様に防弾ベストを着てくれ。
重いかもしれないけど、その分、体を護ってくれる」

指示に従い、黒い防弾ベストを子供達が着る。

ミ,,゚Д゚彡「……いいか、銃声が聞こえても、絶対に叫ぶんじゃないぞ」

ドラムマガジンの備わったXM8を持つフサが、子供達一人一人の目を見て言った。
その眼は真剣そのもので、誰一人として、異論を挟まなかった。


193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:33:47.76 ID:QWSY1V5Q0
ノパ听)「あたし達の作戦が成功すれば、マーディッシュから出る事は出来るんだ。
そうすれば、後はどうにかなる。
兎に角、第一陣を突破するんだ。
その為には全員が一丸となる必要がある、それは分かるだろ?

特にイモジャ、変に気を使ったり遠慮したりはするな。
いつも通りでいい」

l从・∀・ノ!リ人「……はい」

ミ,,゚Д゚彡「お嬢さん、あんた、信用してないのか?」

l从・∀・ノ!リ人「え?」

ミ,,゚Д゚彡「友達なんだろ?
だったら、頼っても問題は無い筈だ。
巻き込まれても文句一つ言っていないんだ、たいしたもんだよ」

ぶっきらぼうなフサの言葉を聞いたイモジャはしばし放心状態になり、驚いたように瞬きを繰り返していた。

(*゚ー゚)「そうですよ、イモジャ。
私達はいつでも貴女の友人です」

( ´∀`)「おう! 頼ってくれモナ、イモジャ」

|゚ノ ^∀^)「そうだよぉ、イモジャちゃん」

川 ゚ -゚)「……悩んでいても仕方無いだろ?」


194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:35:37.41 ID:QWSY1V5Q0
やがて、イモジャは大粒の涙を流して泣き始めた。
その様子を見て、銃を持っている者達はそっと笑んだ。
ギコは腕時計を見て、全員に告げた。

(,,゚Д゚)「さて、そろそろ寝に行く時間だ。
貴重品は身に付けて、靴紐はしっかりと結んでおくんだぞ」

* * *

涼しい夜だった。
星の海に銀色の月が浮かぶ。
聞こえるのは虫の声。
そして、シャープシェンの隊員を乗せた十四台のバンが未舗装の道を走る音だった。

車列を組んでマーディッシュの市街に現れたバンは、ホテル・リアドランデの周囲に静かに停車した。
遠くから、もう一つの音が聞こえてくる。
静穏使用のリトルバードが上空に現れ、ホテル・リアドランデの真上に高度を低く保ったまま滞空した。
リトルバードから六つの人影が屋上に飛び降りたのを確認してから、屋上に着陸した。

黒い目出し帽を被った六人は、市場側にあった手摺にワイヤーを掛け、それを乗り越え、市場を背にした。
腰から特徴的な形をした短機関銃、ビゾンを取り出す。
片手にビゾン、もう片方の手にワイヤーを持ち、その身を虚空に投げ出した。
同時に、地上から榴弾発射機を使ってスタングレネードが二つの部屋に撃ち込まれた。


同時刻。
ホテル内に突入していた四名の男達が、スタングレネードの撃ち込まれた二つの部屋の前に待機していた。
出入り口と非常口は彼等の仲間が既に塞ぎ、猫一匹入り込めない様になっている。
僅か数十秒足らずの内に、彼等はホテルを完全に征圧下に置いていた。


195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:37:38.32 ID:QWSY1V5Q0
窓ガラスを割って部屋の中に撃ち込まれたスタングレネードが、爆音と共に太陽の様に眩い光を放った。
割れたガラスの向こうから、振り子のようにワイヤーを使って、六人が部屋に飛び込む。
部屋の外で待機していた四人は、同時に錠を破壊し、室内に踊り込んだ。
一つの部屋に合計で10人の襲撃者が訪れたが、そこには誰もいなかった。

どこかに隠れていると判断し、襲撃者は無言で部屋のクローゼットやベッドの下を調べた。
だが、何処にもいない。
隠れる余裕も逃げる余裕も与えていない筈なのに、標的もその他の人間もいない。
完全に出鼻を挫かれた彼等は、強襲の優位性を失ってしまった。

仕方なく下に待機している仲間に連絡して、ホテルの中をくまなく探す事となった。
オーナーは危険を察知したのか、既に逃げた後だった。
最低な展開に、シャープシェンの隊長、ドクオは悪態を吐いた。

('A`)「糞が」

バンに残っていた全員が車外に出た、正にその時。
屋上≠ゥら、二つの影がバンの上に落ちて来た。

それは、人だった。
ドクオは、その二人を知っていた。
背筋に冷たい物が走る。

(;'A`)「……っ!」

戦慄した。
その二人は、リトルバードのパイロットだったのだ。
地上にいた誰もが屋上を見上げた。
元々、リトルバードは捕獲した少女を素早く確実に運び出す為に待機させてあった。


196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:39:27.78 ID:QWSY1V5Q0
現に、今でもその羽音が聞こえる。
パイロットがいないのに、ヘリがゆっくりと上昇する。
それが意味するのは、ただ一つの真実。

(;'A`)「奴等、ヘリで逃げる気だ!」

ドクオの叫びを嘲笑う様に、リトルバードは夜空へと舞い上がった。

* * *

相手は必ずこちらの虚を突く為に、上からの強襲を仕掛けてくると、ギコは確信していた。
ヘリコプターを使う事までも、ギコの予測の範囲内だった。
ここまで念入りな計画を立てて来る者が、わざわざサマリーで地上のルートを使うとは思えなかったのだ。
車よりもヘリの方が、安全かつ素早く人質を運び出せる。

加えて、相手の標的はイモジャ一人だけなのだから、ヘリで運ぶ方がずっと効率がいい。
奇襲部隊の一部は、必ず小型のヘリコプターでやってくる。
マーディッシュでの戦闘を経験した傭兵達の意見は、その方向で一致した。
しかし、三方向からの同時強襲を受ければ、流石のギコ達もなす術がない。

直ぐにここから移動するのも一つの手段だったが、それは悪手だ。
現地の荒くれ者に誘拐を依頼できるだけの繋がりが相手にはあり、こちらの行動を把握するのは訳ないだろう。
急いで逃げる事は相手の予想の範疇であり、待ち伏せをされている可能性が非常に高い。
わざわざ相手の喜ぶ事をするなど、愚の骨頂だ。

更に、誘拐にヘリコプターを運用すると言う事は、空港にまだ彼等の仲間がいると云う事が分かる。
イモジャを国外に連れ出すのなら、ヘリではなく飛行機を使う筈だ。
飛行機の離着陸が可能なのは、マースティ空港以外にない。
敵の本陣は、マースティ空港にある。


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:41:14.23 ID:QWSY1V5Q0
ここまでが、相手がヘリコプターを使ってきた場合に浮かび上がってくる敵の状況である。
そこでギコは、相手がヘリコプターを使ってきた事を想定した作戦を立て、その作戦を実行していた。
手荷物は全てラットに預け、屋上に通じる排気口に隠れて時を待った。
奇襲には奇襲で応じる。

ヘリコプターが来て隊員が強襲を開始するのと同時にシャキンとフサがヘリに接近し、二人をナイフで殺害。
搭乗できる人数を確認し、子供達を優先的に乗せた。
パイロット席にフサとイモジャが座った。
ベンチが付けられていたので、そこにシャキンとジィが機銃手として座った。

二人の後ろに残った四人の子供が座り、全部で八人が搭乗した。
屋上に残ったのは、ギコ、ヒート、そしてツンの三人。
三人は二つの死体を屋上から蹴り落とし、宣戦を布告した。
彼らには一つの強みがあった。

夜と云う強みが。
そう。
空高くに舞い上がったリトルバードの外には六人の人影が見えるが、誰がイモジャか判別が出来ない。
つまり、撃たれる心配がなくなるのである。

余程の馬鹿でもない限り、発砲はしない。
空港にヘリコプターが到着して、敵が異常に気付く可能性は高い。
だからこそ、戦闘力の高いフサとシャキンをヘリに乗せた。
狙撃手と機銃手の二人がいれば、長時間耐える事が出来る。

その隙にジィが適当な飛行機を奪取して、一気にサマリーから脱出する算段だった。
作戦は第一段階が無事に終了し、ギコは安堵した。
万が一敵がヘリコプターを使わず、なお且つ上から攻めて来なかった場合、籠城戦を覚悟していたのだ。
最も、その様な手段を選ぶような人間が相手であれば、怪我は免れないが、勝てる自信はあった。


198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:43:12.53 ID:QWSY1V5Q0
相手が優秀だと想定していたからこそ、今回は上手く行っただけ。
もう一つ、相手が優秀だった場合に予測できる事がある。
飛び立ったリトルバードに、必ずしもイモジャが乗っているとは限らないと考え、部下をここに残すと云う選択。
だが、その予測は裏切られた。

(,,゚Д゚)「……何故だ?」

一台のバンも残さず、全ての車両がリトルバードを追い始めたのだ。
もう残っていないと思ったのか、それとも単にイモジャ以外に興味が無いのか。
奇妙な話である。
確信が無い限り、その様な選択は取らない筈だ。

バックライトが遠ざかり、辺りは何事も無かったかのように静けさを取り戻した。

(,,゚Д゚)「……」

そもそもどうして、敵はここにイモジャ達が来る事を知っていたのだろうか。
情報が漏れた可能性はあるのだろう。
だが、こちらの居場所を知っていそうな人間は全員殺した筈だ。
方法は分からないが、敵はこちらの行動を正確に把握している。

考えていても仕方がない。
今は、一刻も早くフサ達に追いつくのが先だ。

(,,゚Д゚)「……行くぞ。
連中の事を、少し見くびってた」

ξ゚听)ξ「何処に行くんですか?」

(,,゚Д゚)「空港だ」

199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:45:09.44 ID:QWSY1V5Q0
三人はホテルを出て、停めてあったハンヴィーに乗り込んだ。
ガソリンは空港まで十分足りる量が残っていた。
運転席に座ったヒートは、直ぐにエンジンを掛けた。

(,,゚Д゚)「ヒート、運転を頼む。
ツン、道案内は出来るな?
例のルートで行くぞ」

ノパ听)「例のルート?
隊長、どんなルートなんです?」

(,,゚Д゚)「最短距離を突っ走る。
ヒートの運転が良ければ、連中に追いつける。
頼りにしてるぞ」

アクセルを強く踏んで、ハンヴィーが走りだした。
市街地を猛スピードで駆け抜け、あっという間にマーディッシュを抜け出す。
ギコとツンが知っているルートとは、嘗てこの国を支配しようとした男が作った、地下トンネルだ。
首都マーディッシュから素早く脱出する為に建造されたトンネルは、五キロほど離れた場所にある廃村にあった。

その廃村に到着した一行は、ツンの指示でとある瓦礫の山の前で停まった。

ノパ听)「瓦礫?」

(,,゚Д゚)「ぱっと見はな」

そこはシャープシェン達が使っていた村だったのだが、そのトンネルの存在には気付いていなかった。
何故ならそのトンネルを作らせた男は、ギコ達の手によって殺されたからだ。
資料も関係者も消され、トンネルだけが残った。
マーディッシュから逃げている途中でツンとギコの二人が偶然見つけなければ、一生使われなかった道だ。

200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:47:16.56 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「ヒート、あの瓦礫に突っ込んでくれ」

ノパ听)「は、はぁ……」

瓦礫の山にハンヴィーをぶつけると、その瓦礫が雪崩のように奥に落ちた。
地下に通じる傾斜した道が現れると、ヒートは目を丸くして驚いた。

ノパ听)「すげぇ……」

(,,゚Д゚)「急ごう」

ライトをハイビームにして、ハンヴィーは暗いトンネルを突き進んだ。
細かな砂が積もっていて、走った後には濛々と砂煙が立っていた。
真っ直ぐに続くトンネルの向こうはなかなか見えてこない。
ヒートはアクセルを限界まで踏み込む。

数分後、遥か彼方に出口が見えて来た。

(,,゚Д゚)「ヒート、ライトを消しておけ」

ライトが消灯され、トンネルが再び真っ暗になる。
ギコはイリジウム携帯電話を使って、シャキンに電話を掛けた。
ワンコールで、シャキンが出た。

(`・ω・´)『隊長、どうしました?』

(,,゚Д゚)「そっちの様子は?」


201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:49:19.53 ID:QWSY1V5Q0
(`・ω・´)『隊長の言った通りでした。
規模は分かりませんが、空港が制圧されています。
今、2000メートルの所で待機しています』

(,,゚Д゚)「気付かれたか?」

(`・ω・´)『恐らくは』

(,,゚Д゚)「こっちの連中が全員総出でそっちに向かってる。
どうしてか分からないが、イモジャがいる場所が分かるらしい」

(`・ω・´)『内通者の可能性は?』

(,,゚Д゚)「可能性があるとしたらジィだけだが、内通者は恐らくいない。
でなければ、わざわざヘリを取られる筈がない」

(`・ω・´)『発信器ですか』

(,,゚Д゚)「それだろうな。
シャキン、発信器は誰かが身に付けている可能性が高い。
チェックしろ」

(`・ω・´)『了解しました』

そこで通話を終え、ギコは正面を見た。
トンネルの出口が、直ぐそこに見えた。
緩やかな斜面を上り、ハンヴィーが物凄い勢いで飛び出した。
平地の上に砂を巻き上げて着地し、再び走り始める。


202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:51:06.33 ID:QWSY1V5Q0
ノパ听)「見えてきました!」

300メートル程先に、車列が見えて来た。
一列になって進む黒塗りのバンは、星明かりと月光によって照らされている。
砂の海を走る船の様で幻想的だったが、これからその光景は一変する。

(,,゚Д゚)「そのまま行け。
ぶっ放してやる」

シートベルトを外して銃座についたギコは、ミニガンを覆い隠していた布を取り払い、銃身を回転させた。
ドリルが廻るかのような音を立てて銃身が回転する。
こちらの接近に気付いたのか、バンは速度を上げた。
スライドドアを開けて発砲してくる者までいたが、弾は防弾ガラスと装甲に阻まれた。

砲塔を動かし、ギコは真ん中のバンに狙いを定めた。
殆ど一つに繋がって聞こえる銃声が、あらゆる静寂を嘲笑った。
銃火が吹き出し、想像を絶する勢いで銃弾が放たれる。
曳光弾の軌跡は、バンに吸い込まれた。

引き千切られた人体の一部諸々を落して、バンが爆発した。
後続のバンがハンドルを切って残骸を避ける。
更に砲塔を動かし、凪ぎ払う様にしてバンの群れを破壊して行った。
バンが残り三台になった時、弾が切れた。

発射速度が速い分、弾切れも早い。
とは言え、十一台もバンを破壊出来たのだから、上出来だ。
三台のバンは、横一列に隊列を組み直した。
ハンヴィーは距離を縮め、右端のバンの斜め後ろに、ぴったりと付いた。


203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:52:50.24 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「ツン、俺の銃を!」

片手でXM8を受け取り、ギコは肩付けに構え、光学サイトを覗きこんだ。
バンの後部扉が上に開く。
三人の男が、銃を構えていた。
撃たれるより早く、ギコは五発の銃弾で男達を撃ち殺した。

(,,゚Д゚)「ヒート、離れろ!」

ハンヴィーが横にずれ、運転席が射線に入る。
ギコは運転手に向かって数発撃ち込んだ。
バンはコマの様に回って、クラクションを鳴らしながら停車した。
それを避け、ヒートは真ん中にいたバンにハンヴィーを並べ、速度を合わせた。

銃身下のグレネードランチャーを構え、ギコは狙いを慎重に定める。
撃たせまいと、ルーフから男が現れ、ギコに向けて撃ってきた。
咄嗟に頭を引っ込め、銃だけを車外に出して片手に持ち替えてフルオートで牽制射撃を行った。
全弾撃ち尽くしたXM8を戻し、弾倉を取り換える。

(,,゚Д゚)「ヒート、空港まで後どれぐらいだ?」

ノパ听)「目と鼻の先です!」

(,,゚Д゚)「ちぃっ!」

再び車外に体を出し、ギコはルーフの男を狙い撃った。
ずるずると車内に死体が落ちたのを見届け、今度こそ、グレネードランチャーを構える。
狙いが定まり、ギコは銃爪を引いた。
ポン、と音を立てて榴弾が弧を描いて飛ぶ。


204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:53:54.57 ID:hSYW+X3R0
しえ

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:54:13.50 ID:QWSY1V5Q0
だが、相手の運転手は見事な決断を下した。
急ブレーキを掛け、榴弾を回避したのだ。
回避した榴弾は、その奥に控えていたバンのタイヤを直撃し、爆散させた。
仕留め損なった最後の一台が、遥か後方に遠ざかる。

(,,゚Д゚)「……くそ、一台仕留め損なった!」

ノパ听)「隊長、中に入ってください!」

言われるのよりも、ギコが車内に入る方が早かった。
彼の眼には、迫ってくる空港を囲うフェンスが映っていたのだ。
大きな衝撃が車全体を襲う。
フェンスを薙ぎ倒して空港内に侵入したハンヴィーは、そのまま滑走路を横断し始める。

ノパ听)「隊長、この後は?!」

(,,゚Д゚)「格納庫に向かえ! あそこに飛行機があるはずだ!
一戦交えるだろうが、ヒート、恐いか?!」

ノパ听)「いいえ、楽しみです、隊長!」

(,,゚Д゚)「よし、良く言った!」

ハンヴィーが格納庫に向かう間、ギコはもう一度シャキンに電話を掛けた。

(,,゚Д゚)「見つかったか?」

(`・ω・´)『えぇ、ありました。
小型の高性能発信器です』


206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:54:37.75 ID:WYPKRGdl0
無駄に長いけどつまらない作品の典型みたいなスレだな

207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:56:36.18 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「どこにあった」

(`・ω・´)『シィの持っていた十字架です。
どうやら、学校の教師にもらったそうですが』

(,,゚Д゚)「壊したのか?」

(`・ω・´)『いいえ、まだ機能しているみたいです』

(,,゚Д゚)「今から俺達は空港を襲う。
それまでの間に、その糞忌々しい十字架を遠くに捨てに行くんだ。
いいな?」

(`・ω・´)『分かりました』

(,,゚Д゚)「子供達はどうだ?」

(`・ω・´)『怯えています』

(,,゚Д゚)「良い兆候だ。 シャキン、狙撃手に気をつけろ。
それと、窓辺の連中を狙えるか?」

(`・ω・´)『はい、高度を下げれば狙えます』

(,,゚Д゚)「捨ててきたら、援護を頼む。
済まないが、まだ一台バンが生き残っている。
恐らく、連中の指揮官が乗ってる」

(`・ω・´)『了解しました』


208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:58:22.74 ID:QWSY1V5Q0
三人を乗せたハンヴィーが、シャッターが完全に下りた格納庫前で急停車した。
タイヤを軋ませ、車体は半円を描く。
それと同時に、三つのドアが開き、三人は車外に飛び出した。
一目散に格納庫内に通じる扉へと向かい、ヒートが扉の蝶番をマスターキーで破壊して蹴り破った。

ヒートが罠が無い事を確認してから、三人は素早く格納庫内に侵入した。
制圧はしていても、籠城をする訳ではない。
わざわざ罠を仕掛ける必要が無いと判断していたのだろう。
しかし恐らくは、赤外線センサーの警報機が作動している筈だ。

格納庫内は電気がついていて、闇に慣れた眼には少し強く感じる。

ノパ听)「……でけぇ」

そこに格納されていた輸送機を見たヒートの第一声は、それだった。
あまりにも巨大な機影に圧倒されたが、それは一瞬の事。

(,,゚Д゚)「これを飛ばすのは、的を飛ばすようなもんだな。
ウチの飛行機は?」

ノパ听)「隣の格納庫だと思います。
断言はできませんが」

(,,゚Д゚)「まいったな」
 
ξ゚听)ξ「どうします?」


209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:58:40.95 ID:OY2+3M/FP
冒頭の方に、これがどういう話でどんな事が起きていくのかとか書いたりしたら?
お前の小説って猛烈に語り続けるばかりで一体何人が付いていけてんのか分からんわ
つかみって言ったら下品だけどさ


一般的な小説でも文章量がとんでもなく多いものもあるけど、
そういうのをわざわざ手にとって読む奴ってのは大体表紙とか帯とかからおおよその展開を予め知ってるもんだろ

210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 01:59:20.42 ID:FDagK9vzO
支援

211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:00:47.06 ID:QWSY1V5Q0
選択肢は二つあった。
一つは、隣の格納庫にあるかもしれない飛行機を取りに行く。
これはあくまでも可能性があるだけなので、敵がこちらの飛行機をどこかに移動させていないとも限らない。
もう一つの選択肢は、目の前にある巨大な飛行機を利用する事だった。

ジィがこれを動かせるかは不明だが、一番の問題はその巨大さだ。
離陸する前に敵に取りつかれると厄介な事になる。
こちらの人間が全員乗り込むまで、律儀に敵が待ってくれるとは思えない。
乗りこまれでもしたら、飛行機の中で撃ち合いに発展しかねない。

そこで、そのリスクを無くすために、敵を全滅させる必要があった。
どちらにしても危険が伴う。

(,,゚Д゚)「……ツン、ヒート。
二人はシャキン達の援護に回ってくれ。
その間に、俺はロビーの方に行って来る」

ノパ听)「ランボーは嫌いだと思っていたのですが?」

(,,゚Д゚)「いいや、ヒート。 俺は彼が嫌いだよ。
だから、シャキン達が無事に乗れるまでの間、俺が連中を足止めする。
全員乗った頃に、俺がそっちに行く。
それでどうだ?」

ノパ听)「陽動なら人数は多い方がいいのでは?」

(,,゚Д゚)「こっちの正確な人数を向こうは把握していない。
それに、ちょっとした仕掛けもしてある」


212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:02:18.85 ID:QWSY1V5Q0
ノパ听)「仕掛け、ですか」

(,,゚Д゚)「連中は発信器を頼りにイモジャ達を追っていた。
俺はシャキンに、その発信器を適当な場所に捨てさせに行ったんだ。
そうすると、奴等はちょっとした誤解をする」

ノパ听)「子供達だけを何処かに逃がした、と」

敵は発信器によってシィの位置を知る事が出来ていた。
学友のシィとイモジャが別々の行動を起こす事は、まず有り得ない。
何より同性と云う事もあって、常に近くに居る可能性の方が高い。
つまり、シィはイモジャの位置を伝える為の松明の様な役割を果たしていたのだ。

直接イモジャに発信器を渡さなかったのは、その隙が無かったのだろう。
だからこそ間接的な手段に出たと、ギコは推測した。
その間接的な手段を逆手に取る。

(,,゚Д゚)「そう。 そうすれば、連中は俺達全員が足止めしていると勘違いをしてくれる。
その隙に、俺達はこのデカイ奴を飛ばすって訳だ」

敵の関心がほぼ100パーセント、イモジャに注がれているのは、最早疑いようのない事実だ。
ホテルに誰も突入させず、発信器を全力で追いかけた彼らなら、無駄な事はしないと信じている。
こうして決まった作戦を、シャキンに連絡した。
山岳地帯の手前に発信器を捨てて来たと、シャキンが報告した。

これで、連中は子供達が山を越えて海を目指している物だと勘違いする。
駄目押しに、ギコ達が足止めを演じれば、舞台は整う。
合図をするまで高度を高く保って待機して、可能であれば援護するよう、ギコは指示した。
大まかな流れとして、ギコが空港を占拠している人間の注意を引きつけ、その間にリトルバードが降下。


213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:04:10.23 ID:QWSY1V5Q0
格納庫の近くに着陸し、直ぐに輸送機を奪取する。
飛ばせる準備が整い次第滑走路を走らせ、頃合いを見てギコが合流する。
どれだけ長く敵を引きつけられるかが、全ての鍵だ。
時間を稼げば稼ぐほど、ヒート達の負担が減る。

(,,゚Д゚)「よし、行くぞ」

* * *

手元にある電子端末に表示されている反応を見て、スミノフ・ドクオ・ノーマッドは残忍な笑みを浮かべた。
部下が殺され、あわや自分まで殺されそうになった事など、もうどうでもよかった。
これが屈辱でなく、何だと云うのだろう。
一方的な殺しが彼等の誇りだったのに、その誇りを踏みにじられた。

久しぶりに骨のある獲物だった。
スズメバチの巣に向けて石を投げて、まんまと生き延びられた。
これは敬意を表するに値する相手だ。
長らく現れなかった好敵手の出現に、ドクオは怒りを越えて感謝した。

発信器の反応は山岳地帯で止まっている。
つまり、子供達だけを先に逃がすか、もしくは避難させたと考えられる。
停車したバンの中で、空港に待機しているシャープシェンに連絡を入れる。

('A`)「同志クックル。
そちらに複数の敵が向かった。
迎撃しろ。 試す様な事はするな」

( ゚∋゚)『了解いたしました』


214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:06:11.06 ID:QWSY1V5Q0
('A`)「それと、供物を処分しておけ。
部下全員で侵入者を撃滅するまで、そこから離れるな。
決して油断しない様に」

( ゚∋゚)『手強いのですか?』

受話器の向こうから聞こえるクックルの声は、明らかに期待に満ちていた。

('A`)「相当出来るぞ」

( ゚∋゚)『人数は分かりますか?』

('A`)「二人以上いる。
上空からヘリが来るだろうが、武装ヘリではない。
我々のリトルバードを奪われた」

( ゚∋゚)『……心して掛かります』

通話を終え、ドクオは溜息を吐いた。
まさか、こんな国のこんな場所で出逢えるとは。
軍に所属していた時に渇望していた欲望が、再び燃え上がった。
尊敬を持って殺し得る、好敵手の出現を望んでいた。

不完全燃焼のまま退役した彼にとって、それだけが、死ぬ前の唯一の心残りだったと言える。
妻の経営していた孤児院は、別に彼が運営を引き継がなくてもいい。
運営はそれを得意とする人間に任せれば、妻の意志は残り続ける。
だが、これだけは彼の手でやらなければならない。



215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:08:09.23 ID:QWSY1V5Q0
知力と力を総動員して、全力で殺し合える敵。
狩人が猛獣を銃で仕留めて自慢するのに、少しだけ似ている。
勲章を手に入れたいと云う、自己顕示欲だ。

('A`)「私を空港で降ろして、お前達は山岳地帯に向かえ」

運転手にそう告げると、バンは急発進した。

* * *

最初の犠牲者となった男は、投擲されたナイフが額に深々と突き立って殺された。
先程入った上官からの指示で、男は空港内部に通じる従業員用の出入り口の警備を一人で任されていた。
全部で三十人の人員しかいない為、最低限の人員しか配備できなかったのだ。
扉の前で一撃で殺した男の死体をどかして、ギコ・カスケードレンジは死体からビゾンを奪い取った。

(,,゚Д゚)「さて、ショータイムだ」

扉を少しだけ開けると、そこには暗い廊下が続いていた。
その先の床の位置に、ほっそりとした光が見える。
あれがロビーに続いている扉なのだろう。
ギコは一気に廊下を走った。

扉の向こうに、一階ロビーが広がっている。
そこはもう、敵の縄張りだ。
構えたビゾンの安全装置を確認し、コッキングレバーを軽く引いて薬室に弾がある事を確認した。
ゆっくりと、扉の前で深呼吸をする。


216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:10:11.79 ID:QWSY1V5Q0
ドアノブを軽く握って、そっと押し開く。
隙間から向こう側を窺う。
出てすぐ両脇はエスカレーターと階段の壁がある。
谷の様な一本道の先に、二人、武装した敵がいた。

二人のいる位置は、左右にあるエスカレーターと階段の正面。
空港の正面入り口の両脇に立っていて、背後はガラス張りだった。
見える限りで、太い柱が三本。
エスカレーターと階段の向かい側、ガラスから数メートル離れた場所に二本と、その間に一本。

登るにしても降りるにしても、まずは柱の横にいる二人を殺さない事には始まらない。
覚悟を決め、ギコは息を深く吐き出し、扉を一気に開け放って踊りこんだ。
その音に一瞬だけ驚いた敵は、次の瞬間には腰だめにビゾンを撃ってくる。
彼らよりも少しだけ早く銃爪を引いていたギコは、右に居た男を撃った。

男は、天井に向けて銃を撃ちながら死んだ。
残る一人が撃ってきた銃弾から逃れる為、ギコはその場に伏せ、冷静に急所を狙って撃つ。
敵が外した弾丸が目の前の床を砕き、ギコの放った銃弾は男の喉と顔を穿った。

(;;・∀・;;)「来たぞ!」

声は上から聞こえて来た。
急いで立ち上がって真上を仰ぎ見ると、一人の男が真上からギコを狙っている。
片手に持ち替えたビゾンで牽制射撃加えると、男は顔を引っ込めた。
ただ、向こうも銃だけはこちらに向けて撃ってきている。

銃口を後ろに向けたまま視線を正面に戻し、ギコは三本の内真ん中の柱を遮蔽物に選んだ。
躊躇うことなくギコはその影に飛び込んだ。
弾切れになったビゾンを捨て、袈裟掛けにしていたXM8を構える。
背にした柱に、次々と銃弾が撃ち込まれる。

217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:11:53.80 ID:hSYW+X3R0
戦争は変わった

218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:12:11.14 ID:QWSY1V5Q0
足元の硬い床が耕され、銃声の数が増える。
姿勢を低く、膝立ちで柱から体を出して、ギコは素早く狙いを定めた。
光学サイトの向こうでグレネードのピンを抜いた男の手を狙い、撃った。
手首から先を失った男の手から、グレネードが落ち、爆発した。

射撃が止む。
銃口を横にずらして、新たな男に狙いを定め、銃爪を引く。
サイトの向こうで、男の頭が半分消し飛んだ。
再び体を柱の後ろに戻すと、雨のように銃弾が襲ってくる。

正面にあるガラスが砕け、生ぬるい風が入り込む。
視線を右に向けると、そこにあるガラスに、接近してくる敵の姿が反射されていた。
数は一人。

(;,,゚Д゚)「くっ!」

急いで体をそちら側に向け、狙い撃つ。
悲鳴を上げて、敵が倒れ伏した。
しかし、ギコの左肩を一発の銃弾が掠めた。
幸い、犠牲になったのは服だけだった。

すると、柱の向こうに何か固い物が落ちて転がる音が聞こえた。
あの男が注意を惹く為の囮だったのだと気付くと同時に、ギコは伏せた。
だが、予測していた手榴弾ではなく、黄色い煙を吐き出すスモークグレネードだった。
煙は勢いよく噴き出し、瞬く間にギコの視界を奪う。

咄嗟に左手で口と鼻を押さえ、XM8を片手で構えなおす。
ギコは牽制を加えながら、右手側に向かって走りだした。
後を追う様にして銃弾の群れが飛んでくる。
間一髪、煙幕から抜け出し、ギコは新たな柱の影に隠れる事が出来た。

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:14:07.92 ID:QWSY1V5Q0
ぱっと見た限り、二階ロビーには十人以上が待ち構えている。
空になった弾倉を交換し、グレネードランチャーを構えた。
再び息を一度だけ吐き出し、柱から飛び出す。
素早く狙いを定めて、最も人が密集している地点に撃ち込んだ。

体を直ぐに柱の影に隠すと、後ろから爆音と共に複数の悲鳴が聞こえて来た。
たった今彼が放ったのは、焼夷弾だったのである。
炎に身を包まれて転げまわる姿が、容易に想像出来た。
榴弾を装填し直して、今度は別の場所に向けて撃ち込む。

新たな悲鳴が上がる。
徐々に距離を詰めて来ている者達が出てくると仮定して、ギコは新たな移動場所を探し始めた。
見つからない。
正面突破以外の道はなかったが、展開としては理想的だ。

最高と言ってもいい。
こうしている間にも順調にこちらは駒を進められる。
しかし、置かれた状況は最悪だった。
身動きが取れない。

上と下の位置関係、更に人数の差。
想像していたが、案外辛い。
辛い筈なのに。
どうしても、笑いが止まらない。

生きている事を実感できる。
やはり、戦いの中でこそ始めて何かを探せるのだ。
大切な物も、嫌いな物も。
余計な事を考えずに、ただ一つの答えだけを導かせてくれる。


220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:16:05.75 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「ありがとうよ」

ぼそりと、ギコは呟いた。
弾倉をいったん取り外し、新たな弾倉と連結させる。
ジャングルスタイルと呼ばれるこの方法は、素早い弾倉の交換を可能にする。
姿勢を低くして、ギコは一気に駆け出した。

向かうは正面。
銃弾の雨をもろともせず、ギコは射手を確実に、そして素早く撃ち殺した。
一発の弾丸が耳を掠め、もう一発の弾がわき腹を直撃したが、これは防弾ベストが防いだ。
右の階段にいた三人を殺して、ギコは階段を上り切った。

左の階段でギコを狙っていた男達が、弾幕を張りながら接近してくる。
死体を楯にして、応戦した。
防弾ベストを着ている死体は、楯として非常に優秀だった。
ギコの代わりに銃弾を受け、死体は奇妙なダンスを踊る。

迫っていた敵を全員殺し終え、弾倉を交換。
周囲に静寂が戻ってきた。

(,,゚Д゚)「……」

どこからか、狙われている気がする。
その時、イリジウム携帯電話が着信を告げた。
右手でXM8を持ち、左手で電話に出た。

(,,゚Д゚)「どうだ」



221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:17:50.10 ID:FDagK9vzO
支援。頑張れ作者

222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:17:54.55 ID:OY2+3M/FP
そっくり^^;

223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:18:17.24 ID:QWSY1V5Q0
ξ゚听)ξ『準備完了しました。
ジィはこれを飛ばせるそうです。
そちらはどうですか?』

(,,゚Д゚)「一応片付いたと思うが、まだいそうだ。
そっちは?」

ξ゚听)ξ『問題はありません。
十人程来ましたが、全員始末しました』

(,,゚Д゚)「よし、それじゃあ今から―――」

それは、本能的な行動だった。
戦いの中で磨かれた本能は、意志や思考を超越して、体を動かした。
ほんの一瞬でも屈むのが遅れていれば、ギコの首は宙に舞っていただろう。
頭上を、胸の悪くなる不気味な音を立てて何かが通過した。

次の行動もまた、本能に根付いた物だった。
深く屈むのと同時に、強烈な後ろ蹴りを放つ。
硬い感触と、何かを蹴り飛ばす感触が同時に足裏に感じられた。
姿勢を立て直し、電話をしまいつつ振り返る。

そこには、一人の大柄な男がいた。
顔中傷だらけの男は太い両腕を胸の前で交差させ、サディスティックな笑みを浮かべてギコを睨みつけている。

( ゚∋゚)「……やるな」

(,,゚Д゚)「電話中は静かにって教わらなかったのか」


224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:19:22.80 ID:lVMOFjqi0
ごわすさん!

225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:20:11.48 ID:QWSY1V5Q0
男の手には、小振りのナイフがあった。
ギコの首を背後から狙ったのは、あの得物だ。

( ゚∋゚)「銃なんか捨てて、ナイフで勝負しないか?」

(,,゚Д゚)「断る」

( ゚∋゚)「ならば今死ね!」

男はその体躯の割に動きが俊敏で、地を這う様にギコに接近してきた。
当然、ギコはXM8で男を狙い撃つが弾は当たらず、男の足元を空しく抉るだけだ。

( ゚∋゚)「じゃっ!!」

バックステップで距離を取ったギコの眼前を、ナイフが通り過ぎる。

(,,゚Д゚)「ぬっ!!」

今の一撃。
男の狙いは、ギコでは無かった。
XM8だ。
銃身から切り分けられたXM8を捨て、ギコはM84をホルスターから抜き放つ。

( ゚∋゚)「しゃっ!!」


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:22:46.28 ID:QWSY1V5Q0
疾風の様な速度で、男が斬撃を繰り出す。
鞭の様なしなやかさで繰り出されるナイフは、一瞬でも油断すれば直ぐにでも体を切り刻む。
避けながらM84を撃とうにも、距離が近すぎた。
ナイフに気を取られ、ギコは男が不意打ち的に放った蹴りを回避できなかった。

太股に当てられた攻撃に、思わず体勢が崩れる。
頭上からナイフが振り下ろされ、ギコはM84のハンドガードでそれを受け流した。

(,,゚Д゚)「せぁっ!!」

男の股間を、ギコは思い切り蹴り上げた。
   。 。
  / /
(; ∋ )「……っ?!」

睾丸が潰れ、男は悶絶して倒れた。
痛みは想像できるが、同情はしなかった。
M84の銃口を向けられ、男は荒い息で言った。

(;゚∋゚)「た、頼む……
娘が、娘がいるんだ……!」

(,,゚Д゚)「どっちにしても、弟妹は今後出来ないな」

ナイフの先端をギコに向け、男はもう一度言う。

(;゚∋゚)「娘が……!」


227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:24:15.57 ID:QWSY1V5Q0
銃声の後、男は何も喋らなくなった。
今後も何も喋らない。
しかし。

(;,,゚Д゚)「……っくそ、野郎!」

腹に深々と刺さったナイフを見て、ギコは男の顔に唾を吐いた。
男の持っていたナイフは、ただのナイフでは無かった。
内蔵された強力なスプリングによって刀身が射出可能な、スペツナヅナイフ。
射出された刀身は防弾ベストを貫通し、右脇腹に突き刺さっていた。

致命傷ではないが、息をする度に激痛が走る。
ナイフを引き抜いて、地面に投げ捨てる。
その場に座り込んで、ギコは常時携帯している白い三角巾を傷口に押し当て、止血した。
腹を押さえながら、ギコは滑走路に向かった。

大型の輸送機が、今まさに倉庫から出て来た。
痛みを我慢して、ギコは走った。
腹がズキズキと痛む。
押さえている三角巾が、血で濡れているのが分かる。

絞れば垂れてくるぐらいに、血が出ている。
意外と深い傷だったのか。
巨大な影が近付き、輸送機の後部ハッチが開いている事に気付いた。
フサが、そこで手を振ってギコを呼んでいる。

ミ,,゚Д゚彡「隊長!」

―――いや。
違う。

228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:25:16.11 ID:d6oV4aFti
頑張れー

229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:26:06.18 ID:QWSY1V5Q0
ミ;,,゚Д゚彡「急いでください!」

遠方から、一台のバンが物凄い速度で迫って来ている。
急がなければと、ギコは走るスピードを上げた。
残りは、たったの十メートル。
これ以上、ギコは速く走れなかった。

既に息は上がり、痛みが邪魔をした。
ギコの異常に気付いたフサは、大声で叫んだ。

ミ,,゚Д゚彡「シャキン!!」

奥から走って来たシャキンがギコを見て、状況を把握した。
肩に掛けていたM14を構え、ギコの後ろに迫っていたバンを狙う。
一定の間隔で、弾倉全てを撃ち尽くした。
運転席に座っていた男の顔は無くなり、バンは速度を落とし、やがて停車した。

ミ,,゚Д゚彡「ジィ! 速度を落とせ!」

輸送機は僅かに速度を落とし、ギコの直ぐ目の前までステップが迫る。
フサとシャキンが手を伸ばす。
ギコも手を伸ばす。
伸ばされたギコの手を。

ミ;,,゚Д゚彡「後少しだ、隊長!」

二人が。

(;,,゚Д゚)「うおおおお!!」


230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:26:46.70 ID:hSYW+X3R0
A・J・クィネルなどを愛読してそうだな

231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:27:26.93 ID:twANos/TI
>>230
クーが読んでたな

232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:28:06.52 ID:QWSY1V5Q0
掴んだ!

ミ,,゚Д゚彡「ヒート、ツン! 隊長が負傷してる!」

機内に運び込まれたギコは、直ぐに奥の部屋に連れて行かれた。
後部ハッチが重い音を立てて閉まり、輸送機は加速した。
二人掛かりでベッドの上に寝かせ、防弾ベストを脱がせる。
赤黒く変色した三角巾を退かすと、傷口が露わになった。

息を切らせて、機内に置かれていた救急箱を手にツンが部屋に到着して、傷を見た。
青ざめていた顔が安堵の色に包まれたのを見て、ギコも安堵した。

ξ゚听)ξ「……よかった、そこまで深くないですよ、隊長」

(;,,゚Д゚)「知ってるよ」

機体が傾き、巨大な輸送機は離陸した。
ギコがベッドから落ちないよう、ツンとフサが押さえつける。
シャキンは手近な手摺に掴まって、やり過ごした。
ゆっくりと機体が水平になり、ほっと息を吐く。

(,,゚Д゚)「子供達はどうだ?」

ξ゚听)ξ「今はもう大丈夫です。 二階でゆっくり休んでいます。
自分達で配れなかったと悔しがっていましたけど」

苦笑気味にツンが言うので、ギコも苦笑した。
ツンは手際よく消毒と止血、そして縫合を行い、包帯を腹に巻いた。
点滴や輸血用の機材まで機内に用意されている辺り、やはり、相手はただ者ではない事が分かった。
まるで軍隊並みに装備が充実している。

233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:29:38.48 ID:FDagK9vzO
>>230
A・J・←鼻がデカい新手のAAみたい

234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:30:15.70 ID:QWSY1V5Q0
少し経つと、コーヒーを持ってヒートが部屋に来た。

ノパ听)「隊長、コーヒーです」

(,,゚Д゚)「あぁ、ありがとう」

受け取った紙コップからは、コーヒーの豊かな香りと湯気が立っている。
一口啜ると、自然に溜息が洩れてしまった。

(,,゚Д゚)「ふぅ……
美味いな」

ノパ听)「よかったです」

(,,゚Д゚)「フサ、シャキン、ツン、ヒート。
今回はご苦労だった。
おかげで、生きて帰る事ができそうだ」

ノパ听)「そう言えば隊長。
そろそろ夜明けだそうですよ」

ヒートはブラインドが下りている窓辺に歩み寄り、ブラインドを上げた。
分厚い雲は灰色と藍色をしていて、幻想的な色合いだった。
雲の海の遥か上を飛ぶ飛行機からでしか見れない絶景だ。
そして、その奥。

一際輝く物があった。
暗い雲の海から昇る、一つの光。
瑠璃色の空にはまだ星々が輝いているが、その光には勝てない。
新しい一日の始まりを告げる朝陽に、ギコは目を細めた。

235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:32:22.44 ID:QWSY1V5Q0
美しく輝く朝陽に、ギコは初めて感動を覚え―――



―――上から聞こえて来た悲鳴が、何もかもを打ち壊した。


(;,,゚Д゚)「なっ?!」

ノハ;゚听)「何だ?!」

バタバタと駆けてくる跫音が、部屋に近付いて来る。
ギコ以外の全員が、入口に銃を向けた。
部屋の扉を壊しかねない勢いで入って来たのは、モナーだった。

(;´∀`)「はっ、はっ……!」

ミ;,,゚Д゚彡「どうした、モナー?
あの悲鳴は何だ?」

フサが尋ねると、モナーはフサの手を掴んだ。

(;´∀`)「大変だモナ!
イモジャが、イモジャが!」

明らかに動揺している。
フサは躊躇うことなく、モナーの頬を平手で叩いた。

ミ,,゚Д゚彡「落ち着け、俺の眼を見ろ!
……モナー、何があった」

236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:33:44.84 ID:hSYW+X3R0
トム・クランシーやスティーブン・ハンターももちろん読んでるだろうな

237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:34:12.59 ID:QWSY1V5Q0
(;´∀`)「……なんか、銃を持った変な男がいきなり出て来て、イモジャを連れてコクピットに立て籠ったんだモナ」

ノハ;゚听)「変な人?
そんな、だってあたし達はちゃんと見張ってたのに……!」

ミ,,゚Д゚彡「……方法は知らないが、そいつは隠れてたんだ。
そうすれば、連れ帰るのを俺達がやる。
横取りできるこの時を待っていたんだ……!」

フサが怒りを押し殺した声で唸る。
コクピットに立て籠ったと云う事は、人質は二人。
ジィとイモジャだ。

ξ゚听)ξ「どうします?」

ツンの声は冷静だったが、目に動揺の色が浮かんでいた。
最後の最後で、敵は逆転の一手を打ってきた。

(,,゚Д゚)「スタングレネードは……ないか」

この飛行機は元は敵の物。
構造は把握しているだろうから、不意打ちはまず無理だ。
ジィに何かアクションを起こさせるにしても、連絡手段がない。

(,,゚Д゚)「モナー、他の皆は?」

(;´∀`)「まだ上にいますモナ。
レモナとシィが腰を抜かしちゃって、クーが皆の傍に居ますモナ。
きっと、クーも怖い筈ですモナ」


238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:36:38.00 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「どうしてお前は降りて来れたんだ?」

(;´∀`)「あの人はこっちに興味がなさそうでしたモナ」

(,,゚Д゚)「……おかしいな」

ギコは考えた。
わざわざ子供達を生かしておくメリットはない。
生かしておいても、ロクな事をしない。
トラブルメーカーだ。

みすみす見逃した理由は、何であろうか。

(,,゚Д゚)「……一つ、やって見るか。
睡眠薬はその箱に入ってるか?」

ξ゚听)ξ「は、はい。 入ってます。
でも、どうするんですか?
その男が飲むとは思えませんが」

(,,゚Д゚)「ツン、違う。
飲ませるのはその男にじゃない。
……ジィだ」

ξ゚听)ξ「えっ?!」

(,,゚Д゚)「操縦しているのは、確実にジィだ。
だったら、ジィを眠らせて、飛行機を不安定にさせる。
その隙を狙うしかない。
恐らく、ジィの事だから、睡眠薬の意味が分かってくれるだろ」

239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:38:14.87 ID:QWSY1V5Q0
ノパ听)「それこそ男が見逃しませんよ」

(,,゚Д゚)「ヒート、さっきのコーヒー、もう一杯淹れられるか?」

ノパ听)「……なるほど」

(,,゚Д゚)「モナー、この作戦。
お前が鍵だ」

(;´∀`)「え?」

ギコは作戦の説明に入った。
作戦は実に単純だった。
モナーがコーヒーを持って、まずはハイジャック犯にそれを勧める。
当然、男は断るだろうから、それをジィに勧める。

この間に、数人が二階に上がり、席に隠れて待機する。
こちらの意図をジィが汲み取れば、後は自然な流れで飛行機は不安定な状態となる。
そこを狙って、待機していた人間がハイジャック犯を射殺、イモジャを救出。
フサが操縦を引き継ぎ、機体を立て直す。

機体のバランスが崩れてから、ハイジャック犯を殺すまでが勝負だ。
兎にも角にも、最初の一歩はモナーにかかっている。

(,,゚Д゚)「行けるか?」

( ´∀`)「……はい!」

ギコはモナーの肩を叩いた。


240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:40:08.62 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「状況開始だ。
外国の見知らぬ人間よりも、まずはお前の友人を救ってやれ」

* * *

砕いて粉末状にした睡眠薬を溶かしたコーヒーを持って、モナーが階段を上る。
その歩調に合わせて、狙撃仕様に換装したXM8を持ったツンとシャキンが後に続く。
聞こえる跫音は一人分だけだった。
彼等は狙撃手、敵に気付かれることなく移動するのはお手の物だ。

階段を上り切ったモナーは、恐る恐るコクピットに向かって歩いて行く。
席に座っていたシィとレモナが、その背中を不安げに見送った。
まだ、ツン達は動かない。
階段に伏せて、モナーの合図を待つ。

( ´∀`)「―――それじゃあ、ジィさん、どうですかモナ?」

合図だ。
二人は音も無く階段を上り、手近な座席の後ろに二手に分かれて隠れた。

爪゚ー゚)「えぇ、いただきます」

( ´∀`)「ありがとうございますモナ」

モナーはコクピットから戻って、レモナの傍に座った。
シィとレモナを、モナーはしっかりと勇気づける。
気付かれていない。
様子を窺う為に、シャキンは座席の間からコクピットを覗きこんだ。


241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:42:08.73 ID:QWSY1V5Q0
見ているだけでも、ジィはかなり頻繁にコーヒーを飲んでいた。
一口目で分かったのだろうか。
なにはともあれ、彼に耐性が無い事を願うしかない。
手信号でツンにそれを伝えると、ツンは了解、と返信した。

ξ゚听)ξ(狙える?)

(`・ω・´)(無理です、厚みが分からない上に、位置まで分かりません)

今は、息を殺してチャンスを待つ他なかった。

* * *

機内を物色していたフサは、部屋に戻ってくるなりこう言った。

ミ,,゚Д゚彡「隊長、この飛行機、どっかで見た事あると思ったら、ラシャの物です」

(,,゚Д゚)「……ラシャ?」

無論、ラシャはギコも知っている。
彼が今住んでいる国とは嘗て敵国同士で、世界大戦の時には双方に被害が出た。
社会主義国家で、治安維持の為の秘密警察がいる国だ。
世界で最も広い面積を持つラシャは、世界で最も恐ろしい軍隊を持っていると言われている。

(,,゚Д゚)「……政治に使うつもりか」

ミ,,゚Д゚彡「恐らくは、その可能性が高そうです」


242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:44:46.59 ID:QWSY1V5Q0
今なお二国間には遺恨があり、戦後から今に至るまで、何かとぶつかる事が多い。
国に有利な様に外交を進める為には、手段を選んではいられない。
身代金目的でない事が分かっただけで僥倖だ。
イモジャは、現段階では絶対に殺されない。

ノパ听)「ところで隊長、あたし達は何をすればいいんですか?」

(,,゚Д゚)「二人はシャキン達のバックアップに入ってほしい。
撃ち合いになる前に子供達を逃がしてくれ」

ノパ听)「分かりました。 隊長はここで休んでいてください」

(,,゚Д゚)「俺は、俺にやれることをやるよ」

機体が、小刻みに揺れ始めた。
それを合図に、二人は跫音を立てずに走りだした。

* * *

('A`)「しっかりと操縦しろ!」

爪;゚ー゚)「わ、分かって……ます」

ジィに気を取られている隙に、ヒートとフサは子供達の後ろの席に隠れた。
機体の揺れが大きくなるのと比例して、男の声も大きくなる。
そして。
遂に、その時が来た。


243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:46:20.39 ID:QWSY1V5Q0
完全に眠りに落ちる直前、ジィは操縦桿を思い切り引いた。
機体は頭を上に向け、その体を垂直に近付ける。
子供達はシートベルトで固定され、しがみ付く事が出来たからまだ良かった。
ヒート達はシートベルトが無い為、両手の力をフルに使って体を支えた。

機体は大きく仰け反り、角度は九十度を越えた。
恐らく、巨大なクジラが宙返りをした時、胃袋の中身はこうなっているのだろうと、この時誰もが思った。
一回転した機体は頭を下に向け、急速に加速する。
慣性と重力に従って、ヒート達はコクピットに向けて投げ出された。

唯一、ヒートだけがしっかりと自らの意志で、コクピットに飛び込んだ。

ノパ听)「イモジャ!」

(;'A`)「?!」

座席は四人掛けで、前後に二席ずつあった。
最前列に座っていたイモジャを掴んでシートベルトを外し、ジィの手ごと操縦桿を足で蹴った。
ガクンと機体が揺れ、機首一瞬だけ上を向く。
男はシートベルトを外す手間を惜しんでヒートを撃とうとしたが、もう遅い。

イモジャを抱えたヒートは男の脇をすり抜け、そのまま後ろに向かって落ちて行った。

ノパ听)「確保した!!」

座席に叩きつけられながらも、ヒートはしっかりと報告する。
異常を感知した装置が機体を水平に戻し、フサがヒートからイモジャを引き継ぐ。

ミ,,゚Д゚彡「モナー!」


244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:48:11.56 ID:QWSY1V5Q0
その一声で、子供達はシートベルトをはずし、フサの後に続いて階段を下りた。
こうして、僅か一瞬の間で敵の手からイモジャを奪い取る事に成功した。
ツンとシャキンはXM8でコクピットをしっかりと狙い、ヒートもXM8を構えて相手の動きを待つ。
撃ち合いになれば、高確率でジィが負傷する。

しかしジィよりも気を付けなければならないのは、機器だ。
敵は計器類を背にしている為、計器類に当てない様に撃ち合うのは難しい。
最初に銃爪を引いたのは、ヒートだった。
男の座っている場所を把握している彼女は、数発、壁越しに撃った。

悲鳴も何も聞こえてこない代わりに、ビゾンの銃口がこちらに向けられた。
何も言わず、全員が伏せた。
数発刻みで撃たれる銃弾が、シートを貫通する。
遮蔽物はあってない様な物だった。

ノハ;゚听)「くっ、あっ!!」

ヒートが悲鳴を上げた。
脹脛を押さえ、顔を歪める。

(;`・ω・´)「っ!!」

皆の注意がヒートに移った次の瞬間、敵が放り投げて来たスタングレネードが、頭上で爆発した。
轟音と閃光に目と耳を奪われ、咄嗟に体を丸めてしまう。
耳鳴りが止まず、銃声さえ聞こえない。
シャキンは右肩と腕を撃たれ、倒れた。


245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:49:26.38 ID:QWSY1V5Q0
銃声と轟音で異常に気付いたフサが、子供達を逃がしてから階段を駆け上がった。
これ以上味方を撃たせまいと、敵に向けて牽制射撃を行う。
敵はコクピットの影に隠れたが、新たなグレネードが投擲された。
耳と目を塞いで、フサは伏せた。

だが、今度投擲されたのはスモークグレネード。
煙幕だった。
視界を奪われたが、それは敵も一緒だ。
慌てることなく、フサは目を細めて前を見た。

ミ;,,゚Д゚彡「何っ?!」




('A`)「遅いぞ若輩!」





246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:50:49.58 ID:QWSY1V5Q0
その一言と同時に、硬い銃床でフサは腕を叩かれた。
痛みで銃を取り落としたが、直ぐに気を持ち直す。
煙の向こうに薄らと見える影に向かって、拳を突き出す。
しかし、手応えは無い。

ミ,,゚Д゚彡「っ?!」

('A`)「軽率!」

鋭いパンチが、フサの鳩尾を捉えた。

ミ;,,゚Д゚彡「おぐっ!?」

('A`)「脆弱!」

ミ,, Д 彡「はっ?!」

('A`)「愚鈍!」

ミ,, Д 彡「……っ!!」

('A`)「単調!」

もう一発、破城槌のような拳が鳩尾に入る。
肺の中の酸素を全て吐き出し、フサは体を折って倒れた。

('A`)「故に、他愛なし」



247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:52:29.37 ID:QWSY1V5Q0
* * *

シャープシェンの隊長、スミノフ・ドクオ・ノーマッドは落胆していた。
もう少しやる相手だと思っていたのだが、どうやら、それは間違いだったようだ。
折角待ち伏せして、相手の出方を窺っていたと言うのに、これでは張り合いが無い。
ドクオの作戦は見事に失敗≠オた為、もう、誰かを傷つける必要はなかった。

しかし、その前にどうしても、相手の全力を一身で味わいたい為に、ドクオはこの様な暴挙に出たのである。

オートパイロットに切り替えた輸送機は、もう先程の様な曲芸飛行をすることはない。
煙幕が晴れ、ドクオの足元には一人の男が倒れていた。
視線を動かすと、負傷した男が一人と、女が一人いた。
その女は意外と奮闘したが、結局、こうして倒れている。

経過ではなく結果で見れば、彼女は敗北したのだ。

('A`)「……」

ドクオは息を止めた。
聞こえる。
もう一人、女の息遣いが。
息を殺して機会を窺っている音だ。

次の瞬間。

ξ#゚听)ξ「せぁっ!」

('A`)「甘いぞ女っ!」


248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:54:14.48 ID:QWSY1V5Q0
背後からバッドの様に振り下ろされたライフルを避け、ドクオはビゾンを撃つ。
短い悲鳴が聞こえ、次に人が倒れる音が聞こえた。

ξ;゚听)ξ「……っく!」

('A`)「私の意表をつき、接近戦を挑めば勝てると思ったか?
実に短絡的で楽観的、そして間抜けな思考だ」

高性能な防弾ベストはビゾンの弾を全て止めている様だったが、流石に衝撃は殺せなかったようだ。
銃弾の衝撃は、ボクサーに素手で腹を力強く殴られた物に似ている。
近距離から放たれた銃弾は、肋骨を折る事もあるぐらいだ。
女の手を踏みつけ、ドクオは銃口を女の頭に合わせた。

('A`)「安心しろ。
直ぐに仲間を送ってやる」

―――乾いた銃声が、一つ響いた。

('A`)「……やっと来たか。
待ちくたびれたぞ」

男がいた。
その男は水色の瞳に怒りの炎を宿らせ、獣のように鋭い眼光を放っていた。
ビゾンを撃ち壊した男は、さながら手負いの獣の様だった。
ドクオは確信した。

この男こそが、彼の待ち望んでいた男であると。

(,,゚Д゚)「あぁ。 花束は持っていないけどな」


249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:56:08.21 ID:QWSY1V5Q0
* * *

状況はあまり良くなかった。
敵は一人だけだったが、彼の部下が全員負傷させられている。
ぱっと見て、年齢は自分よりも二回りほど上だろうと、ギコ・カスケードレンジは想定した。
顔は年老いているが、その男の姿からは衰えが窺えない。

老練の兵士のそれだった。
M84を向けていても、ギコが男を撃てないのには理由があった。
ビゾンを破壊したのとほぼ同時に男は拳銃を抜き放ち、ツンに向けていたのだ。

('A`)(,,゚Д゚)『銃を下ろせ』

二人が同時に同じ台詞を口にした。
だが、どちらも笑わなかった。

('A`)「君が彼等の上官か?」

(,,゚Д゚)「いいえ、元上官です」

('A`)「優秀な上官だが、部下がこれでは情けないな」

(,,゚Д゚)「少なくとも、あなたの部下よりかは優秀ですよ」

('A`)「ほぅ。理由を訊いてもいいかな?」

(,,゚Д゚)「あなたの部下と違って、私の部下は今も生きている。
当たり前の事です」

ギコの言葉を反芻するように頷き、男は言った。

250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:56:10.51 ID:hSYW+X3R0
しえ

251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 02:58:07.85 ID:QWSY1V5Q0
('A`)「それは目的によるな。
死んでも尚目的を達成できれば、生きて目的を達成できないよりも優秀だ」

男の言っている事は、二人の間に決して埋まらない溝がある事を明白にした。
互いに互いの意見を潰し合わなければ、前には進めない。
部下が犬死でなかった事の証の為に、男はギコの意見を阻む。
ギコは部下と子供達を生きて帰国させる為に、男の証を踏み躙る。

これが、殺し合い。
究極の理不尽と、究極の選択を迫られる時。
それを理解している二人は、ここで負けるわけにはいかなかった。
男の足元で、ツンが苦悶の表情を浮かべる。

ξ;゚听)ξ「隊……長……っ!
撃って下さい!」

(,,゚Д゚)「黙っていろ、ツン。
これは命令だ」

自分は冷酷な人間だと思っていた。
だが、そうではなかった。
結局、甘いのだ。
部下を殺されるのを選ぶ事は、ギコには出来ない。

部下を失うことなく、目の前の男を殺したい。
何と言う我儘だろうか。
銃爪を引くと云う一動作が、出来ない。
照準は定まっている。


252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:00:17.38 ID:QWSY1V5Q0
でも、撃てない。
ツンが殺されてしまうから。

('A`)「決意は評価するが、お前の隊長はその意見を意地でも飲まないだろうな」

分かった風な口調で、男は言った。
空いている手で腰から一本のナイフを取り出し、先端を床で傷口を押さえて倒れているシャキンに向けた。
そのナイフは、間違いなく、ギコの腹に突き刺さった物と同じ。
スペツナズナイフだった。

('A`)「部下が二人では、どうかな?」

(,,゚Д゚)「……」

('A`)「頑固な男だ、君は」

(,,゚Д゚)「取り得なんだ」

('A`)「悪癖だよ、それは。
このルスラーンには機密保持用の自爆装置が備わっていて、私はそれを三十分後に設定した。
パスワードを入力すれば、自爆装置が停止する事を教えておこう。
パラシュートを一つとイモジャ・バーティゴを連れてくれば、君の部下は殺さないし、空の藻屑にもしない。

それだけは、約束する」

恐らく、それは本当だろう。
彼は無駄な事を好まない性格をしているのだ。
しかし、それだけは飲めない。

(,,゚Д゚)「パラシュートを一つだけなら、いいだろう」

253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:00:31.50 ID:lVMOFjqi0
馬鹿め・・・ドクオにはまだ同志イチマツという切り札が・・・

254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:02:34.00 ID:QWSY1V5Q0
('A`)「おいおい、それでは足りない。
私の目的は分かっているだろう?」

(,,゚Д゚)「イモジャを誘拐して、何になる」

('A`)「それは私の専門外だよ。
政治は政治家が進めるものだ。
あの娘がどんなカードに化けるかなんて、私には興味が無い。
あまり無駄な時間を取らせないでほしいのだが、どうだろうか」

(,,゚Д゚)「難しいな」

こう着状態は何時までも続かない。
何より、状況的に不利なのはギコの方なのだ。
策が、一つだけ浮かんだ。

(,,゚Д゚)「……こうしよう。
俺がパラシュートを持ってくる。
そうしたら、まずはツン達を解放してくれ」

('A`)「続けろ」

(,,゚Д゚)「俺の部下が全員解放されたら、イモジャを連れて来る」

('A`)「……用心深いな。 だが、私も用心深い。
部下を解放したと同時に君が撃たないとも限らないし、そうするのが当たり前だ。
君の部下を一人だけ残して、最後にイモジャと交換だ。
私とイモジャが無事に脱出できれば、パスワードの記された私の認識票をくれてやる。

この線は譲れない」

255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:03:32.11 ID:hSYW+X3R0
しえ

256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:04:22.41 ID:QWSY1V5Q0
(,,゚Д゚)「部下を危険に晒すわけにはいかない」

('A`)「ではこうしよう。
君が人質になって、イモジャにパラシュートを持ってこさせる。
これなら、君の願いも私の望みも叶う」

(,,゚Д゚)「……分かった」

ミ;,,゚Д゚彡「隊長…… だ、駄目です」

フサの言葉を無視して、ギコは銃を掴んで、ゆっくりと男に歩み寄る。
男も、まずシャキンに向けていたナイフをギコに向けた。

(,,゚Д゚)「フサ、シャキンとヒートを連れて行け。
急いで手当てをするんだ」

ミ;,,゚Д゚彡「……っ。
分かり、ました」

フラフラと立ち上がって、フサはヒートとシャキンに手を貸した。
どうにかヒートは自力で歩けたが、シャキンは傷が深く、歩けなかった。
フサはシャキンを抱き起こした。
三人は悔しそうに顔を歪めて、階段を下りた。

出来れば彼らだって、ギコにこの様な危険な事をしてほしくはなかった。
だが、他に方法が無かったのだ。
何か策があればよかったが、それもなく、自分達は手負いだった。
悔しさのあまり、ヒートは声も無く泣いていた。


257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:06:24.68 ID:QWSY1V5Q0
ギコが直ぐ正面に来ると、男はツンの腕から足を離した。
銃口を向け、下手な考えを起こされない様に警戒する。

(,,゚Д゚)「ツン、下に戻ったら、イモジャにパラシュートを持って来させてくれ。
問題が無ければ、治療に参加してくれ」

ξ;゚听)ξ「……っ、はい」

悔し涙で潤んだ瞳が、ギコを睨む。
歯を食いしばる音が聞こえる。
それでも、ツンは抵抗一つせず、階段を下りて行った。
銃をゆっくりと地面に置いたギコを、男は素早く羽交い絞めにした。

米神に銃口、心臓にナイフを押し付けられる。
両手を挙げて、ギコは暴れようともしなかった。

('A`)「君は甘いな」

(,,゚Д゚)「これでいい」

('A`)「君の名前は?」

(,,゚Д゚)「ギコ、ギコ・カスケードレンジだ」

('A`)「私は、スミノフ・ドクオ・ノーマッド。
出来れば、別の形で会いたかった。
……君の事を覚えておこう、優秀な指揮官として」


258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:07:51.31 ID:OY2+3M/FP
心臓にナイフを押し付けるワロタ

259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:08:46.10 ID:QWSY1V5Q0
数分後、イモジャがパラシュートを持ってやって来た。
恐怖に体が震えているが、それも後少しで終わる。
援護として、ツンが付き添っていた。
米神に押し付けられていた銃口が、ツンに向けられる。

―――これが。

これこそが、ギコの望んだ展開だった。
頭から銃口が離れる事。

コンマ数秒とは雖も、殺される対象が一人になる事。
そして、その対象が自分になる瞬間を狙っていたのだ。

銃口がツンを向く前に、ギコは行動を起こした。
ツンに向けられかけていた銃の遊底を引き、それを奪い取った。
薬室から未発砲の弾が宙を舞う。

(;'A`)「貴様っ!!」

心臓に付きつけられていたナイフが、防弾ベストを貫通して押し込まれる。
動いたせいで狙いが僅かに逸れ、腹部に斜め上から突き刺さる。
宙を待った弾が、床に落ちる。

(,, Д )「……!」

遠心力と脚力だけで、どうにか男の手から逃れて振り返る。
突き刺さったナイフが、更に深々と刺さり、内臓をズタズタに切り裂く。
激痛が走ったが、悲鳴は上げなかった。
ただ、やる事だけをやった。


260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:10:48.85 ID:QWSY1V5Q0
奪い取った銃を下脇腹から斜め上に向けて押しつけ、ありったけの弾を男に撃ち込む。

(;'A`)「……っ!!」

弾倉が空になるまで放たれた銃弾は、男の心臓を破裂させ、内臓を破裂させた。

(;'A`)「見事……!」

誇らしそうな、満足そうな笑顔で、男は仰向けに倒れた。
ギコも、仰向けに倒れた。

(,, Д )「……ぁっ」

ツンの悲鳴と、イモジャの悲鳴が聞こえた。
しかし、声は遠のく。
誰かが体を揺らす。
でも、目の前は暗かった。

仰向けに返されると、光が映り込んだ。
ぼやけて見える光は、優しげだった。
光が輪郭を持ち、一人の人間の顔が浮かぶ。

(,, Д )「……ツン」

それが声になったかどうか、ギコには分からなかった。
声帯が震えただけかもしれないし、何もできなかったかもしれない。
頬に、滴が落ちて来た。
黄金の髪と瞳を持つツンが、自分を覗き込んで泣いている。

出来れば、泣かないでほしかった。

261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:12:12.44 ID:QWSY1V5Q0
(,, Д )「……泣くな」

声は届かない。
手が動かない。
ツンの涙を、止めてやることも、拭ってやることも出来ない。
無力だった。

それが、ギコには悲しかった。
体が急激に温度を失う。
寒かった。
瞼が重い。

このままでは、妹を泣かせたと、デレに怒られてしまう。
冷たくなって感覚が殆どなかった右手を、ツンが握った。
温かかった。
聞こえる音の全てが目一杯増幅され、混ざり合っているかのようだった。

脇腹の痛みはもう無くなっていた。

(,, Д )「……」

ようやく。
ようやく、ギコは気付いた。
彼は、失ったのでも、奪われたのでもない。

傭兵を辞めたあの日から、新たな一歩を踏み出していたのだ。
それはまるで、産まれたばかりの雛鳥の様。
世界を知らなくて当然、不安になって当たり前だったのだ。
その事に、ギコは今になって気付く事が出来た。


262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:13:07.71 ID:hSYW+X3R0
クライマックスか

263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:14:20.65 ID:QWSY1V5Q0
意識が遠のく。
急激な眠気が襲う。
右手に感じているツンの存在を、忘れない様に。
その意志が、ほんの少しだけ彼の右手に奇跡に等しい力を与えた。

最後の力を振り絞って、彼はツンの手を握ったのだ。
握った手からは、徐々に力が失われる。
今、瞼を下ろしたギコの眼の前は明るかった。
真っ白な空間を満たす、穏やかな空気。

遠くから近付いて来る、懐かしい声。
幻の様に、その女性が現れた。

ζ(゚ー゚*ζ「こんばんわ」

周囲の景色が、あの頃と同じように変わって行く。
寂れていて、静かなカウンター席。
自分の格好も、姿も、あの時のまま。
全てが、あの時と一緒だった。

(,,゚Д゚)「……」

あの時と同じように、ギコは何も喋れない。
その時と同じように、女性が先に話し始めた。

ζ(゚ー゚*ζ「一人?」

(,,゚Д゚)「え、えぇ、まぁ……」

異性と話す事が苦手だった、あの頃。

264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:16:47.92 ID:QWSY1V5Q0
ζ(゚ー゚*ζ「だったら、一緒にお話しない?」

(,,゚Д゚)「は、はぁ……」

ζ(゚ー゚*ζ「ん? ひょっとして、私がコールガールだと思ってる?
だったら違うから安心していいよ〜」

(,,゚Д゚)「い、いえ、そうではなくて……」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ何さ?」

(,,゚Д゚)「女性の方と話すのは、慣れていなくて……」

一輪の華が咲いた様な、あどけない笑顔。
春風のような、柔らかな優しさの込められた声。
全てが懐かしく、全てが愛しかった。



ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、これから慣れればいいと思うよ。
雛鳥もね、少しの勇気で殻を破って、外の世界に慣れるでしょ?」



―――ギコの意識は深い闇に落ち、やがて、溶けて消えた。




265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:18:22.82 ID:QWSY1V5Q0


                      □Epilogue


よく晴れた九月の事である。
夏休みが明け、学校が始まっても、アルバイトは終わらない。
妙な理想を掲げて来店した強盗の一件は既に風化し、今、その喫茶店で一番の話題は自称可愛いウェイトレスの失恋についてであった。
いや、失恋、と云うにはかなりの語弊がある。

そもそもそれが恋だったのかは定かではない。
元気が取り柄のミセリナ・ウォーマックが沈んでいた為、同僚達が面白半分で勝手な憶測をして、それが独り歩きしただけに過ぎない。
ひと夏の経験が彼女を変えたのでは?
などと、常連客の間でも憶測が飛び交っていた。

本人はいたって気にしていないつもりであったが、やはり、気にならないと言えば嘘になった。
また来ると言って、来店しなかった客は両手に収まり切らない程いた。
挨拶程度の言葉である事は理解していたし、期待もしていなかった。
だが、自然と一人の男性の姿を探して目が彷徨っていたのは事実だ。

ランチセットを楽しみに来店する事も。
警備の求人を見て来店する事も。
ミセリを目当てに来店する事も。
それが有り得ない、自分の願望と希望を織り交ぜた可能性である事を、ミセリは分かっていた。

しかし。
あの寂しそうな、繊細そうな目をした男性にもう一度会いたい。
会って話をして、それだけでいい。
学校の事、部活の事、話題は何でもある。


266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:20:35.19 ID:QWSY1V5Q0
今日もまた、閉店間際の店内を見回し、あの男性の姿を探す。
今日に限って店に客はいないが、閉店時間までは店を閉じるわけにする訳にもいかない。
その時間は、ミセリにとって最も心休まらない時間であった。
ひょっとしたら現れるかもしれないと淡い希望を抱き、毎日それが打ち砕かれても、諦められなかった。

( `ハ´)「ちょっと、外の掃除に行ってくるアル」

ミセ*゚−゚)リ「うん」

ミセリに好意を抱いていると噂されている同僚が、わざわざそんな事を言って店の外に出て行く。
適当に返事をしてそれを見送り、時計に目を向ける。
閉店一分前。
今日もまた、あの人は来ない。

きっと、もう来ないだろう。
人生、そう都合よくはいかない物なのだ。

ミセリは溜息を吐いて、入口に背を向け、店の裏に戻ろうと踵を返した。


その時、来店者を告げる鐘が鳴った。
もう掃除を終えたのだろうか?
幾らなんでも適当すぎだろうと思いながらも、ミセリは振り返り――


267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:21:49.05 ID:OY2+3M/FP
さて、心優しい人が単発で乙をくれますよ
いくつ貰えるでしょう
数えてみましょうか

268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:22:10.13 ID:QWSY1V5Q0




(,,゚Д゚)「勘の良いウェイトレスにパフェを一つ驕る約束があったんだが、今、大丈夫か?」





ミセ*゚ー゚)リ「……はい、勿論です!」



――人生、何が起こるか分からない。
青い鳥は、向こうからやってくる場合もあるのだと、ミセリは思いを改めた。






                                青い鳥 The End







269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:23:32.84 ID:OY2+3M/FP
お疲れ

あとがきとか要らねえからもう寝なよ

270 : ◆VnfvP.QFYU :2011/12/30(金) 03:23:35.15 ID:QWSY1V5Q0
長い間支援ありがとうございました!

これでおしまいとなりますが、何かあれば起きている間にお答えします

271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:25:20.10 ID:x1RNoiYZ0
いや…あれだ…
素晴らしかった
個人的にXM8がてできたのが嬉しかったなwww
とにかく遅くまでお疲れさん

272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:26:17.34 ID:6U+Oob4z0
おつかれ
つきっきりで支援してくれてる奴がいたみたいからレスしなかったけれど
全部読めて良かったよ!

273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:29:33.17 ID:hSYW+X3R0
書き上げるのにどれくらいの月日を要したの

274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:32:07.82 ID:IMvQ4GmJ0
よむほ

275 : ◆VnfvP.QFYU :2011/12/30(金) 03:36:55.41 ID:fY2sptjh0
>>273
5日かそこらだったきがします

276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:37:37.70 ID:hSYW+X3R0
意外と短いのね

乙でした

277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:38:49.14 ID:8t6f+oODO
ふむ
お疲れ

278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:39:32.34 ID:OY2+3M/FP








279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/30(金) 03:46:44.42 ID:lVMOFjqi0
学生5人はごめんなさいしないといけないよね(´・ω・`)

青い鳥って何を指してたの?

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